映画007一挙放送 1「ドクター・ノオ」- 感想

はじめに/番組詳細

日程・時刻・バージョン・ラインナップ

◯2023年5月より、BS日テレにて毎週木曜夜9時頃から、映画007シリーズ24作品の一挙放送がスタートしました。

「ドクター・ノオ」から「スペクター」までの24作品、字幕版での放送。最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年公開)は直近過ぎて高かったのか、流石にラインナップされていませんでした。

◯CMは入りますが恐らく全作品ノーカットで、夜9〜11時半頃、作品によっては8〜11時頃まで。
エンドクレジットも最後まで流れて、その後にレストア・スタッフもクレジットされていたので、一部を除いたほぼ全ての作品がレストア盤での放送となっておりました。めちゃ綺麗だった。

◯同年10月、約半年間に及ぶ一挙放送が終了して感慨に浸っていると、翌週からまた一作目から放送されていて「またやるんかーい!」と軽くショックを受けたのですが、笑
なんと!BS日テレさんは今度は吹替版でシリーズ一挙放送をスタートしてくれていました!
こちらも吹替ならではの魅力が追加されていて、初期作なんかとても味わい深いものがあるので、時間が合えばチェックしたいと思います。

(ちなみに、1〜3作目はテレビ放送を一部見逃したりしたので、Blu-rayをレンタルしました。それもあって「ロシアより〜」を先に見てしまい、その後「ドクター・ノオ」を鑑賞したのですが、おかげで1作目がどういう作風だったのかをより明確に理解しながら見る事が出来ました。
一部見逃す度にレンタルしてたらキリが無いし、リアルタイムのテレビの一挙放送を楽しむ意味も薄まるので、4作目からはテレビ放送を見るだけで、どこか見逃してもレンタルせずそのまま鑑賞し感想を書くことにしています。
当時の個人的な記録として、書いてます。)


◯いつかシリーズ全てを見たいと思っていたので、この一挙放送はとてもありがたかったです。せっかくなので定点観測的に、感想を日記のように、書き残しておきます。
とはいえ本腰入れて見た訳じゃないので、ぼんやりしています。
日記です。
感想です。


▽007/ドクター・ノオ(1)

1作目、そしてシリーズ全体のあらすじ

◯スパイ映画の金字塔、世界的シリーズの第1作目。
イアン・フレミングのスパイ小説を元に、イギリスの諜報機関MI6に所属する主人公の活躍を描く。コードネーム="007"(ダブルオーセブン)を有するジェームズ・ボンドが、世界を脅かす犯罪組織と戦うスパイ・アクション映画。

◯シリーズといっても一部を除くほとんどの作品が独立したものでありつつ、お決まりの要素やお馴染みのキャラクター等やんわりと繋がりもあったり、有名であると同時に稀有なシリーズでもあります。
全作品ほとんど同じあらすじで、その点では寅さんみたいなシリーズであり、数年毎に主演俳優が変わる点は、「今度は誰があの役をやるのか?」という歌舞伎のような面白味もあります。
007=ダブルオーセブンと読むのが通常ですが、ピアース・ブロスナンがボンドを演じている頃ぐらいまでは"ゼロゼロセブン"と呼ばれていたりもしました。

(追記)Wikipedia情報ですが、「007」の読み方は1〜7作目(ノオ〜ダイヤモンド)までは"ゼロゼロセブン"読みで、8作目(死ぬのはやつらだ)からは"ダブルオーセブン"読みでの表記となっておりました。パッケージ商品等でもその通りなら、恐らく公式的にも8作目から読み方を変えた、という事になると思います。が、実際はどうなんでしょうか?🤔

◯公開当時は「007は殺しの番号」というタイトルで、72年再上映時に今のタイトルに変更。
監督はテレンス・ヤング、製作ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ、主演ショーン・コネリー、共演ウルスラ・アンドレス、ジョセフ・ワイズマン、バーナード・リーほか。
初公開はイギリスで1962年、アメリカ・日本では翌63年。ちなみに映画の007シリーズは全てカラー作品。

