9/2-13 冷たい風に切なくなりたい
9月2日(月)
朝、風が秋風味。
電車の中で、唐突に社用スマホのパスコードを思い出せないことに気づいて動転する。1日10回は以上入力してるし、当然今日だって何度か入れたはずなのに。私用スマホにメモしてたからことなきを得たけれども……。
そういえばちょうど1年くらい前、私用スマホのパスコードをどうしても思い出せなくなってiPhoneを初期化したことがあった。自分のことがこわかった。
帰宅後、うさぎと戯れる気力もなく、1時間ほど無心でTwitterをスクロールし、22時ごろ寝落ち。
2時前、ようやく這い上がって最低限のことだけ済ませる。寝落ちの頻度が高すぎて、最低限セットがかなり効率化されてきた。歯磨き洗顔スキンケア、目薬をいっぱいさしてコンタクトを外し、足を洗ってデオドラントシートで身体を拭く。
絶対に今じゃないしそもそもいつだってやるべきじゃないのに、ピンセットで鼻の角栓を抜いたりする。寝る。
9月3日(火)
風が涼しい。空気があきらかに秋のそれを含んでいる。今日はほとんど汗をかかなかった。
秋、大学時代を思い出す。季節の変わり目はいつも懐古して胸を苦しくしてばかりいて、今は将来に思い描くものが何もない。頭で考えることと本心が食い違い、一歩も動けなくなる。
平野紗季子さんの新刊を立ち読み。立ち読みで意味わからんくらいおもろい。おもろすぎるでしょうがっ!と思いながら、力強く棚に戻す。平野紗希子さんとくどうれいんさんに関して、生き様が羨ましすぎてまぶしすぎて(あと作品も良すぎて)、長年「好き!」とは素直に言えない複雑な感情を抱いている。誰目線ですか?
22時ごろ寝落ち。最低限のことすらこなせず、何年ぶりかにメイクをしたまま寝てしまった。
9月4日(水)
ぎりぎりの時間まで寝る。シャワーを浴び、肌ごめん〜!と思いながらコスメデコルテの高い美容液を塗る。普段は特別な日とその前日にしか使ってない貴重なやつである。それが功を奏したのかはわからないが、日中確認してもそこまで肌が荒れた感じはなかった。胸をなでおろす。
仕事をさぼって動物園に行きたい気分だった。
あらかじめ有休をとって、とかではなく、ふいに思い立って平日に行きたかった。少しの後ろめたさと奇妙な解放感を得たかった。『愛がなんだ』のテルコとマモちゃんみたいに。でも結局、ちゃんと仕事に行ってえらかった。本当にいざというときのためにとっておきます。
ちなみに当日欠勤して動物園に行くやつは、東京に住んでいた前々職のときにやったことがある。遠距離の恋人が会いにきてくれていたタイミングで、仕事なんか行ってられっかよ!となり、職場に仮病を使って上野動物園に行った。まるきりテルコの思考回路だったな。晴れた秋の日だった。
夜、うさぎを眺めながら床で1時間ほど寝てしまう。洗顔と歯磨きだけなんとか済ませ、12時前にあらためて眠る。
9月5日(木)
夜、懇親会。おおむね楽しくてありがたい会だったのだが、今日に限らず、この業界の上の世代にはびこる男性主義には心底辟易することが多くて、うまくやり過ごせたらいいのだろうけど、なぜわたしが取り繕わなくてはならないのか!?と思うし、こんなん変えられるわけなくない?としばしば逃げ出したくなる。どこの業界でも同じなのだろうか。力を持っているのは主におじさん。おじさんによるおじさんのための時間。反応に困っていたらもっと上手に受け流してね、となぜかこちらが注意されるのだった。
後ほど、わたしと同じ思いを抱えてらした方もいたことが判明して、しかもその方が男性だったのでちょっと救われた。
帰路、ぎりぎり空いているスタバがあったので焼き芋フラペチーノ(ホイップ増量)をかきこむ。
家に着いたら23時を回っていたが、己のことを信じられないので一度も腰掛けずにシャワーを浴びた。1時半ごろ眠る。
9月6日(金)
ブラウスのボタンが取れてしまった。なんとこの2週間で3着目である。以前がんばって自分でつけてみたら翌日に即取れたので、それ以来、たいへん恥ずかしながら母か義理の祖母にお願いしている。
お昼、同業他社の方にお誘いいただきランチ。
オムライス&焼き鳥セットとオムライス&チキンカツセットで迷われていたので、わたし焼き鳥にするのでわけましょうかと提案した。焼き鳥は2本、チキンカツは5切れである。
焼き鳥、お好きなほうどうぞと1本差し出すと、ではこちらも、とチキンカツをくださった。ひと切れ。ちなみに焼き鳥は2本、チキンカツは5切れである。
いやいいんですよ、いいけど、それはなくない!?とまったく思わなかったか、と言われたら嘘になる。妥当なところで2切れ、わたしだったら3切れ差し出して、いやいいですよ〜と断られたらまあ2切れで引き下がるかな、と思う。結局満腹になったし、というかごちそうになってしまったし、いいんですよ、いいけど、ひと切れ!意地汚い話ですね。
夜、出かける夫を車で(!)送る。帰路は数年ぶりにひとりで運転。家から5分くらいのよく知った道とはいえ、緊張で手が汗ばんだ。家の駐車場にうまく停められず、半泣きで10分ほど格闘。
9月8日(日)
美容デー。まつげパーマのち、無性にフォーが食べたくなって、元町商店街の中にあるベトナム料理店にて蒸し春巻きと鶏肉のフォーのセット。蒸し春巻きが信じられないくらいおいしくて思わず二度見した。なんですかこれは。もっちりぷるぷるの分厚い皮の中にゴロッと粗挽きの豚ひき肉と野菜がたっぷり。添えられた醤油のようなしょっぱい調味料もなんだかやたらおいしくて、無我夢中であっというまに完食した。
