服をネットで吟味して、注文して、受け取って、袖を通す。
なんだかセンスのないタイトルを付けてしまった。
「コロナ禍」という文字を目にするのも苦しい。緊急事態宣言も延長されている中で、鬱々とする気分。「そうだ、服を買おう。」経済を回す、という大義名分も自分の中にあった。
「外に出るときにすぐ着ることができるワンピースがいいな。オシャレだけど、ガンガン洗えるやつ」
そんな感じで目的と着用シーンはハッキリしていて、以前六本木にショールーム店舗を出していたことが印象に残っていて、元々好きなファストファッションブランド「ZARA」。ここからは一応IT企業勤務なので流れはスムーズである。
1. ネットで検索する→2. 服を選ぶ→3. カートの中身を確認し決済する→4.完了メールが届く→5. 発送連絡が来る→6. 服が届く→7.受け取り、中身を確認する
ただ、実際にはこのプロセスの中で細かいストーリーがちょこちょこ発生する。
■ネットの海の中でとっておきの服を探し出す(具体的なイメージがないので時間がかかる)
■買い物かごに入れたものの、やっぱりやめる(あるある)
■これに決めた!となったものの、決済前に他の商品もやはり見ておこうかとまた検索しだす(やはりあるある)
■いざ決済!のタイミングでちょっと迷う(あるあるあるある)
という訳で、プロセスにすれば単純なのだが、実は戸惑いや逡巡、様々な顧客の感情が揺れ動き、それに呼応するようにインターネットの世界で指を動かす。
私は買い物かごを一旦空にした時の背景が、ただの真っ白ではなく壁のような画像(お店の中のイメージかもしれない)だったことに気づき、ああお店に行きたいなあ、と思ったのだ。そして同時に「こんな細かいところにもこだわりがあって、お家にいても楽しめるなあ」と感じた。
服をネットで吟味して、注文して、受け取って、袖を通す。
トーキョーに住む私にとっては、それはごく当たり前の便利な日常だった。
ありがたい、という感情も、失礼ながらどこかに置いてきてしまった。今日は、受け取るときにちゃんとペンを持ってドアを開けた。自分の意思で配達員の方と目を合わせて、お礼を伝えた。今までは受け取った後開封せずにしばらく置いていくこともあったが、嬉しくてすぐに開けた。そして早速着てみた。生地の感触、ネットでは気づかなかったこと(キラッとした糸も織り込まれていた)、丈感、身幅。姿見での確認。いつもよりずっとずっと丁寧に、1つの服を受け取った。
きっとアパレルブランドの方々や関係者のみなさんは、顧客が体験するであろう一つ一つの行動をイメージし、洋服の画像や、UI/UXや、様々な細かいポイントにこだわってくださっているに違いない。それは以前からずっとそうなのだ。私が気づかなかっただけなんだ。
私は今日、服を受け取って感動した。嬉しかった。作ってくれてありがとう。店舗に行けなくても受け取れる仕組みを作ってくれてありがとう。届けてありがとう。店舗大好き、買い物は俄然店舗派!だった私のお買い物体験と価値観は、今日からぐるっと変わりそうだ。
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