まとめ

お決まり要素の起源を楽しめるし、娯楽作品として豪快な面白さがあります。最近の映画でもなかなか見れなくなった贅沢で勇気のある演出も多くて、意外と映画としての面白味が沢山ある作品でした。

詳しくは後述しますが、中盤、「これだけでもこの作品を見る価値がある」というシーンがあって良かったです。
ご都合主義も多いけどそれは時代というよりボンド映画らしさだと思うので、気軽に見るのがオススメです。

感想 - お決まりの要素は1作目から

◯大衆娯楽アクションというより、正当なスパイ映画でした。
罠だと知りつつ相手のペースに乗っかり、逆に情報を引き出したり。レシート一枚から捜査の糸口を見つけ、現地の人の協力を得たり。身近な物で罠を張ったり、静かな動きで潜入・殺人を行う。等々、ジャンルの定番やツボを押さえている内容です。

と言いつつもやっぱり007なので、荒唐無稽な場面も多い。娯楽映画らしい都合の良さもあるけど、それとは別の、いわゆるツッコミ所も沢山あるからこそ気楽に見られる作品。

後々味方になる相手も、最初は読み合い騙し合いなど一悶着あって、敵なのか味方なのか途中ではよくわからない、という展開がある。スパイ映画やサスペンスの定番ではあるけど、こういう曖昧な関係性が、この手のジャンルがわかり辛くなっている要因の一つで、「これって、今何やってるんだっけ?」って思うのは普通。ボンド映画は分かりやすい方ですが。

◯定番といえば勿論、007を象徴するOPのガンバレル・シークエンスもあります。「ボンド。ジェームズ・ボンド。」の名乗りとかマティーニへのこだわりって最初から有るんですね。それ以上に、殺した相手や敵の女性スパイへの扱い方の酷さも1作目からキレッキレであることに笑いました。

◯冒頭。早速、敵スパイを返り討ちにしてから現地の拠点へ赴くボンド。入り口の警備員に「逃すなよ」とだけ言い残し、ボンドを見送った後に男が死んでる事に気づいた警備員がボンドを二度見する。めっっっちゃボンド映画っぽい(笑)
工事車両の隙間を縫って走るなんていう『ワイルド・スピード』ばりのチェイスも良かったです。ワイスピの方が後だけど。相手の殺し屋は工事車両を避け切れず崖から転落。爆発した車を見下ろす工事現場の作業員。「何があった?(字幕では「どうした?」)」と驚く作業員に対して、「葬式に行ったのさ」と返すボンド。これが映画秘宝で言うところの"殺しておいて捨て台詞"!こういう捨て台詞は次回作以降もずっとあります。

◯敵女性スパイへの扱いが酷いのも007。
この女性スパイ、ボンドと教授の会話を別の部屋から聞き耳を立てていたら、突然ドアを開けられて、バレバレなのに取り繕うっていう、最近のバラエティでも見ないコテコテの演出があって苦笑い。流石に昔の映画らしい。
中盤、暗殺されかけたボンド。成功したと思い込んでいる女性スパイは、突然のボンド来訪に驚き動揺するがそれでも尚、正体を偽る。彼女が暗殺に協力している事に気付いているのに抱こうとするボンドは色々と図太い。彼を引き留めておく為、女性もベッドへ向かう。
事が済んだ後、再度迫るボンド。ネイルが剥がれると言いつつ仕方なく応じる女性。
二度目の事後、女性を騙して現地の捜査官に引き渡す。敵とはいえ相手の意思を無視して迫った上、道具の様に使い捨てるボンドはもう、冷徹なスパイを越えてサイコパスにしか見えない。こういう人間味の無い部分もボンドらしさだと思う。
007=サイコパスっていうのは映画の作り手や原作者も意図している所なんでしょうか?

