映画007一挙放送 22〜24作目+25作目 - 感想(慰めの・スカイフォール・スペクター・ノータイム)
はじめに/番組詳細
日程・時刻・バージョン・ラインナップ(簡易版)
◯2023年5月より、BS日テレにて毎週木曜夜9時頃から、映画007シリーズ24作品の一挙放送がスタートしました。
・「ドクター・ノオ」から「スペクター」までの24作品、字幕版での放送。最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年公開)は無し。
・CMアリ恐らく全作品ノーカット
・夜9〜11時半、または8〜11時頃まで。
・エンドクレジットも最後まで
・レストアスタッフ・クレジットも有り
・一部を除いたほぼ全ての作品がレストア盤
・同年10月、全ての字幕版の放送が終わった翌週から、今度は吹替版でイチからスタート。
「またやるんかーい!」と軽くショックを受けたら吹替で嬉しかったです、BS日テレさん。
◯いつかシリーズ全てを見たいと思っていたので、この一挙放送はとてもありがたかったです。せっかくなので定点観測的に、感想を日記のように、書き残しておきます。
とはいえ本腰入れて見た訳じゃないので、ぼんやりしています。
日記です。
感想です。
▽シリーズ全体のあらすじ
◯スパイ映画の金字塔、世界的な映画シリーズ。
イアン・フレミングのスパイ小説を元に、イギリスの諜報機関MI6に所属する主人公の活躍を描く。コードネーム="007"(ダブルオーセブン)を有するジェームズ・ボンドが、世界を脅かす犯罪組織と戦うスパイ・アクション映画。
◯シリーズといっても一部を除くほとんどの作品が独立したものでありつつ、お決まりの要素やお馴染みのキャラクター等やんわりと繋がりもあったり、有名であると同時に稀有なシリーズでもあります。
全作品ほとんど同じあらすじで、その点では寅さんみたいなシリーズであり、数年毎に主演俳優が変わる点は、「今度は誰があの役をやるのか?」という歌舞伎のような面白味もあります。
ちなみに映画の007シリーズは全てカラー作品。
▽007/慰めの報酬(22)
監督:マーク・フォースター
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
主演:ダニエル・クレイグ
共演:オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、イェスパー・クリステンセン、ジュディ・デンチほか。
初公開は英米2008年、日本2009年。
(あらすじ)ヴェスパーの裏に潜んでいたミスター・ホワイトを始めに、秘密組織「クアンタム」を追うボンド。調査の中で出会ったカミーユと共に復讐を誓う旅路へ。
まとめ
前作の直後から物語が始まるという、今までのシリーズには無かった、直接的な繋がりを持つ作品。クレイグ版ボンドは全ての設定・物語が繋がる連作となっています。
感想
007映画としては賛否のある作品。今見ると丁度いいと感じるのは、これらの作品が公開した以降のポリティカル・アクションや、ジョン・ウィックみたいな映画を見慣れたからだろうか。
▽007 スカイフォール(23)
監督:サム・メンデス
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
主演:ダニエル・クレイグ
共演:ハビエル・バルデム、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショー、レイフ・ファインズ、ジュディ・デンチほか。
初公開は英米日2012年。
(あらすじ)MI6を狙う謎のテロリストを追って、隠居していたボンドが復帰する。
まとめ
シリーズの中だけでなく、一つの映画としても世界的に評価の高い一作。いつの間にかボンド映画の真骨頂であるユーモアや荒唐無稽さは無くなっていましたが、初期に見られたシリアスな部分はより緊張感を増し、アクションシーンにおいても派手さは失われていません。
冒頭の、崩れる車両から飛び降りてカフスを直す名シーンとか、最後まで凛とした佇まいを忘れずに描くところが、ちゃんと007映画らしい。
感想
初見時は映画の見方とか色々とわかっていなかった時期だった。それもあって?、イヴがボンドを撃ったり監視していたせいで、最初は敵かと思っていた。最後に"マネーペニー"だと判明してやっと味方だと理解した記憶。映画の見方とか以前の問題な気が。
冒頭。ショベルカーから列車に飛び移った直後、まず先にカフスを直すボンド。このシーンは何度見ても格好良い。最高。
新しいQが初登場。ボンドとの会話も弾んでスムーズに進むのは相性良い証拠?(映画的にもテンポ良くなる)
上海の高層ビルでの、敵スパイとの戦闘。暗闇の射撃で一瞬光って、二人のシルエットが見えるシーンは後年の「ザ・バットマン」を連想する。
軍艦島、日本語か中国語かの看板が見える。
というか「スペクター」でも敵がわざと捕まる展開じゃなかったっけ?って思ったけどあっちはボンドが捕まる方だった。捕まるというかほぼ招待だった。
今作も「スペクター」でも終盤のボンドは、満身創痍でヘトヘトって程じゃなく、まだ動けそうな状態で居るのが、あくまでスマートに描くことを止めないボンドシリーズらしくもある。体はめっちゃ傷付いていながらも、凛としている。
▽007 スペクター(24)
監督:サム・メンデス
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
主演:ダニエル・クレイグ
共演:クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショー、イェスパー・クリステンセン、レイフ・ファインズほか。
初公開は英米日2015年。
(あらすじ)Mからの特命を受けたボンドは、世界を裏側から牛耳る秘密の組織を追う中で、かつての宿敵に関わる女性を守らなければならなくなる。
まとめ
前作より少しトーンが明るくなった気がする作品。それでもかつてのシリーズに比べたらしっかり真面目で落ち着いた作風です。シリアスでいて軽いユーモアも忘れていない、丁度いいバランスだと思っています。
BS日テレでの放送も最後。とうとうここまで来たのか…。個人的に色々あった半年だったから、並走してくれて励まされている様な気持ちに勝手になっていた。無事に放送が終わって感慨深い。
この半年間、「映画を見る」「映画を楽しんで見る」というリハビリになったし、それが社会への繋がりを保ち、段々生活を穏やかにさせるきっかけの一つになりました。軽さも重さも味わえる、007というこのシリーズが丁度良かった。放送してくれてありがとうございます。
感想
…と思ったら、来週からまた放送するんかい!!!!!
