ストックオプションの光と闇 ~失敗談から読み取るSOの課題とソリューション~
#ファイナンス #ストックオプション #SO #資金調達 #スタートアップ #HACKJPN #HUNTERCITY #戸村光 #岡田広
【スピーカー】
岡田広氏(PLUTUS CONSULTING (プル―タスコンサルティング))
第二回目となる今回の授業ではストックオプションについてPLUYUS CONSULTINGの常務取締役である岡田さんに講義していただきました。
お恥ずかしながら、私は今回の授業で初めてストックオプション(SO)というワードを知りました。(-_-;)
私のようにSOについてよくわからない…という方でも、SOの定義から、SOの成功談・失敗談、そこから見えてくるSOの長所と短所、課題、そしてソリューションまで、今回の記事でかなり理解を深めることができるので、最後まで読んでいただけると嬉しいです!
1. ストックオプション(SO)って何だろう?
ストックオプションは英語表記でEmployee Stock Optionを指します。(この記事ではSOと略させていただきます。)
SOの定義は “報酬として無償付与する新株予約権*” 。
これをわかりやすく言い換えると、従業員や役員などが自社株をあらかじめ決められた条件・価格で取得することができる権利を、付与する制度です。
会社側(SOを発行する側)と従業員側(SOをもらう側)がSOの仕組みを正しく理解した上で、導入することで、企業価値向上への意識付けが双方で可能になます。その結果、会社全体でのインセンティブを高めることができるのです。
新株予約権*:(share options)会社法に基づいて発行される有価証券*であり、定められた条件により当該株式会社の株式の交付を受けることができる“権利”。
有価証券*:(stocks and bond, security, negotiable instrument)手形・小切手・商品券・株式など、その所持者の財産権を証明数証書。
2. SOの失敗談…
上記で述べたように、SOを正しく導入することができれば会社にも従業員にも利益があるものの、SOの導入を上手に行うことができなかった企業が多々あるそうです。
そこでまずはSO失敗あるあるとその失敗がもたらす悪影響についていくつか共有していきたいと思います。
・SOを渡した人が全然貢献していない
悪影響:既得権、フリーライダー*問題
SOは今後の活躍が見込まれた人材に発行されることが多いのですが、実際にその従業員が全然活躍しておらず、活躍していないのに利益だけ得るということが起こってしまうという敗談。
フリーライダー*:フリーライダーは、「不労所得者」や「コストを負担せずに利益だけを得る人」という意味があります。集団の利益にタダ乗りする人という意味でフリーライダーと呼ばれます。本来は社会学や心理学などで使われる学術用語ですが、一般でも使用されるようになってきています(Trans.Biz)
・SOの発行規模を間違えた
悪影響:過大なキャピタルゲイン、(上限のある)潜在株比率*の非効率な活用。アリーベンチャーによくある失敗談。
潜在株比率*:潜在株式数を発行済み株式数で割った比率のこと。この比率が高ければ高いほど、将来その企業の発行済み株式数が増える可能性があることになる。
・SOがインセンティブとして機能しなかった
悪影響:企業価値に対する正確な意識付けができない。希薄化に関する理解がない。錬金術と勘違いしてしまう従業員がいた。
・SOを渡した人が引き抜かれてしまった
悪影響:すでに発行済みのSOは交代要員(代役)の採用に関しては活用が困難。
・SOの税務を考えず発行してしまった
悪影響:税制適格要件の充足の困難性
条件を満たし、20%の譲渡取得課税しか課税されないと思っていたら、条件を満たしておらず、50%の給与所得税の課税がかかり、手取りが大幅に減ってしまうという失敗談。
SOでの失敗を未然に防ぐためにはまず、両者(会社側、従業員側)の正しい理解が必要不可欠です。
そもそもSOによる資産効果は、錬金術ではなく、顕在株主からの希薄化(価値の移転)によるものなので発行規模に上限があるということを把握したうえで初めてSOの理解を深めることができるのです。
3.SOの課題
SOは複数回に分けて発行されることが多いのですが、その発行のタイミングで権利行使価格が株価の上昇と比例して段階的に上昇していくので、付与を受けるタイミングによって、上場時に手にすることができるキャピタルゲインに大きな差が生まれてしまう。
<経営者と対象者に利益相反する点があることに起因>
・付与そのものについて
・付与のタイミング
・公平性
・付与対象者の選定
・退職について
・権利行使価格について
利益相反があるなかで“とりあえず”付与をせざるを得ないケースが多い
付与する側、付与してもらう側、両者が利益を得ることができない。そのっか、SOを有効活用できていないということになってしまう。
・付与対象者の税務
先ほど税務の失敗談で述べたように税制適格要件を満たさない場合は権利行使時のタイミングで、給与所得課税の対象となってしまう。
TIP1 SOを成功させるためには
・事業計画に合致した採用計画を念頭に置き、付与の対象者の選定範囲を考える。
・将来の想定される時価総額と資本政策を策定し、発行のタイミングを計る。
そして何より大事なことはSOについての正しい理解を深めることで失敗を未然に防ぐことができるのです。特に税務面での理解が重要になります!
5.ソリューション ~SOの課題への解決策~
・有償SO(有償新株予約券)
公正価値での有償時価発行の新株予約権。付与対象者が新株予約券の構成価値相当額の金銭の払い込みをもって取得するため、取得時に資金負担が発生し、新株予約券の“売買による取得”となり、給与取得課税の対象から外れ、譲渡取得課税(キャピタルゲイン課税)の対象になる。
=“報酬”ではなく“投資”というインセンティブを従業員に与える
TIP2 有償SOの活用ポイント
・付与対象者の属性・目的等に応じた制度の選択が必要 (例)幹部:有償、従業員:無償
・M&A等のIPO以外の選択肢の可能性にも対応できる手法の検討
しかしSOや有償SOを活用しても残された課題が…
その課題をも解解決する新たなソリューション。それが“時価発行新株予約権信託”なのです!
<時価発行新株予約券信託>
有償SOで解決できなかったSOの課題のソリューション
スキーム
・信託受託者に対して時価発行新株予約権を発行し、一定の条件を満たしたときに対象者に交付。
・委託者による財産の信託時点での課税により、受益者確定により財産が受益者に帰属する時点では非課税。
・「時価発行新株予約権」を活用するため、権利行使時は非課税
TIP3 時価発行新株予約券信託の魅力
・上場が“通過点”という共通の認識を会社側、従業員側で持つことで頑張ることができる
・入社のタイミングがずれても受益者をあと決めできるので、あとから入った従業員でも、活躍次第でインセンティブを得ることができる。
まだまだ課題が残されていたSOの運用。ですが、しっかりとSOの仕組みを理解することで、失敗してしまうリスクを抑え、SOの運用からインセンティブと利益の両方を得ることができるのです。
受講の感想
今回の授業でSOの基礎知識から、SOでの課題に対してのソリューションまでしっかり学ぶことができたと同時に、SOを活用することの重要さそして複雑さを知りました。SOの活用で利益を得るためにも、従業員だけでなく、SOを発行する会社側もしっかりSOの仕組みを理解させるための教育が何よりも大切なのではないかと考えます。
まだ学生で、ビジネスの知識が乏しい私ですが、HUNTERCITYの授業でインプットした内容を自分なりにアウトプットしていきます!温かい目で見守っていただければ幸いです🌼また誤っている個所や補足などがあればコメントをお願い致します。
最後まで読んでいたき有難うございました😊