破壊の学校を自分の地域で開催してみた
10月26、27日、徳島県で破壊の学校を開催しました。
「ひと」と「食」と「風景」を訪ねる旅 ーあなたは生活の中に「ひと」を感じていますかー
破壊の学校とは、
https://www.okudahiromi.com/school
「人間」とは何かを考えながらのリトリートプログラム。破壊の学校の行動指針は、飛びつく・壊す・生み出す。サロンという名前を再び使っていますが、オンラインサロンとは異なり、リアルな場、ましてや意味を持って遠くで開催し、あえて参加しづらい環境を作ります。離れた土地で開催されるこの場に飛びつく、これまでの考えを壊す、そして新しいものを生み出す。
徳島のテーマに選んだのは、遊山箱の旅。
舞台は徳島市、美郷、鳴門。超有名な地区じゃ無いとこに、普通の人を訪ねます。視察じゃ無い。破壊です。
開催を決めたのは、第1回の破壊の学校(鹿児島県肝付)を体験して帰りの道中。後先考えず、飛び込んだ肝付は自分の中に熱を帯びてあとで読み返したら言葉を叩きつけたような体験記。
同じく参加者の1人は1週間熱で寝込んだと後から聞きました。
その時の体験記はこちら。
徳島の破壊の学校には、東京、神奈川、大阪、神戸、徳島、鹿児島の方々が参加してくれました。肝付の振り返りをnoteで書きながら、ホスト地域に徳島もなる!と、決めたのは9月8日。
ホスト地域の条件の以下、3つ
1)現代社会のなんらかの「既成概念」、および個々が持つ「固定観念」を”破壊”するテーマを持った活動などがあること→ある!
2)「とにかく、この地域の魅力を伝えたい!」という熱い想いの”個人”がいること→わたし
3) 地域の方との接点を持つ時間が作れること→やれる!!
肝付と比べて悩んだ時間もありました。でも先に前足が出ちゃったし。やると決めて約2カ月。内容と地域と人の壁打ちが始まります。9月には破壊の学校@インドがあり、奥田さんと移動の機内からも壁打ち。どの角度からも壁打ち。物事を決めるには大量の時間がかかる、という私の中の無意識の価値観を見事に打ち砕き、アジャイル的な思考を得ることができました。100個くらいのアイデアを積み上げて、壊してみて更地にしてもう一回考えてみて、何が足りないのか、余分なのかをスピード感を持って考える。言葉にする。頭では分かってた『つもり』だったことが分かります。
ぜひ、ホスト地域になることおススメしたい。この数日の数時間の間に起きた私の中のモノゴトに対しての思い込みへの破壊がすごかった。
遊山箱と巡る徳島版、破壊の学校
キーワードは遊山箱にしました。これは徳島の伝統的な3段のお重のことです。旧の雛祭り4月4日に子どもたちが遊山に出かけるときに使うハレのお重。1段めには巻寿司やいなり寿司、2段目はお煮しめ、3段目にはういろやフルーツが入ります。山には桜、蓮華草、たんぽぽが咲き誇り、鳥のさえずりを聞きながら、友だちと山で遊ぶ。
いつも忙しい母親が自分のために遊山箱につめる料理をするときの煮炊きしている匂いで、なんとも言えない幸せな気持ちに満ち溢れる。遊山箱は小さいもので、山に入って遊び、おかわりをしにまた家に戻る。戻るのは自分の家だけでなく、お友達の家や近所の人のお家にも。遊山箱にまたおかずを詰めてもらって山へ。まるで和製ハロウィンです。
遊山箱はコミュニティで子どもを育てていたころの素敵な風習なのです。諸説ありますが、遊山箱をもって山や田畑をかけながら、子どもたちが元気な笑い声を山の神様や土地の神様が喜んで五穀豊穣をギフトしてくれるとも言われてます。空っぽになった遊山箱のなかに幸せを詰めて家に戻るので、幸せを運ぶ子どもは地域のたからもの。
今回、遊山箱にご協力いただいたのは、遊山箱文化保存協会さん。
バスの中で遊山箱を配り、これを持って旅がはじまります。
中身は川田まんじゅうの吉田さんにコーディネイトしてもらいました。テーマは秋。日の出楼の上生菓子、鳳月堂の鳴門っ娘と和三盆。
遊山箱とともに訪ねる旅
【1段目の旅】
・畑の意味、食を繋ぐ、土地を繋ぐ
・畑の師匠の話遊山箱とともに訪ねる旅
【2段目の旅】
・新たな土地で食を作る
・リキュールという新しい文化創造
【3段目の旅】
食と自然、振る舞われるという意味
この写真は前日の畑のおもてなし準備。こんなの食べたことないだろって八つ頭の親芋を洗う師匠たち。量…!!!しかしでかいっ!秋の芋は美味しい。親いもの横につくのが小芋。親芋をとると、小芋ができない(当たり前なんですが)これから芋のシーズンインなのにいいんですか?と聞いたら、喜ぶだろ!と一言。親いもと小芋の食べ比べ用にアクの強い、大きすぎるため、市場では価値が低いのも関東の人が目にしないといった要因かもしれません。