もしかして、この半年間の一挙放送が最初の一挙放送じゃなくて、2回目の一挙だった?ループした後の放送だった……?
と焦っていたけど、次週からのは吹替版での一挙放送でした!すごいBS日テレさん!ありがとう!!笑
(タイムループするジェームズ・ボンド…。もしかして、次の「カジノ・ロワイヤル」放送ではヴェスパーを救えるバージョンになっているとか…?「女王陛下の007」のテレサ、「消されたライセンス」ライター夫妻も無事に……??ってことは無い)
25週も見てると、敵組織からのもてなしですら感慨深い演出な気がしてくる。
やっぱ列車内アクションは良いな。
冒頭のメキシコ。戦闘後、崩れたビルから落ちてしまうボンド!でも下にはソファーがあって、ストンっと座るように可愛く着地。横に飾ってあったライトか何かを、一瞥してから投げ捨てる。
こういうユーモアや、お馴染みとなったQとの軽口の応酬など、トーンは変えない程度のギャグが前半にはあって、見やすい作りになっていた。
後半はクレイグ版シリーズ、というか前作スカイフォールで顕著だったシリアスに振った展開で、前半とのギャップからグッと引き込まれる。
ただ前半で見られた軽快な部分がもっと欲しいと言う人も居るだろうし、自分ももうちょっと見たい気もするけど、やっぱりシリーズが収束に向かっているので仕方ない。そりゃあシリアスにもなる。
あと一作あるけど、クレイグボンドの連作をひとまず終わりに向かわせるからこそ、集大成として、クレイグ以前のシリーズにあった軽妙さも押さえていた部分もあるんじゃないかという気もする。対比があるからこそ楽しめた映画かも。
▽007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(25)(ブルーレイ)
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
主演:ダニエル・クレイグ
共演:ラミ・マレック、レア・セドゥ、ラシャーナ・リンチ、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、レイフ・ファインズほか。
初公開は英米日2021年。
(あらすじ)一線を退き、マドレーヌと共に平和に暮らしていたボンドだったが、過去の因縁により再びスパイとして戻って来る。若手の勢いに負けじと事件を追う中で、テロリストの魔の手がマドレーヌをも巻き込みボンドに迫る。
◯公開したのが2年前という、つい最近であるせいか、一挙放送には含まれていませんでした。ダニエル・クレイグの最後のボンド、その連作の最終作だし、何よりこれを放送していれば本当にシリーズ一挙放送だったのだから、非常に勿体無い。とはいえ映画の放映権は高いと噂だし、ただでさえシリーズのほとんどを放送しているんだから、最近の作品なんてやったら更に費用もかかるんでしょう、多分。ホントかわからないけども。それでもやってくれるだけありがたい!
