NEWSというテーマからインタビューアプリというアイデアが生まれるまで[SPAJAM2019東京A予選]
先日、SPAJAM2019東京A予選に「おやすみ」というチームで参加してきて、ありがたいことに最優秀賞をいただくことができました。
この東京A予選のテーマである「NEWS」に対して、
僕らが作ったのはInterQというインタビューアプリです。
このアプリ通じて、どういった価値を届けたかったのかについては、以下の動画がすべてを物語っていると思います。ぜひ見てください!
さて、このnoteでは「NEWS」というテーマをどのようにして捉え、どのようなプロセスを経て「インタビューアプリ」を作ろうというアイデアに至ったのかを、なるべく実際の時間軸に即した形で、紹介させていただければと思います。
はじめに
ここに書いている内容は、あくまでチームでアイデアを育んでいくなかでの、僕からみた視点や思考を元に書いています。
当然、メンバーそれぞれでアイデアに至るプロセスは異なっていたと思いますが、一つだけ言えるのは固まったアイデアにみんな(・∀・)イイネ!!となったということです。
また、当日のログなどを元に書き起こしているので、一部文脈が飛んでいたり、そもそも変な部分もあるかもしれませんが、生暖かい目で見てもらえればと思います。
そして最後に、当たり前のことですが、このアイデアはチームで考えたものであって、僕個人でどうこうというものは何一つとしてないです。
(というかむしろ僕自身ハッカソンというものが初めてだったので、経験者の方にたくさんリードしてもらった側です。)
以上を踏まえた上で、読んでいただければ幸いです。
(10:30) テーマ発表
SPAJAMの特徴としては、当日どーんとテーマが発表されます。
1週間前に行われていた札幌予選のテーマが「あそび」という抽象的なテーマだったので、今回も抽象的なテーマかなーとか予想していたのですが、いざ当日発表されたのは
「NEWS」
でした。
具体的かつ硬いテーマだなぁというのが、最初に見たときの感想だったのを覚えています。
「NEWS」というテーマをどのようにして捉えるか
さて、テーマがわかったので早速「NEWS」という言葉への理解を深めていきます。
「NEWS」とは一口にいっても、
・今、社会で起きている政治やスポーツの情報
・今オススメのお出かけ/イベント情報
・音楽や映画の新作情報
・友人の結婚や上場などの情報
などのように、いろいろなものが挙げられます。
他にもいろいろ「NEWS」というテーマから出てくることはあると思いますが、整理していく中で特に重要な要素だと考えたのが
・NEWSで得られるのは「情報」だということ
・その「情報」が "自分にとって" 新しいものであること
(≒ 知らなかったこと)
でした。
また、テーマが発表されてから1時間強くらいはチーム横断でアイデアソンが行われるのですが、いろいろな人の考えを知る過程で、「NEWS」に対して以下のようなことが分かります。
・自分にとって興味関心のある情報は積極的にほしい
L 家族、友人、アイドル、スポーツetc...