うちは観光農園ではない
企画のとき、師匠たちを説得することからはじまりました。こんなところに来なくても、きれいな畑はたくさんあるだろ、と。きれいな畑がみたいんじゃなくて、師匠と話をしに来るんだから。
それにこの畑に集まる私たちは農家志望ではありません。私がこの畑と出会ったのは13年前。子どものアトピー皮膚炎から食べ物大事=土も大事。と、農大の社会人コースでお話を聞きに行ったときの先生がこの米田師匠。
のちに農大を退職されて、ご自分の畑の横に卒業生たちのために隣の畑を借りてくれました。写真でも分かるように普通の住宅街の真ん中の畑。効率を目指す人は借りたがりません。はじめは見渡せるサイズの小さな場所でしたが、近所の空き家と倉庫、その横の空き農地も借りるようになり、私に実践の場をつないでくれたのが師匠。
出荷とか売るが1番の目的じゃないから
農家ではないので、目的は出荷とか売るが1番目じゃない。1番は自分と自分の家族とが美味しい安全な野菜を食べるため。畑作業のあとは収穫を分け合い、余った野菜を問屋町の日曜市で売ってます。大量にはもっていかないし、自信もって美味しい!って売るので朝の時間で売り切ります。100円ー300円で野菜を売ってるから、買う人には度々、『こんなんで儲かるんけ?(阿波弁でこれで利益は出て儲かってますか?)』と言われますけど、余剰な分を買ってもらったお金で次に植える種や作業に必要なマルチを買うのです。資金調達も自分たちの範囲で無理せず続けてます。もちろん楽しみながらやっている。『歳とってな、人が寄ってくれる。わしはそれがええと思うんじゃ。どうおもうで?』と。
ここが1段めの旅。
帰りには柿やら葉っぱ付きのピーマン、ししとう、カボチャを持って帰りなさいと。都会でも買えるし、重いから嫌がるかもしれないと収穫しながらも心配したそうですが、みんなが嬉しそうに持って帰ってくれて。米田師匠もうれしそう。米田師匠の先輩の野田先生も久しぶりでしたがお元気な姿を見せてくれました。全員に名刺を配ってくれたり(!)説明してくれたりで。NPO農大アグリの皆さん、ありがとうございました!
バスの道中のガイドは移住コーディネートもしている元タウン誌の編集者の飛田さんにお願いし、徳島のこと、地域性や抱えてる課題などの情報をシェアしてもらいました。吉野川の話、三好長慶の話、藍染から阿波踊りまで。さすがです!
私に誰にも負けないセンスがあるとすれば、それは周りを頼りまくること。今回もたくさんの人に感謝してます。
夫婦2人で出来るサイズ感経営
2段目の旅は美郷(みさと)。美しい山あいの町は古くからの梅の産地で日本初の『梅酒特区』に認定された町。第一号がこの東野さん。
ここに来てみてもらいたかったのは、景色や梅酒はもちろんなのだけど、このご夫婦。長年勤め上げたので故郷の美郷に戻り、ゆっくり家庭菜園や旅でもして過ごそうとしたけど、5年経ってこのまま余生を過ごすには退屈すぎる!と、梅酒の特区に選ばれたこともあり、梅酒をやってみたいと奥さんと息子夫婦を家族会議で説得し、始めたのがこの東野リキュール製造所。前職の研究のノウハウと、大手にはない小回りの決定など、自分一人でなんでも出来る、決められることは、怖いよりも楽しいと。余剰在庫を持たない、自分の身の丈にあった経営をすること。新しいコトを起こすとき、どうしても売れるように量を作って在庫を持って、となりがちなところを逆算して年にこれくらい収入になれば大丈夫。赤字になったらやめる(これは奥さんとの約束)
昨今の地域創生で地域から産業を!というずっと前から梅酒をしてた東野さんのところには、若者が移住して梅酒をはじめた方もいらっしゃるとか。
価格に対する基本戦略を考え、超こだわりの梅酒は収穫後24時間以内に漬け込む、新酒のみを販売する、希少種の梅を使っていたり。生産をあげること、もっと売るために倉庫を増築するのではなく、夫婦2人で出来るサイズ感を確かめながら経営計画をたててる東野リキュールさん。サイズを縮小したり、やめるときの覚悟などもお話しくださいました。共通するワードは自分と周りのひとが幸せであるために。
ライフスタイルの変化に老舗はどう在るべきか
