強いデザイン組織の作り方
事業会社において、強いデザイン組織とは何か、どうやって実現したら良いのか、過去の失敗や幾つかの事業会社の組織づくりに携わった経験を元に、私自身が今実践している方法をご紹介してみたいと思います。
INDEX
強いデザイナー組織とは?
強い組織づくりに必要なこと
やってみて見えてくること
まとめ
強いデザイナー組織とは?
様々な解釈がありますが、私は
「表面的な表現に閉じず、サービスに対して何をすべきかから前のめりに議論ができ、素早くユーザーに届ける形を作れる集団」
だと考えています。
このような集団に見られる傾向
手を動かす前に調べたり考える様子が見られる
リリース後の結果を知りたがる
mtgでの会話が戦略や戦術中心になる
mtgが減り、少ない時間での相談が増える
実施スピードを早めようとする動きがみられる
この対局にあたる組織の傾向
頼まれたことをこなすことが目的になっている
事業やユーザーについての議論が少ない
デザインに対するフィードバックを面倒に感じる
意思決定を工数やプロセス主体で考えがち
会議が多い
これらは、事業会社のデザイナーが社内受託化してしまう現象の初期症状とも言えます。
デザイナーが事業にコミットしきれていない、
言ったことはやってくれるけど提案が少ない、
提案してくれるけど内容が、、、
といった相談をいただくことがあります。
そんな時は決まって、これまでにデザイナーに対して試みた内容はありますか?という質問をします。
その際に多い回答が↓こちら。
企画段階からデザイナーをアサインしてみた
KPIやKGIの進捗共有を積極的に行なった
事業理解を深めるようにと指示を出した
一見どれも有効なアプローチのように見えませんか?
私も初めて自分がデザイン組織を立ち上げた際にやったのですが、うまくいきませんでした。
メンバーの共感は一定得られますし、一時期は改善されたように見えたのですが、具体的な行動への転換ができず、成果が上がらない、その結果、一時的に高まった士気を保てず失敗しました。
強い組織作りに必要なこと
では、何をすれば強いデザイン組織ができるのでしょうか。
私は、
メンバーの思考と主担当領域を定める、
横連携の効率化、
意思決定と実行を行いやすい組織構造にする、
の3つが重要だと思っています。
初めてリーダーを任された20代の頃は、まずは業務管理や1on1の実施、エスカレーションフローの構築やデザインガイドラインを、と考えたものですが、そんなことよりも、何よりも、まずは先述の3つをやってみることを強くお勧めします。
それぞれどういうことをやるのか、ご紹介していきます。
1)メンバーの思考領域と主担当領域を定める
例えばECサイトのデザイナーに、
「サービス全体を俯瞰して捉え事業視座で何をすべきか考えて」
と伝えたとします。
メンバーの力量や経験にもよりますが、多くの場合、この指示をもらったメンバーは何から始めたら良いかがわからず、薄く広く調査などをしてみるものの、深く芯を喰ったアプローチには繋がりにくくなります。
これに対し、
集客、サイト回遊、購入、リピート利用、配送スピードなど、ECサービスのKPIをもとに、あなたは集客、あなたは回遊から購入まで、といった具合に、メンバーごとにメインスコープを限定したとします。
すると、メンバーは任されたスコープや目的を起点として、成果を出すために必要な情報を集め始めます。
サービスは、ユーザーの一連の行動や体験がストーリーとして繋がっていますので、任された領域の前後や周辺のことにも関心を持つようになりますが、目的のために必要な調査や思考をするため、的をしぼって深く考えやすくなります。
その結果、サービス理解という漠然とした指示よりも、目的に結びつきやすく効率的な方法で理解と思考の深掘りを行えるようになります。
2)横連携の効率化
1とほぼ同時に始めたほうが良いのが、適切な横連携です。
私がマネジメントしているデザインチームでは、全員に話すのはサービス全体の骨組みや要点のみにしています。KPI毎に分担を決め、日に15分を目安に「朝雑談」という形で、デザイナーで集まり状況や情報の共有などをしています。
