サービスのクローズ、失敗と共に迎える30歳
みんなで子育てをする社会を作りたい
そう思って、2018年11月に起業をし、2019年から子育て家庭のためのミールシェアサービス「マチルダ」を運営していましたが、今月末でサービスをクローズすることにしました。
そして、先日30歳の誕生日を迎えました🎉🎉🎉
私の予定では、30歳の誕生日は起業家としてそして経営者として大きく成長している予定だったのですが、サービスのクローズと共に迎える30歳となりました。
全然予定と違う!
お金もない!
2人目妊娠のタイミングどうするの!?(結構切実です…ちょうどいい時なんて来ないのか…?)
ありがたいことに、ユーザーさん含め多くの方から「良い挑戦だった」と言っていただいたのですが、実情を知っている私からするとクソみたいな悔しい失敗です。(口が悪い、すみません)
このnoteはこの1年半の反省を次の挑戦に活かし有意義な30歳にするために、自分がやってきたことを振り返る個人的なnoteになります。
(あ、誕生日メッセージをくださった皆様、ありがとうございます!)
私がやりたかったミールシェアサービスとは
マチルダのコンセプトはこれ↓
私が作りたかったのは「繋がり」であり、
近所に数人、我が家のために食事を作ってくれる料理好きな人がいる
状態でした。
(サービスの構造イメージ)
自分自身が4歳の娘(サービス構想時は2歳)を育てる中で感じた、
「子育てってなんでこんなに解決されていない課題が沢山あるんだろう」
という気持ちから、「互助・共助の繋がりが作れたら、子育ての課題もなくなるんじゃないか」と思い、始めました。
そこら辺の気持ちはnoteに沢山書いています。
時間をかけて仕組み化した「ミールシェア」
これは後の反省点にも書くのですが、本当に時間がかかりました。
家庭料理のシェアという意味での「ミールシェア」は国内どころか海外を見ても成功しているものはほとんどなく、仕組みも真似できるものがなかったので、試行錯誤をしながらゼロから作りました。
サポーター(おすそ分けをする人)、ユーザー、配達員の3者がからむサービスなので、走りながら試行錯誤した結果、こんなフローチャートが出来上がりました。
文章で表すとこんな感じ↓
〜おすそ分け前週金曜の12:00→サポーターが稼働希望日を入力
金曜12:00〜土曜12:00→配達員が稼働希望日を入力
土曜12:00→サポーターに稼働日の決定通知
〜おすそ分け前日8:00→サポーター、献立入力
おすそ分け前日8:00〜当日8:00→ユーザーに献立公開、注文可能期間
当日8:00→注文確定、サポーターに通知
当日8:30→配達員に配達詳細を通知
当日12:00→ユーザーに配達時間および配達員名のリマインドメッセージ
当日16:30〜20:00→配達員はサポーター宅からピックアップして配達、配達完了ボタンを都度タップで報告
はっきり言って複雑です。
サポーターと配達員は全て私が直接面接をし、プロ意識もありマチルダの活動に賛同いただいた方にやっていただいていたので、上手く回っていましたが、サービスを大きくするのであれば、この仕組みで回すことが出来たかは疑問です。小さなサービスだからこそ成り立った感は半端ないですね。
マチルダのβ版ではLINE Front-end Frameworkを使い、サポーターの献立登録や注文状況、配達員の配達詳細、ユーザーへの献立通知および注文、が全てLINE上でできるようになっていました。
ですが、私はコーディングができないので、最初のα版は全部手作業。
・LINE
・Stores.jp
・Googleキープ
・formrun
・スプレッドシートからのGAS
など、組み合わせられるもの全部組み合わせてテスト稼働していました。最高に便利な世の中ですよね。こういったサービスを生み出してくれた先駆者に心から感謝をしています。
最初の方は、自分を含めて配達員が2人しかいないところから始めたのですが、自分で自転車を漕いで配達をするのも
「この泥臭さ、スタートアップっぽくてむしろ良い!!」
と思っていました。
(↑雨の日の配達スタイル)
が、私、半年以上も配達をしていました。
ここがダメなポイント。
いつまで泥臭いことやってんだよ、と。
この「なんでも自分でやって、組織や仕組みを作るのが遅い」ことが、今回の敗因の大きな一つであることは間違いありません。
苦戦した安全への取り組み
ミールシェアに挑戦するプレイヤーがなんで少ないのかって、1番は「食品衛生」の問題をクリアにできないからだと思っています。
それは、法律的にも、実際の食中毒を防ぐという意味でも。
マチルダは食の安全へのリスクに対して、以下のセーフティーネットを作っていました。↓
サポーターや配達員の面接はもちろん、キッチンチェックやサポーターのご自宅に私が定期的に伺うこと、サポーター自信のみでなく家族が体調不良になった場合でもおすそ分けを即中止できるキャンセルポリシー、30項目にわたる調理時のチェック項目などです。
試行錯誤の中から上記のセーフティーネットを作ったものの、運営する中で、食中毒こそありませんでしたが、異物混入が発生したことがあります。