・一方で、興味関心のない情報はそもそも知りたくない
L 釣りタイトルに引かれて興味ない記事を見てしまうとストレス
・興味の対象は人それぞれ大きく異なる
L 全員が共通して興味を持つような話題はとてもすくない
さて、これらの話を踏まえると、
本人にとってにとって興味はあるが、いままで知らなかった情報が得られる
というところに「NEWS」というものの価値があるだろうということが整理できます。
「情報」とはなにか。またどのようして取り扱うのか。
これまでの過程から「NEWS」というテーマを考える上で、取り扱う「情報」の選定がとても重要だということがわかりました。
この「情報」というものを整理するにあたって、僕は情報に対する興味の輪とか勝手に呼んでいたのですが、下のような汚い図を書きながら思考を整理していきます。
・自分を中心に「情報」は広がっていて、自分から「情報」の距離が近ければ近いほど興味があり、遠ければ遠いほど興味がない
・「情報」は、家族や友人のことであれ、政治やJK文化などといった社会の流れであれ、興味の半径は変われど考える上では差のないものである。
・この興味の輪はいま時点の話であり、遠くにある「情報」でも知った結果近くにくる可能性は十分にある(≒ 潜在的な興味が顕在化するケース)
さて、ある程度思考の整理が出来てきたところで、
この図を元に、「情報」を取り扱うアプローチについて考えてみます。
1. 「情報」を得るコストを下げ、興味の半径を広げる
「3分でわかる」「マンガでわかる」などがわかりやすい例。
政治や経済などといった知っておいたほうが良さそうだけど、難しいしそんな知らなくても困らないしな...みたいなものも、知る障壁が低ければ手にとってもらえる可能性が上がる。
2. 「情報」をカテゴライズし、特定分野に特化する
スポーツでもアイドルでもガジェットでもなんでもいいのですが、「情報」のカテゴリを決めてしまい、その「情報」への興味が近い人だけを対象とするという方法。
こうすることで、興味の無い「情報」自体が入ってくる可能性も低くできる。
3. 遠くの「情報」への出会いを提供する
今までは遠くにある情報だと思っていたが、見せ方や切り口を変えることで近くにあると錯覚させ、知った結果面白かった!と思わせる手法。難易度は高いがとても価値があるものではある。
虚構新聞や、オモコロやLIGのPR記事等がここに属する。
一方で釣り広告などもここに属され、一歩間違えるとストレスに直結する。
他にもソーシャルグラフを元にした方法など、まだまだあるとは思いますが、まぁ世の中にニュースアプリがいくつもあるわけだ、納得というわけですね。
さて、「情報」の取り扱い方について整理できてきたので、これからどういうアプローチを選択していくかと考えるわけですが、この基準は結構シンプルで、
1. みんなが考えそうなことはやらない
2. いかに多くの人が興味/共感を持てる「情報」であるか
という2点だけです。
つまり、これまでいろいろと「情報」を取り扱うアプローチについて整理をしていたわけですが、このアプローチだと競合がたくさんいるのは目に見えていたので、これらは全てボツということです。笑
「情報」は取り扱わない、別のアプローチを考える
一方で、後者の事については他チームとの交流を経て一定仮説が立っていて
家族や友人といった人間的に近い存在の情報は、
どんな些細なものであれ興味を持つ人が多い
という事実です。
Instagramのストーリーなどが分かりやすいですが、そもそものSNSの面白さってここらへんから来てるよね〜とか話していたのを覚えています。
おもむろに投下される膝カックン
この時点で「NEWS」というテーマに対してどうやって取り組んでいけばよさそうか、ある程度道筋が見えてきました。
いままでの情報を整理すると以下の通りです。
・本人にとって興味はあるが、いままで知らなかった情報が得られるというところにNEWSの価値がある
・「情報」は取り扱わない。別のアプローチを考える。
・家族や友人といった、人間的に近い人の「情報」を軸とするのがよさそう
実はここまでのアイデア出しは、チームを半分に分けて行っていたのですが、このタイミングでもう一方のチームメンバーがおもむろにSlackへ膝カックンを投下します。
この画像は、少し前にTwitterでバズっていた「再現CGメーカー」というニュース映像の再現CGが作れるアプリを使って作られたものです。
このなにげない膝カックンから得られることは大きくて、
「NEWS」 とは 「動画の上に、テロップや字幕がのったもの」
「NEWS」を「フォーマット」で捉える
という発想です。
さらに、もう一つ得られる事としては、
「情報」は取り扱うだけではなく、作り出す側になることもできる
ということです。
この膝カックンを起点に、話が大きく加速していきます。