◯実は敵の手先だった教授が、ドクター・ノオの拠点に出向く。通された部屋は、椅子とテーブル以外に何も無く、白い壁に囲まれた大きな部屋。明るく開放感もあるが異様に綺麗、静か過ぎて不気味である。そんなシチュエーションに加え、肝心のドクター・ノオは姿を見せず、声だけがどこからともなく響き渡るという演出も、不穏さを増長させていて凄く格好良い。その声も、落ち着いてるのに威圧的なのが伝わってとても良い。ここだけでもこの作品を見る価値があると思います。

◯それでもやっぱり007。ノオの拠点を守る装甲車両のハッタリも味があります。
仲間のクォレルを殺されボンドもハニーも捕まり、絶体絶命のピンチか!?という展開の筈なのに、基地に着くや否や手厚い待遇を受けるという展開に、見ているこちらも拍子抜けする。当の2人は気が緩みまくってて、放射能を除染する為にシャワーを浴びろと言われても、剥がされる訳でも無く普通に服を脱ぎ始め、気持ち良さそうにシャワーを浴び、動くベルトに乗ってバスローブを受け取り、サンダルを履いて案内されるという。こんなに緊張感の無い終盤は初めて見た。そういうギャップを狙ってるのかもしれないけど、それにしたってシャワーシーンは気持ち良く浴び過ぎ(笑)

◯放射能についての描写は、これだけ昔の作品ならまだわかるけど、今でもこれぐらい簡単に除染したり爆発させる作品を見ると流石にガッカリする。昔っぽいと言えば、有色人種キャストが現地人で、やけに従順な協力者ポジションというのもありました。

ボンドガールの登場も突然過ぎるし、ストーリー上はほとんど意味が無く、画的に華を添えるだけだったり、ボンドを持て囃すとか、本当に記号として道具としてしか描かれていないのも、ご都合主義な部分は目立ちます。
昔の映画というよりボンド映画だからという所も大きいかもしれませんが。

と言いつつ、ヒロインが映画が始まって一時間経過してから出てくるという贅沢な使い方は満を持して感があると思うし、あと25分で終わるという最終盤になって初めてドクター・ノオが顔を見せるという「遂に来た!」感もある展開は近年見ない演出で良かったです。

◯ラスボスと同じテーブルを囲んでの緊張感ある会話劇とか、そこで余裕ぶるボンドとか、『スペクター』など後年の作品はそういう所をオマージュしていたのかなと思いました。

◯ビーチのクラブまで着いてきたあの女性カメラマンって結局なんだった?とか、そこに居る端役の男性の踊りがやたらと上手で気になるとか。
OPクレジットで紹介を済ませているせいか、エンドクレジットがメインキャストだけで、2分ぐらいで終わったというのも昔の作品らしいですね。

昔と言えば、みんなタバコ。冒頭でボンドを騙そうとした運転手でさえ、捕まってなお吸おうとする。で、ボンドもボンドで吸わせたあげく毒を飲まれるという。捕まってもタバコぐらいなら、っていうのは優しさじゃなくて当時の社会では本当に他愛の無い事だったんだろうと思います。


シリーズの感想記事リンク

コチラ。

2(ロシアより)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n2d0ba2afbd8d?sub_rt=share_pw

3(ゴールドフィンガー)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n0d585ef2d5b8?sub_rt=share_pw

4~8(サンダー・二度死・女王・ダイヤ・死ぬやつ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n3c95c5e09be8?sub_rt=share_pw

9~13(黄金銃・私愛した・ムーン・ユアアイズ・オクトパ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/nbfd2d41f1768?sub_rt=share_pw

番外&14~16(ネバーセイ・美しき・リビング・消された)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n1b207ed43c27?sub_rt=share_pw

17~21(ゴールデン・トゥモロー・ワールドイズ・ダイアナザ・カジロワ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n716da3c017ae?sub_rt=share_pw

22~24+25(慰めの・スカイ・スペクタ・ノータイム)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n2c6c663508a7?sub_rt=share_pw

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