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サンリオキャラクター大賞に見る「ハローキティの懐の深さ」

『サンリオキャラクター大賞』を知っているだろうか。
その名の通り株式会社サンリオが開催する、1986年にスタートしたキャラクターの人気投票である。

サンリオといえば、誰もが知っている国民的キャラクターを生み出している会社。特に「ハローキティ」といえば、アンパンマン、ドラえもんと並んで子どもから高齢者まで幅広く知られている数少ないキャラクターの一つであろう。

ハローキティのデビューは1974年。ではそのハローキティが『サンリオキャラクター大賞』で1位になったのはいつのことかご存知だろうか?


ハローキティ、初の1位は第13回目

第1回目の1位に輝いたのは「ザシキブタ」。
その後の1987年〜1997年はマロンクリーム、みんなのたあ坊(2連覇)、けろけろけろっぴ、ポチャッコ(5連覇)、バッドばつ丸、ポムポムプリンが1位を獲得。私の最推しであるハローキティが初の1位を獲得したのは、13回目の1998年である。

……あれ?キティちゃんって、デビューしたときからサンリオの不動のエースなんじゃないの?そう思った方は多いのではないだろうか。

直営店舗第1号店として1971年にオープンした、今はなきアドホック新宿店にて

キティちゃんの意外な"下積み時代"

現在ハローキティの3代目デザイナーをつとめる山口裕子さん(通称:ゆうこお姉さん)によると、デビューから5年ほどはキティちゃんは「売れない子」だったらしい。

ほぼ日の記事によると、ゆうこお姉さんがデザイナーに就任した1980年は、キキララが大人気。
キティちゃんは名前を知られていないくらい地味な存在で、サンリオショップの前でキティちゃんの絵を描いて、お客さんに手渡しては

「お洋服がかわいくない」
「おしゃれじゃない」
「リボンがワンパターン」

などなど、厳しい意見をもらって、どんどん修正していったそうだ。

私の印象では、ゆうこお姉さんはキティちゃんの敏腕プロデューサー。生みの親ではなくとも、キティちゃんがグローバルに活躍するトップアイドルになったのはゆうこお姉さんがいたからこそだと思う。

生まれたときからパーフェクトな人の言葉は響かない、とは言わない。でもその"下積み時代"があったからこそ、キティちゃんのやさしさはより私たちに響くのではないかと思うのだ。

「みんな違って、みんなかわいい」

サンリオキャラクター大賞は毎日WEB投票ができるほか、サンリオショップの買い物でもらえるチップde投票、サンリオの月刊誌・いちご新聞のハガキ投票などがあるので、「たくさんお布施をすれば推しが上位になれる」という生々しいイベントでもある。

これについては賛否両論あるけれど、サンリオキャラクター大賞に対するキティちゃんのスタンスは素晴らしい。

サンリオに所属してる子ってたくさんいて、キャラクター大賞とかも毎年やってるんだけど、でもそれって勝ち負けじゃないんだよね。
サンリオにはね、こんなにいっぱいいろんな子がいるんですよー!っていうのをみんなに知ってもらうためのひとつの方法っていうかね(中略)、みんな違ってみんなかわいいの!

大好きな詩人さんについて語っちゃうよ!【ハローキティの好きなもの Vol.2】

一途に応援してもらえるのはキティ自身、推される側としてもとってもスペシャルでハッピー。でも1人じゃなくてもいいんです、たくさん推してもいいんです!だって弊事務所(サンリオ)、かわいい子いっぱいおりまして。だからぜひ知ってほしい、新たな推しとの出会いにドキドキしてほしい!」

【サンリオキャラクター大賞2023】今年のキャラ大の楽しみ方、教えるよ♪【HELLO KITTY / ハローキティ】

「順位がつく」というある意味明確かつ残酷な結果が出るなか、「1位になりたい」「私に投票してください」ではなく、「他の子に投票してもいい、みんなにキャラ大を楽しんでほしい」と、どれだけの人が言えるだろうか?
この時点でもう、私を含む全キティちゃん好きがさらなる沼に落ちているに違いない。

そしてもう一つの魅力は、この素直さ。「実は、順位も気にしている」というのも人間らしくてとても良いと思う。

「キティちゃん投票したよ」「キティちゃんがんばれ」
と書いてくれてるのを見つけると、もんのすごくうれしくって
「ああ 一人じゃないんだな」「みんながいてくれるんだ」って感じられるから、毎年結果としての順位はどうあれ、楽しかった気持ちが残るんだ

…いや、"順位はどうあれ"ではないかな、
そう、あわよくば?願わくばね、結果もともなえば最高だなって
そうやって応援してくれるみんながいるからこそ、自分が満足できるだけじゃなくて、みんなにも喜んでもらえる結果にしたいなと思って
(中略)
キティたちの原動力はみんなの存在だから、本当にいつもどうもありがとう

【サンリオキャラクター大賞2023】今年のキャラ大の楽しみ方、教えるよ♪【HELLO KITTY / ハローキティ】

「キティたちの原動力はみんなの存在」って、何かもう、百点満点の答えだ。

「みんななかよく」がモットーだからキティちゃんは殿堂入りしない

下積み時代を乗り越えて、1998年〜2009年にはサンリオキャラクター大賞12連覇を記録したキティちゃん。しかし直近では、白い子犬の男の子・シナモロール(シナモン)が4連覇。ハローキティは2022年は6位、2023年は5位だった。

今年の速報ではキティちゃんは6位で、TOP5に入っていなかったのでネット上でちょっとした騒ぎになった。しかしこれについて、サンリオ広報の方がとても素敵な回答をしてくれている。

「たしかに『ハローキティは殿堂入りさせてもいいのでは?』という声もいただいていますが、みんな仲良く、ということをモットーとしています。もちろん、エントリーしたキャラクターはファンのみなさんに応援していただけることをうれしく感じていて、楽しく活動していますね。ちなみにハローキティ自身は常々、自分のYouTubeでも『サンリオ箱推し』と発信していて。今年もキャラクター大賞開始時の動画で、『推しは1人だけじゃなくてもいい、たくさん推してもいい!』と発言しています」(サンリオ広報)

「キティ6位」に衝撃? “殿堂入り”も“引退”もしない、苛烈な投票イベントでも生涯現役貫くサンリオキャラクター

過去には12連覇して、誰もに顔と名前を知られている国民的キャラクター、キティちゃん。表向きはどうであれ、5位だと普通は「悔しい」と思うのではないだろうか。

でもキティちゃんは「本当嬉しい!本当ドキドキした!本当みんなどうもありがとう!」と、懐の深さ、度量の広さを見せつけてくれる。

そして来年は50周年アニバーサリーイヤーと告知するところも、ちゃっかりしていて強かで、現実社会でサバイブする勇気を与えてくれる。生涯現役で過去の栄光にすがらない、そんな姿勢が現代人の胸に響き、キティちゃんをより輝かせているのではないかと私は思う。

50周年を記念し #推し短歌 を詠む

「推し短歌」の応募がもうすぐ〆切なので、もう少し追加で書きたいなと思ったらこんなに長くなってしまった。最後にキティちゃんの想いを込めて、2首詠みたいと思う。

サンリオの
レジェンドさながらチャレンジャー
50周年 本当におめでとう

「なかよく」と言うは易く行うは難し
遥かな旅路を今日も君は行く

キティちゃん、50周年、本当におめでとう!


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