また、改善施策をリリースしたらすぐに結果を見ます。
そして、すぐさまslackに流しつつ、出社している場合は席サイドで結果でてたね!と話すようにしています。うまく成果が出なかった場合も、明日のさ朝雑談で軽くブレストしない?と話したりしています。
このやり方にした結果、以下のような変化がありました。
担当領域に対する自分事化が進み、能動的な相談、提案が増えた
メンバー同士のコミュニケーションのテンポ感が良くなり、話題の質が上がった
チームに活気が生まれる
分担をしつつも、横の繋がりによって全体の状況も知ることができる、デザイナー同士でのノウハウシェアをライトに行えるという点でうまくいっているように思います。
頻度の高い1on1や長い定例mtgをするよりもよりもはるかに効率的かつ本質的な関係性が作れると感じます。
メンバー同士の相乗効果も期待できます。
デザイナーに限らず、どんな職種においても有効かもしれません。
3)意思決定と実行を行いやすい組織構造にする
1と2だけでも結構変わりますが、サービスはデザイナーだけでできているわけではありません。
マーケターやプランナー、エンジニアなど、複数の職種が連携して、サービスを形作っています。
だからこそ、他職種も含めた事業やプロジェクト全体の組織設計が必要になります。
組織設計と大袈裟な言葉を使いましたが、考えるべきこと、満たすべき要件はとてもシンプルです。
まず、プロジェクト内の構造がKPIベースで区切れる、小さな集団になっていること。
そして、その集団の中で意思決定と実行が進められる状態であることの2つです。
この対局にある、避けるべき組織は、リーダーやマネージャーの許可を都度取りに行がなければならない、いわゆるお伺い構造です。
満たすべき2つの要件の具体的な取り組みかたにお話を戻します。
デザイナーに加え、マーケターやプランナー、エンジニアなど、意思決定から実行、その後の改善に必要なメンバーをアサインした小さなユニットを作り、ユニットが担うKPIを定めます。
ユニットの規模は、3人から多くて6人、大規模なプロジェクトの場合はここにオペレーティブなタスクを担ってくれるメンバーがさらに何人かいるぐらいがちょうど良いでしょう。
意思決定をしやすい人数に抑えておくことが大切です。
また、ユニットにはリーダーが必要です。
ユニットリーダーは、ユニットを束ねているサービスの責任者に適宜、報連相をします。
この時、サービスの責任者がユニットリーダーに成果を一筋に求められないと、この構造は破綻します。
プロセスの監視や精細な報告資料の要求、メンバー育成をユニットリーダーに強く求めると、目的の達成に集中しようとしているユニットの活動を阻害してしまうからです。
わかりやすい目標を持ったユニットを作れたなら、やってはいけないことと報告してほしい成果だけ決めて、あとはユニットに裁量を持たせることが大切です。
また、ユニットの兼務はなるべく避けたほうが良いでしょう。特に、ユニットリーダーの兼務には、スイッチコストによる思考の低下に繋がるため、慎重に行うべきです。
1〜3をやると見えてくること
短期では、サービス改善施策の実行スピードが上がります。
効果がない取り組みも実施されますが、勝ち筋を見出すために小さく素早く実行して、改善や改良のサイクルを回しやすくなります。
メンバーが成熟してくると、検討の段階での判断精度も上がります。
長期では、本質を深く考えられるメンバーが増え、専門性が高い組織になっていきます。
まとめ
とても長くなってしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回書いた内容は、管理する必要がない自走型の組織をつくる、ということをコンセプトにしています。
また、メンバーの仲が良いことは大事ですが、強い組織を作る上では、仕事を通して良い信頼関係ができ、仲も良くなっていくというのが、組織においては健全な状態のように思います。
もしも、一つでも参考になりそうな内容があったら嬉しいです^ ^