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遠足の水筒

 久しぶりに雪かきをした。雪かき用のシャベルが見つからず、なぜかやたらと重たいシャベルを使ったので、手が痛い。

 なぜか唐突に過去のことを思い出していた。小学校の遠足だ。
 小学校の遠足というと、決まった順番に並んで、みんなで歩く、ということがよくあった。持ちものは「しおり」に書いてあって、チェックをして支度をする。

 季節がいいのか、5月ごろの遠足は珍しくなかった。日が照ると暑く、帽子をかぶってくるように指示が出ていたこともある。

 そんな季節なのに、「水筒」は持ちものの欄に「水とう」と書かれていただけで、それ以上の記述がない。だから、毎回のように、小さな水筒を持ってくる子たちがいた。

 もちろん、大きな水筒はそれだけ重くなるので、持ち歩くのは大変。それでも、太陽が照っているのに、小さな水筒では、とてもじゃないけど、持たない。結局、その子たちに限らず、ほとんどの子が途中で水を飲みきって、渇きに飢えながら歩いていた。

 この日本で? こんなに水がある国で、子どもたちに、こんなつらい思いをさせる必要はないはず。確かに、水が足りない地域というのも、世界を見渡せば、あるんだけれど。

 小さな子どもほど、後先のことを考えずに飲んでしまう。そうでなくても、水筒が小さければ絶対に持たない。
 今の時代なら、先に保護者からお金を集めておいて、お昼にペットボトル1本ずつ配るだけで解決できる。そうじゃないなら、しおりにはちゃんと、最低容量を記載しておく。

 この段階でお茶を飲もうとすると、1人、2人からは、必ず声がかかる。
「お茶ちょうだい……一口でいいから……」
 大きな水筒は、それだけ重い。私も分けるほど持ってはいなかったけど、喉がからからで苦しんでいる子たちに頼まれれば、分けるしかなかった。

 今の時代、こんなつらい目に遭う子たちがいなくなっていてほしい。


 

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