という事で、ここまで来たらこれも見ない訳にはいかないと思い、ブルーレイをレンタルしました。去年見たぐらいだけど、字幕と吹替で再鑑賞。
まとめ
ダニエル・クレイグのボンド引退作。配給もユニバーサル・ピクチャーズとなり、日本では東宝東和配給。
前任の監督降板や、新型コロナウイルスによって何度も公開延期となったが、なんとか劇場公開された作品。
中盤、隠れ家でのボンドとマドレーヌの会話シーンでの、彼女の表情がとても素晴らしい。視線も良い。今回は叫ばないラミ・マレックの悪役演技も良くて、しつこく繰り返す「そうだろ?」が最高。会話劇で描かれるキャラクターの心理と、会話だけで見る人を引き込む魅力があるのが素晴らしい。恐らく監督の手腕によるものっぽい。
感想
オープニング直後、海沿いの家で一人静かに暮らすボンド。南国にはよくあるのかわからないけど、シャワーが屋外にあって吹きっ曝し状態。そしてシャワーを浴びながら歯を磨いている。あんなにワイルドで荒々しい歯磨きは見た事ない。大泉洋もこのパターンで荒々しい男に再チャレンジしてほしい。
本部でマネーペニーと話していると"現"007も話に参加してきて、若い2人から、やいのやいの言われるボンドが可愛く見える。微笑ましい。ノーミと話しているのを見たペニーが「仲良いんだ?」とか言うのもイイ…!
QとマネーペニーがMに黙ってボンドに協力する。あの3人が一緒になっているところを見ると安心する。「"アイツら"にまた会いたい」と思わせる、良い雰囲気がある。お馴染み。
サフィンがマドレーヌと話している時、「そうだろ?」と同じ言葉を使うのが印象的。英語だと「Doesn't it?」とか「Is it?」だけど。ネチっこくて悪役っぽさがあって良い。
その後のシーンでも「そうだろ?」と言うのが多いサフィン。英語だと「Is it?」という言い方ではないパターンもあったけど、意味合いとしては大体同じ事なんだろうきっと。と思っていたらボンドとの会話でも「Isn't it?」、そうだろ?って言ってた。松永天馬かよ。
離れにある隠れ家での、ボンドとマドレーヌの会話シーン。レア・セドゥの演技が良い。複雑な気持ちが混ざった視線。
今回のラミ・マレックは叫ばない。むしろ小声でボソボソっと、少しも大きい声は出さなかった。
▽一挙放送を見終わって
”映画”を楽しむのにうってつけかもしれないバランス感
「スペクター」の項で書いた通り、半年間、勝手に励まされている様な気持ちになっていたので、無事に放送が終わって感慨深い。
シリーズ全体で見ると、コネリーやクレイグのシリアスさも、ムーアのような軽妙さも両方見ることが出来て、派手さを重視したダイナミックな演出からアカデミー賞まで届く美しい画作りも味わえる。軽さも重さも味わえる、007というこのシリーズが本当に丁度良かったです。
古い作品を見るということは
長寿シリーズを一作目から見るのは億劫になりそうだけど、007は見やすい方だと思います。一作目なんて60年代だけど、むしろ初期の方が見やすいかも。「有り得ないだろ!」「それは酷い(笑)」みたいなツッコミ所は、価値観の変化というよりもボンド映画特有の荒唐無稽さだと思うし、そういう現実離れした"有り得なさ"は映画の醍醐味の一つなのだから、それは馴染みの無いぐらい古い作品だろうと楽しめる筈。まさに"映画らしさ"に溢れていると思います。
価値観の違いで過去を笑うのは少しフェアじゃない気がするし、それは自分も気を付けたい所ではありますが、そもそもボンド映画は当時からぶっ飛んでいると言われていたと聞くので、線引きが難しい部分もあるかもしれません。ギミックは当時からヤバいけど、人物描写とかは。
テレビ一挙放送=手軽なレトロ・スペクティブ?
自分より前の世代、70、80年代の方が今となっては気怠いかも?と思いきやそこはジェームズ・ボンド。シリーズ特有の、良い意味での"軽薄さ"が親しみやすく、80年代なんてポップ・カルチャー全盛期みたいな空気感もあって、それぞれ見やすさがあります。こういう変遷は興味深いですね。
古い方こそ見やすいというのは007に限った話じゃないし、映画史的には60年代なんてまだまだ新しい方かもしれない。だから苦手意識を持たず気軽に触れていくべきかもな、と思えたのも、一挙放送を見て良かった事の一つです。
シリーズの感想記事リンク
コチラ。
1(ドクター・ノオ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/ncb7c33ead211?sub_rt=share_pw
2(ロシアより)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n2d0ba2afbd8d?sub_rt=share_pw
3(ゴールドフィンガー)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n0d585ef2d5b8?sub_rt=share_pw
4~8(サンダー・二度死・女王・ダイヤ・死ぬやつ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n3c95c5e09be8?sub_rt=share_pw
9~13(黄金銃・私愛した・ムーン・ユアアイズ・オクトパ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/nbfd2d41f1768?sub_rt=share_pw
番外&14~16(ネバーセイ・美しき・リビング・消された)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n1b207ed43c27?sub_rt=share_pw
17~21(ゴールデン・トゥモロー・ワールドイズ・ダイアナザ・カジロワ)
https://note.com/yukanoyu2157/n/n716da3c017ae?sub_rt=share_pw
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