本当にショックでした。
ユーザーさんご家庭への申し訳なさ、そしてサポーターさんも常日頃本当に気をつけておすそ分けの調理をされていたので、食の安全への仕組みを作りきれなかったことに対するサポーターさんへの申し訳なさ。
何事にも100%なんてことはないし、ましてやミールシェア。
もちろん覚悟はしていましたが、私自身が母親であり、「こどもには安全なものを食べさせたい」と思うからこそ改めて食の安全の難しさを痛感した出来事でした。
超えられなかった壁
マチルダ、そして私が越えられなかった壁は大きく4つです。
・食品衛生の壁
→「飲食店レベルにまで食の安全を担保したい」と、HACCPなども参考にしたセーフティーネットを作りましたが、異物混入発生でそれが不十分であった事を痛感したので、食品衛生の専門家の方々に相談をしました。
ドンピシャで食品微生物を研究されている先生にご相談することもできたのですが、彼らの意見と1年半で私が積み上げた知識・経験を総合して、何より私自身が「今の規模より大きくするには、食の安全の担保が難しい」と思ってしまったことで、この壁を超えることができませんでした。
・リーガルの壁
→どこまでが「おすそ分け」でどこまでが飲食店営業になるのか、の線引きははっきりしていません。
飲食店営業に等しいと判断されれば、飲食店営業許可を取得する必要がありますが、家庭のキッチンでは飲食店営業許可は取得できないので、ミールシェアはできません。
これについては、
・保健所へ複数回足を運び、活動報告および相談
・厚生労働省へ(非公式な)ヒアリング
・一般社団法人シェアリングエコノミー協会に所属
・厚生労働省へパブリックコメントの提出
・区議会議員や都議会議員への相談
などを繰り返していましたが、保健所からイマイチ明確な回答をもらうことができないままコロナへと突入していきました。
コロナにより保健所が極端に忙しくなり、また、人々の衛生意識もグッと上がったことから、リーガル面の推進も難しくなり壁を超えることができませんでした。
ただ、コロナを言い訳にする前に、
・ミールシェア推進にあたっての政治・行政でのキーパーソンを洗い出して総当たりしていく
・研究者等の専門家のキーパーソンを洗い出して味方を作っておく
ということは出来ていなかったので、甘かったなぁと反省するポイントです。
・事業化の壁
→正直にいうと、これが全てです。
マチルダが作ろうとしていたミールシェアは、サポーター、配達員、ユーザーへの三方よしのサービスでなければなりませんでしたが、その場合、採算が合わない。
サポーターからの手数料とユーザーからの配送料で回していましたが、UberEats等のフードデリバリーサービスと異なり、サポーターは個人なので料理の原価率も飲食店より高く、UberEatsのような35%程度の手数料は取れません。
ここが曖昧なまま、「走りながら新たな収益源、もしくはコスト削減のための配送効率化を考えよう」としていたのが、本当に甘かったです。
リーンスタートアップのような「走りながら改善を繰り返していく」という考え方と「計画をしっかり作る」というのは全く別の話で、計画あってこそのリーンな体制なので、この甘さが本当にクソみたいな失敗の要因です。(口が悪い、2回目)
コロナ禍で感じた無力感
新型コロナウイルスが流行し、緊急事態宣言が出された時、マチルダは2ヶ月間サービスを停止しました。
コロナが問題になってきた2月後半から何を思いどんな行動をしてきたのか、詳しくは上記のnoteに買いてありますが、一部引用します↓
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小さいサービスは無力である
ということも強く感じました。
これは大きな大きな反省なのですが、α版を開始してから1年経過したにも関わらず、サービスの拡大どころか事業と言えるところまでも持っていく事が出来ていません。
「安全に運営する」を免罪符に、だらだらと小さく運営してきたのです。
今回、「こどもたち、そして子育て世帯の役に立つ」というリターンと、「リーガル的にチャレンジングな状況で、もしマチルダが感染を広げてしまうことになった場合」のリスクを天秤にかけた時に、マチルダはサービスとして小さすぎる=「こどもたち、そして子育て世帯の役に立つ」というリターンも小さすぎて、リスクを全く上回ることが出来ませんでした。
「少なくとも今のユーザーの役には立てている」という事を支えに運営をしてきたのに、サービスが小さいが故に、一番大変な時に「今のユーザーの役にも立てない」ことが分かったのです。
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この時に思ったことが、今回サービスをクローズする1番の要因です。
「みんなで子育てをする社会を作りたい」という気持ちで始めたのに、そのミッションに対して、全然スピード感持って追い求めることができなかったし、それをコロナで突きつけられたような気がして、本当に悔しかったんです。何をやってるんだろう、と。