先輩へのプレゼントを探してうろうろしたあとネイル。
目星をつけていたお店でプレゼントを買い、そのまま前髪カットへ。ベストな長さにそろえてもらって満足。
合間にカフェで本でも読もうと2冊もかばんに入れていたけれど、そんな時間はどこにもなかった。
どこかをととのえると、じゃあここもちゃんとしなきゃ、と焦る。まつげはくるんとしてるのに眉毛ボサボサじゃ滑稽だし、ネイルは綺麗なのに指毛生えてると幻滅するし、服は新品なのに髪の毛がばさばさじゃみっともないし、みたいな。ほとんど毛の問題ですね。根深い。
9月9日(月)
季節の変わり目であるせいか鼻炎がひどい。日に何度もくしゃみ。鼻水も止まらない。薬を飲む。
9月10日(火)
先週に引き続き、空気に秋の匂いが混じっていて「おっ、よしよし」と思う。はやく冷たい風に切なくなりたい。
感動して泣いたことを思い出してまた泣きそうになるときの感情の内訳、「感動した事柄を思い出して」というよりも、「そのときの自分の心の動き方を思い出して反射的に涙が出る」という感じ。
抜けた、気がする。先週まではなんだか本当にしんどい日がつづいていた。平常心よ、おかえり。こっちが本体なのかは定かではないが。願わくばずっとこの調子でいてほしい。躁すぎず落ちもせず、平静でそれなりに楽しく。
メンタルが平たいと本当に助かる!!こんなに穏やかに過ごせるのか、と己の様子に目を見張る。
夜、スシロー。
寝る前、ベッドで楽天スーパーセールを見ていて、勢いで足枕と、鶏のたたき&パテ&リエットのセットを買ってしまった。なんかめっちゃ安くなってたしポイントバックも大きかったんよ。日に10キロ前後歩くゆえむくみがひどく、ずっと布団とかクッションを重ねた上に足を置いて寝ていたので、足枕の到着が本当に楽しみ。鶏のたたきも、まさか家で食べられるなんて!
完全に楽天経済圏の人間になってしまったし、ついにコスメとかじゃなくて日用品と食料品を買うようになったんだなあとしみじみ思う。あれはね、日付変わった瞬間終わるんじゃなくて翌日の0:59までやってるのが罪深いですね。
9月11日(水)
結婚祝いに立派な明石だこをいただいた。まるまる一杯のたこを手に入れたのは生まれてはじめてだ。顔や頭をまじまじと眺める。
夫、さばきながら「これがたこの口、からすとんびやで」と教えてくれる。からすとんび!江國香織さんの小説『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』に出てくる「からすとんびみたいね」「なあに、それ」みたいなやりとりに登場する、あのからすとんび!たこの口のことだったのか。見るとたしかにカラスのように真っ黒で、さわるとプラスチックみたいに固かった。人間の指などひとたまりもないらしい。
まずはたこぶつにしてそのまま、そのあと醤油とわさびをつけていただいた。やっぱり明石のたこは格別においしい。しっかりと弾力があって、何もつけずともうまみが強い。居酒屋で頼むと1〜2切れしか口に入らないのに、お腹いっぱいになるまで食べられて幸せだった。しかも冷凍庫にはまだまだある。
夕食はお好み焼き。明日お好み焼きにする?と言われて断ったためしが一度もないくらい好き。
9月12日(木)
東京出張。始発から2本目の電車に乗る。座席はすべて埋まっており、立っている人もまあまあいることに毎回驚く。ディズニーランドに向かうらしき家族連れ以外は、みな仕事に行く人と見受けられる。
東京出張は8〜9回目になるのだが、今回はじめてリラックスして過ごせたような気がする。ようやく自分の居場所が確立された感を得、どう思われたっていいんやって肩の力が抜けたからだと思われる。3年目にしてようやく。ようやく。
徐々にやわらいできたとはいえ、初回からしばらくは、今思えばいたいたしいほど緊張していて、その理由はおそらく「こいつやば」「常識ないな」「気が効かんな」とか思われたくなかったから。でも今は、良い意味でどうでもいい。それが原因で人間関係がどうこうなるわけじゃないってわかったせいもある。前職しかり、どういうわけか組織の中で嫌われていると思い込みがちなので、いい加減びくびくするのはやめたい。おそらくそんなことはないのだから。
9月13日(金)
面談で身に余る評価をいただき、単純なのでうわ〜がんばりたい〜となる。
営業にあるまじき発言をするのだが、多分わたしは数字を上げることにやりがいを感じにくくて、それよりも書店の方や社内の人が喜んでくれることが何よりもうれしい。だから、後者の手段として数字を上げたいと思う。きれいごとばっかり言ってられないけれども、好きな人たちの役に立ちたい、という気持ちが本音に近い。
帰路、サーティワンの自販機でポッピングシャワーを買ってみた。一口もらったりしたことはあるけれども、自分で買うのは初である。
動き出した新幹線の中で、aikoを聴きながら口の中をぱちぱちいわす。前回の出張帰りは本当に疲れ果てていて泣きそうだったのに、今日はまだ余力があるといってもいい。そのことがうれしい。夫とうさぎの待つ我が家へ帰る。
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うさぎ、生後3ヶ月になりました。
これからもすくすく大きくおなりよ〜
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