ニッポン47妖怪さんぽ「オマケのおすすめ」2023年5月・東京都/豆腐小僧
全日空の機内誌『翼の王国』で連載中の「ニッポン47妖怪さんぽ」、これは47都道府県の各県に伝承のある妖怪を造形して、その妖怪に誘われるがまま旅をするという連載です(webからも全てお読みいただけます)。
こちらではその本編からこぼれたお話をお伝えします。
どんな妖怪でも追いかけるうちに美味しいものに辿り着いてしまうというのは、まあ、私や編集者の心根が食いしん坊なためそちらに誘導させていることも否めませんが、初めから美味しいものを携えて出現する妖怪もいます。それが今回の「豆腐小僧」です。
この妖怪が出現するにふさわしい、東京らしくて魅力的な豆腐店を探してロケハンしたところ、下高井戸の「いずみや」さん、そして代々木上原の「太田屋豆腐店」さんに行き着きました。
下高井戸駅そばには「下高井戸シネマ」というミニシアターがあって、そこは私が高校時代に足繁く通った場所でした。DVDがなかった時代、世界から選りすぐられた映画に触れるにはこのシアターのセンスにかかっていたのです。もちろん今も他とは一味違うセレクトで変わらずに稼働しています。
そんな下高井戸にある味のある小さなアーケード「下高井戸駅市場」にあるコンパクトな豆腐店「いずみや」さん。店頭に美味しそうな豆腐系惣菜がずらりと並んでいる様子が決め手でした。向かいの鮮魚店には活きがよくしかもお値打ちの魚がずらりと並び、花屋、寿司屋などが軒を連ねる、初めて来たとしても懐かしく思うに違いないところです。
もう一軒、豆腐小僧が現れるのは代々木上原の「太田屋豆腐店」さん。これ以上豆腐店らしい豆腐店はないのではないかと思うくらいの説得力ある店構えです。往来から豆腐作りの様子が見えるという堂々としたオープンな作りにも大いに惹かれました。ここの木綿豆腐は柔らかめであることが特徴で、どんな料理の味付けにもなじむところがまた魅力的なのですが、代々木上原駅側の人気店「桉田餃子」ではその木綿豆腐を使った絶品麻婆豆腐が味わえます。もちろん餃子も素晴らしい!
妖怪さんぽの本当のおすすめは、各地の図書館です。妖怪について詳しく調べるために、どの伝承地へ行っても必ず図書館へ赴き、ネットではおいそれとは見られない「郷土史」を紐解きます。経年変化で崩れそうになった表紙をそっと開くときの高揚感は何ものにも変え難いものです。図書館はその都道府県、市区町村の教育や文化に対する意気込みを肌で感じることができる貴重なスポット。ということで東京の図書館は永田町の国会図書館へ。随分昔に行ったきり、あるいは一度も行っていないという方はぜひ足を運んでみてください。ずらりと並んだ端末を使い検索し、掲載書物を受け取り、閲覧してから返却する……という一連の流れが震えるほどスムーズで感動するはず。妖怪の調査だけのはずが、ついあれもこれもと欲張って、いつの間にか数時間経ってしまう。頭の中を整理しながら、一駅ほど散歩して帰るのがいいかもしれません。
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