反省点ベスト3
反省点は沢山あるのですが、次のチャレンジには絶対に持っていきたくない反省点ベスト3は以下↓
1位 1人でやろうとしすぎた
リーガル面で沢山の相談に乗ってくれたメンバー、デザイナー、β版を作ってくれたエンジニア、そしてサポーターや配達員。関わってくれた方は沢山いて、全員に本当に心から感謝をしていますが、やっぱり1人でやりすぎました。
早く行きたければ、ひとりで行け。
遠くまで行きたければ、みんなで行け。
有名なこの諺を、これでもかと実感した1年半でした。
2位 広い市場に出すこと、
早く成長させることへの覚悟が足りなかった
精神論ではありますが、多くの人に使ってもらえるサービスをやりたいのなら、多くの人の役に立ちたいなら、この覚悟は前提として必須です。
私は自分の人生・20代後半の貴重な時間を差し出す覚悟はしましたが、広い市場に出して早く成長させることへの覚悟が圧倒的に足りていませんでした。
3位 トライ&エラーの回数とスピードの遅さ
「安全に運営しなければ」という尤もらしい言い訳に囚われたことや、私自身の細部に渡るこだわりの強さから、トライ&エラーの回数とスピードが遅かったことも、事業がうまくいかなかったクリティカルなポイントです。
次は細部へのこだわりは保ちながらも、「エラー」をどんどん出すつもりでやろう。
次の挑戦に継承していきたいことベスト3
ここまで反省点を書いてきましたが、良かったこと、ポジティブなことも沢山あって、引き続き次の挑戦にも引き継いでいきたいと思っています。継承していきたいことベスト3は↓
1位 ミッションと課題設定
1年半で子育て家庭の食の課題は痛いほど実感しました。
沢山のサービスが生まれている中で、子育て家庭の食の課題(「栄養のある食卓を囲みたいけど、余裕がない」)はまだ確実にあり、私自身がその課題の当事者なので、引き続きこの課題解決に取り組みたいと思っています。
また、「みんなで子育てをする社会を作りたい」という思いは日々膨らんでいるのですが、このミッションはもう少しブラッシュアップしたい!
2位 オープンさと誠実さ
これは価値観なのかな?オープンであること、誠実さを強度高く持っておくことは次の挑戦でも必ず大事にしたいです。
マチルダがサービスを停止する時も今回サービスをクローズする時も、多くの、本当に多くのユーザーさんからメッセージをいただき、次のチャレンジも応援する、協力すると言ってくださいました。こんなユーザーさんに恵まれたのは、マチルダが常に「オープンで誠実であろう」としたことも一因であろうと思っているので、引き続きその価値観は継承していきたいです。
3位 自分自身が1番のヘビーユーザーであること
課題設定のところと少しかぶるのですが、「キツい、心が折れそう」となった時に、「このサービスがなくなったら自分自身が本当に困る…」と思ったことが凄く力になりました。
ミールシェアは諦めることになりますが、「やり切れるかどうか」ってすごく難しいけどすごく大切で、その点において自分自身が1番のヘビーユーザーであるサービスを次も作ろうと思います。
次は何をするのか、まだ決まっていません
次は何をするのか。ユーザーヒアリングをして、事業計画を立てて、色々と考えてはいますが、まだ決まっていません。次は「事業を大きくすること」から逃げずに行くのですが、私のうざいくらい熱い想いが入るので厄介です。
1人ではできないことをしつこいですが本当に実感したので、可能な限り多くの人を巻き込みながら、仲間を作りながら進んでいきたい。
壁打ちしてくれる人やユーザーヒアリングに協力いただける方、大募集しておりますし、私からもどんどん依頼をしていきたいと思っています。
【ちなみにのお話】
お金について…お金どうしているのか、という話に一応触れておくと、大変ありがたいことに、前職のSOを行使したこと&貯金でなんとかこの1年半を過ごしていました。
次はもうないので、デットだけでなくエクイティでも調達がきちんとできるビジネスを考えねばなりません。そういう意味でも壁打ち相手募集です。
家族について…4歳の娘と夫には本当に助けられていて。娘は(死ぬほど我儘で普段は手を焼いていますが)「次何やるの?ママのおしごとてつだうよ!」って言ってくれるし、起業家/経営者の夫には事業の相談にのってもらっています。ただ、夫は極めて冷静なので、私が熱く「こんなのどう!?」と話しても、「つまらん」「マーケット小さい」と一蹴してくるので、密かに見返してやりたいと思っています。
30歳の豊富のような、かなり個人的な内容になりましたが、読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
そして何より、マチルダを応援いただいた皆様、本当にありがとうございました。
一部良い風に書いていますが、失敗は失敗です。
次は背水の陣で挑みます。
(私自身が毎日助けられた、マチルダご飯🍚
ミールシェアについて、今現在は日本で一番詳しい自負があるので、興味がある方は是非声をかけてください。学びを共有できると思います。)
頂いたサポートは全て本となり、私の知識となります。