美郷でもう1人、話をしてくれたのは150年続く川田まんじゅうの6代目、吉田社長。川田駅は汽車が燃料を補給するために止まる駅だったので、駅には駅弁を売るスタイルでまんじゅうを売ってましたが、時代の変化とともに汽車の燃料がかわり、売る機会が減ったときに、形を変えるのか、事業を別の形で継承すべきか、など本当のリアルな声を聴けました。
昔ながらの一口まんじゅう、川田まんじゅうは餡子が薄墨色。小豆の皮をおばあちゃんたちが丁寧に向いて作ります。川田駅の近くの本店と徳島イオン、産直市場阿波食ミュージアムなど各種お土産やさんでお買い求めいただけます。
東野リキュールは月1最終日曜日のとくしまマルシェや東京のギフトショーにも出店してます。破壊の翌日がちょうど運良くマルシェの日だったので、解散後に挨拶に寄ったらまたとんでもない量のお菓子や梅ジュースをもらってしまいました…
過疎の村に活気を、梅酒は道具として考えているこの秋の一大イベントをご紹介します。11月の最終週の土日、今年は11月23日、24日に美郷梅酒まつりが開催されます。新酒のヌーヴォーも解禁販売。梅酒まつりの中心的な役割をされている東野さんご夫婦。主役は美郷地域の人と風景。
食と自然、振る舞われるという意味
破壊の学校を説明するのはとても難しい。少しずつ、概念を壊しながらゆっくりと呼吸を整えるような気持ちになる。参加者の表情が変わっていく様を見るってこういうことなんだなぁと幸せな気持ちになります。
ディナーセッションに選んだのは遊山箱。これは基本の遊山箱ではなく、アップデートをしたものをアレンジしていただきました。オンザテーブル、主宰の島内陽子先生のスタジオを貸し切って、セッションの合間にみんなでテーブルを整えるプチ体験も。テーマは10月の週末らしくハロウィン。遊山箱が和製ハロウィンにかけてみました。
お料理は、【deli.cafe.kitchen CAN DO】溝渕シェフ。遊山箱文化協会さんの活動に賛同いただき、遊山箱に詰めるサイズのパンを研究してくださったり、お料理も季節のものを考案いただきました。
破壊の学校では公式なセッションと非公式な参加自由の夜の部があります(肝付と徳島は)宿泊する施設に移動し、リラックスしてから集まります。振り返りをしたり、感想をシェアしたり。翌日は朝のリトリート、スパを体験してからセッションがスタート。 非公式のセッションは日付が変わるまで語り合い、部屋に帰ってからも話が続いたんですよと言う方も。寝不足で大丈夫かなと思ったけど、表情からは微塵も感じず。参加者のみなさんの表情が変わってる様子を見ながら嬉しくなります。
徳島に初めて来たという方が多い中、たった24時間で景色が違って見える。そんな感想がうれしい時間。
何かを豪快に変える、ドラスティックに何かをする"動"ではなくて、砂時計の砂が落ちるように思い込みを壊したり、整えたりする"静"。ここはディズニーランドじゃない。日常の自分と遠くない普通の人を巡る旅。主人公は参加者それぞれ。
誰の人生を生きてるんだ。私は私でいいんだ、ねばならない、事を疑ってみると、改めて日常に見える景色が変わります。そんなことを自分と向き合いながら考えて、思える場所が破壊の学校です。帰ってからも続く破壊の連続。グラグラしながら揺れながら、戻ったり進んだり。破壊の学校は肝付、徳島を経て次は知床が2月28日から決定しています。
破壊の学校のリンクはこちらへ
私が考える「破壊」はいったん手放すことです。言い方を変えると、未来を信じて無になるために壊す。そう考えると、現代の日本では「破壊」という概念を学ぶ場が少ないです。
「破壊の意味」「破壊の価値」を学校や社会で学ぶチャンスはほとんどありません。
*NPOとくしま農大アグリ
毎週日曜に問屋町で行われる『びっくり日曜市』でだいたい野菜売ってます(米田師匠がいます)
徳島市問屋町60番地 (協)徳島繊維卸団地
営業時間:早朝から14時ごろまで
*東野リキュール製造所
〒779-3503 徳島県吉野川市美郷字川俣5-5
TEL:0883-43-2216
FAX:0883-43-2212
営業時間:午前9時~午後5時
定休日:毎週 月曜日
*遊山箱文化保存協会
徳島県徳島市南昭和町1-39-1(オンザテーブル内)
TEL:088-625-3099
FAX: 088-625-2529
mail:yusanbako.tokushima@gmail.com
https://yusan-bako.info/
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