(12:00) 「NEWS」というフォーマットとはなにか
さて、ここからは「NEWS」というフォーマットについてみんなで考えていきます。
こういうときは、すでに世にあるものから整理していったほうが簡単なので、どんどんと出していきます。
・実際にあったニュースのパロディを配信
・ニュース番組のフォーマットを取ったバラエティ番組
・本人にとって最近のニュースを聞く「個人的ニュースを聞いてみた件」
また、膝カックンの「ニュース映像の再現CG風の動画が作れる」アプリから
「xxx風の動画が作れるアプリ」
って結構あるよね、という話になったので思いつくアプリを挙げていきます。
・「プロフェッショナル仕事の流儀」
・「撮るだけYouTuber」
・「To Be Continued Maker」
ジョジョのエンディング風の動画が撮れるアプリです。
さて、今回のテーマは「NEWS」です。
先程整理したように、NEWSにもいろいろなフォーマットがあります。
その中でも、これを作れば面白そうなんじゃないかとなったのが
「インタビュー風の動画を撮れるアプリ」
でした。
ただし、この時点でのアイデアは、あくまで「NEWS」というテーマに対するHOWでしかなく、漠然と面白そうだな〜というだけの状態です。
「インタビュー」という体験の検証をしていく
アイデアはなんとなく固まってきつつも、兎にも角にも体験してみないといいか悪いか判断ができないので、iPhoneの動画機能を使って「今日の意気込みは?」などとインタビューをしあいながら遊んでみたり、
「doska」というインタビューアプリがあったので、こちらのアプリも使いつつ、いろいろな形で体験を検証していきます。
さて、ここまででインタビューというフォーマットは結構面白いし、遊ぶ余地が結構ありそうだぞ、という感触が得られてきました。
そうとなれば、次は実際にアイデアを具体化していくために、コンセプトやペルソナ、ユースケースを考えるフェーズに移行していきます。
「インタビュー」が持つ価値とはなんだろう
自分の中では、先程挙げた月曜から夜更かしの「個人的ニュースを聞いてみた件」が一番ピンと来ていて、
「インタビュー」というのは機会提供でもあって、
機会があるからこそ言えることもある。
ということです。
インタビューとは少し逸れますが、機会があるからこそ言えることって結構あると思っていて、「学校へ行こう!」の未成年の主張のコーナーなんかも今まで言えなかったことを言う場としてとてもおもしろかったですし、
もっと身近なところでいうと、「母の日」なんかも今まで言えなかった感謝の言葉を伝えるという機会を提供していることの一つだといえるかと思います。
コアバリューの仮説を立てる
さて、これまでにいろいろと出てきましたが、すべての要素を列挙すると以下のようになります。
・本人にとって興味はあるが、いままで知らなかった情報が得られるというところにNEWSの価値がある
・家族や友人といった、人間的に近い人の「情報」は多くの人が感心のあるものなので、これを軸とするのがよさそう
・「NEWS」を「情報」として捉えるのではなく「フォーマット」で捉えることもできる
・「情報」は取り扱うだけではなく、作り出す側になることもできる
・インタビュー風の動画を作れたら結構面白そう!
・「インタビュー」というのは機会提供でもあって、機会があるからこそ話そうと思えることもある
あとは、どのようにしてこれらの情報を調理をするか議論をして、最終的に以下のように仕上がりました。
・SNSの普及により、人とのつながりは近いものになったとは思うが、あくまで発信の主体は本人になるので、恥ずかしかったり機会が無かったりして、言えていない、話せていないことって結構あるのではないか。
・「NEWS」のインタビューという体があるからこそ話せることはあって、そこに面白みや価値があるのではないか。そしてそこから生まれた新しい事実も「NEWS」と言えるのではないか。
そして、この中で最もコアとなるのが、
インタビューという機会があれば、
いままで言いにくかったことも言い出せる
きっかけ作りになるのではないか?
という仮説です。
この仮説自体が間違っていては元も子もないので、早速この仮説を検証しに行きます。
(14:00)仮説検証をするためフィールドワークへGO!!
会場の近くに新宿中央公園という大きな公園があったので、早速この公園を舞台にインタビューを行っていきます。
幸いなことに、先程立てた仮説を検証する方法は簡単で、iPhoneの動画を回して「いままで言えなかったことはありますか?」などとインタビューをするだけです。
また、期待しているような回答が得られそうなターゲットとしては、
・カップル
・夫婦
・親子
・友人
と決めていたので、あとはこれらの人達を探してアタックするのみ!
