見出し画像

ローソンの新しいPBデザインと、北欧スーパーのPBデザイン #ローソンPBに思う *加筆しました

(*6/9のローソン竹増社長のTwitterライブを受け、後半に加筆しました)

ローソンは一番近いコンビニなので、外出からの帰りがけに必ず寄ります。今年の春にPB(プライベートブランド)のパッケージがリニューアルされてすぐ、店頭でドリンク類を見かけたときに、「わ、なんて愛らしい」と心が踊りました。20〜30代の女子がターゲットなのだろうと思い、講師をしているデザイン学校の生徒たちに尋ねてみると、やはり概ね好評でした。(写真はnendo公式サイトより)

画像1

ローソンが狙うところの「店頭での見た目だけでなく、商品を家に持って帰った時、雑音にならずに生活に馴染むパッケージを目指した(広報担当者)」(ハフポスト取材)ことが十分反映され、それは北欧のスーパーマーケットでよく見られるような、パッケージをインテリアとして捉えるという方法論でもあり、ああやっと日本でもそのような考えでデザインされたパッケージがお店に並ぶようになったのかあ〜〜とお店の中に佇みながらひとり感慨に耽っておりました。しかもそれを飛ぶ鳥を落とす勢いをキープし続けているnendoがやってくれたということも非常に頼もしく……ただ、私が自分のSNSで「見て見てコレいいよね、ねっー!」とはしゃげなかったのは、あまりに若々しくカジュアルすぎるからでした。まあ、私は(多分)ターゲット層ではないのだから、棚の角から一歩離れてそっと見る、という感じだったのです。ふふん……(寂しい笑い)。

北欧の話に戻します。北欧は冬が長く、家にいる時間も長くなるため良質で飽きのこないインテリアデザインが豊かに育ったという説があります。それに付随して必然的に、身の回りの雑貨や食品のパッケージデザインもインテリアの一部となっていったことが考えられます。例えばスウェーデンのスーパー『ICA』で2008年から始まったPB、『gott liv』シリーズのパッケージ。(写真は拙著『スーパーマーケットマニア 北欧5カ国編』より・上は様々な食品、下はコーンフレーク)

画像2

画像3

なんて美しい……。『gott liv』シリーズは、いくつかあるICAのPBの中でも、特にヘルシーな素材にこだわる人に向けたもので、ちょっといい(お値段も若干高めの)食品のラインです。今まで食材にそれほどこだわらなかった人の足も止めるようなユニークで品のある世界観。外部から起用された一人のイラストレーターが100種以上の商品のパッケージを手がけていて、主役は完全にイラストレーションです。これらがずらーっと並んだ商品棚はさながら美術館の様でうっとりしました。棚にしまわずにずっと食卓に出しておきたくなるような、額に入れて飾りたいとはまさにこのこと。弊社のスタッフは本当に↑このコーンフレークの箱を額に入れて部屋に飾っています。

ICAの『gott liv』は一人のイラストレーターの作品集のようなデザイン、ローソンは生成りのハンカチに刺繍したようなちんまりとしたデザイン、と違う手法を用いながらも、どちらもインテリアとしてのパッケージデザインという同じ方向を目指しているように見えました。

あー、でもでもでも、ちょーっと待って。調べてみると根本的な展開が全くが違うことがわかりました。

『gott liv』は、ICAのいくつかあるPBのうちのひとつですが、ローソンは全てのPBをこの路線に集約しようとしている、とのことです。つまり、ターゲットを限定しないと。俄然、ローソンPBのちんまりした愛らしさと背中合わせの、視認性の低いデザインが心配になってきました。……例えば、私の両親は80過ぎで二人とも視覚に問題があるので、もし近くにローソンしかなかった場合、買いたいものを探すには店員さんの手助けが必要となるでしょう。

ローソンのいくつかあるPBのなかのひとつのラインがこのようなデザインになる、という話なら(具体的には、PB全体の2割くらいがこの路線なら)全く問題ないどころか、きっとファンも増えて歓迎されると確信できますが、全てをこの方向性にするのかと知った途端、こりゃSNSが荒れるに違いないと察知しました(地震の前の地鳴りが聞こえたような?)そして今、賛否両論が激しく飛び交っていて、私もこのことについて話をしたくなってしまった、というわけです。どうするどうなるローソンの新PB???

……そんな折、6月9日(火)の21時からハフポストの主催で、ローソン社長の竹増さんがTwitterライブでこのことについて語るという画期的な番組がオンエアされるそうです! 消費者がどう受け止めているのかを「#ローソンPBに思う」のハッシュタグで募集しているらしいので、意見がある人は投げてみるとよいのではないでしょうか? 私としては、どんな意見があるにせよ、このような開かれた取り組みはとても素晴らしいと思います。私にとっても学生にとっても勉強になるでしょう、楽しみにしています!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

*以下、6/9のローソン竹増社長のTwitterライブを受け加筆しました。

6月9日(火)の21時からハフポストの主催で行われた、ローソン竹増社長のTwitterライブをオンタイムで拝見しました。ソフトながらもはっきりとわかりやすい談話であり、視聴者がデザインについてどう思っていようが、社長の好感度は爆上がり間違いないひと時でした。このスピードでこのネタでまさか大企業のトップがお話ししてくれるとは、誰も思っていませんでしたから。

(以下私のメモより、正確に同じ言葉ではないので悪しからず)社長はこのPBのデザインが今までばらつきのあった680品目をまとめ上げるものとし、どんなに挑戦的であるか認めた上で、大胆に変革するにはいったん極端な方向に振り切る必要があり、そこから消費者の声を聞きながら戻していくと話し、SNSで話題の的だった納豆などがすでにリデザインに入っていることを明言、びっくりしました(なんか食べながらこの会見を見ていたらここで確実に箸が止まるところ)。なのでこのリニューアルに際し事前に念入りな消費者テストや、UD(ユニバーサルデザイン)の検証について行った気配がないことも隠しませんでした(びっくりその2)。ここまでの批判があるとは予想していなかったと何度か口にされ、失敗もあったと言いきる潔さには、大いに学ぶものがありました。細かいところでいくつかの不明点は残りますが、大変意義のある会見でした。お話ししてくださった社長と主催のハフポストさんに感謝します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

追記の追記です

今(6/16深夜)ニュースで聞いたんのですが、これからローソンにMUJIの商品が並び始めるとのこと。しかも、ローソン×MUJIのプライベートブランドも開発していくって……? はひーーーどうなるのでしょうか? しゃちょーーー!  ソースはこちら。


おまけ/私がnendoが手掛けたデザインで最も好きなのは、化粧品『THREE』です。まるで工業製品のように潔いデザイン。化粧品のパッケージに漂う、ある種のネガティブな儚さ、いわゆる幻想的な女性性のカケラもない。この『THREE』と無印良品の化粧品のパッケージは私にとって、本当に救いの神なのです。


いいなと思ったら応援しよう!