ただし、ただ闇雲に繰り返しても意味はないので、例えばインタビューをするにしても、
・僕らがインタビュアーになったり、ペアの片方の方にインタビュアーになってもらったり
・質問内容も、「今まで言えてないことはありますか」といったオープンクエスチョンから、具体的に「今まで言えてなかった感謝の言葉はありますか」と質問してみたり
と、いろいろなパターンを試しつつ反応を見ていきました。
これらの結果としてわかったことは、
・オープンクエスチョンだと、回答する側が困ってしまう。
・インタビュアーをお願いする場合、質問内容までお任せすると質問者側も何を聞けばいいか困ってしまう。
(か、照れなどから期待しているようなインタビューにならない)
といった課題がみえてきました。
その一方で、インタビューさえ噛み合えば、僕らが仮説としていた「いままで言えなかったこと」を言う機会となるということを検証することができました。
(15:00) フィールドワークの振り返り
さて、フィールドワークを経て仮説は確かに正しそうだ。ただし課題もある。という状態にまで持っていくことができました。
MVPを作成する前に、まずは先程の利用者が困っちゃう問題を解決する方法を考えます。
ただ、この問題に対する解決策はフィールドワークを経て見えていて、シンプルにインタビュアーに対してこの質問をしてねと質問内容を提示してあげるだけです。
そういう経緯で生まれたのがテーマ機能でした
さて、ここまでアイデアが明確になっていれば、あとはMVPの実装へ着手していきます。
MVPを検討&作成
ありがたいことに僕らのチームには、UIデザインだけでなく動画編集まで出来ちゃうつよつよデザイナーさんがいました。
ので、フィールドワーク中に撮影してきた動画を編集して、アプリによって完成する動画のイメージ映像を作成してもらう工程を挟み、全員でゴールイメージを共有するということを行いました。
これによって、自分たちの目指すべき明確なゴールが視覚的に共有でき、またこれが簡単に撮影できるなら面白そうだ!と確信を持てた瞬間でもありました。
さて、デザイナーさんに動画編集をしてもらっている間は、エンジニアチームではMVPとしてどこまでの機能を実装するのか。また、技術的にどこまで実現することが可能そうかということを話し合います。
このときに実装する機能の優先順位も一緒に決めていくのですが、
・アプリで出力されるニュース風の動画は面白みの要素でしかない
・あくまでコアの価値はインタビュー自体にあるので、その結果生まれる動画に対する編集などどいった労力は極力なくす
・コアの価値をプレゼンの際には全面に押し出していくので、撮影機能についてはこだわって作る
という観点を元に、優先度を決めていきました。
(17:00) MVP作成開始
技術検証も含め、開発アイテムから優先度決めまで終わり、問題なく実装できそうだという肌感もつかめたので、ここで初めてそれぞれ実装に着手していきます。
実装に入ってしまえばあとは作るだけなので、粛々とやるべきことを進めていきつつ、プレゼン準備をして発表会を迎えました。
まとめ
もしかすると「インタビューアプリ」とだけ聞くと、「ニュースっぽい動画が作れるアプリ」なのかな、と思うかもしれません。
ですが、僕たちが作ったのはあくまで「インタビューアプリ」です。
このアプリで届けたかった価値は、
インタビューという形だからこそ、普段は言えないようなことが言える。
こうして生まれた新しいNEWSにこそ、大切な価値がある
ということです。
「インタビュー」という行為が、価値を生み出すきっかけとなります。
アプリはあくまでその手助けをするという意味しかありません。
ですが、このアプリを通じて生まれる「NEWS」は、無機質な情報ではなく、温もりのある優しいものである、ということを信じています。
伝えたいこと、伝え損ねていませんか?
世界に温もりのあるNEWSを!!
以上、チーム「おやすみ」でした!!