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デザイン改善で売上は伸びるのか?

webやアプリ事業のデザイナーをしていると、
デザインの価値を何で評価すれば良いのか?
デザイン改善により、売上は本当に上がるのか?といった疑問を持つことがある、という方は少なくないのではないでしょうか?
デザインチームのマネジメントをされていると、なおのことデザイナーたちの活躍をビジネスサイドや経営層にどのようにプレゼンしていくべきか、考えてしまうことはありませんか?

私がサービス改善の統括を担っているプロジェクトで、デザイン改善により売上を伸ばせたものがあり、こんなことをやってみました、というお話をしたいと思います。

デザイン改善で売上は伸びるのか?

ずばり、デザイン改善で売上は上がります!

「いや、そんなことはわかってる」と思うかもしれませんが、これをビジネスサイドや経営層に対しても、ここからここまでがデザイン改善による効果で、この先はこんなことが期待できる、という説明を根拠とともに語れる方は、そう多くないのではないでしょうか。

ちなみに私はデザインマネージャー歴が14年ほどありますが、webサービスのデザイン改善の効果を言語化でき、成果も可視化できるようになったのは最近のことです。

そんなわけで、私のチームでwebサービス改善に向けて取り組んだことを紹介したいと思います。

やったこと1:ユーザー行動と事業分析

プロジェクトにジョインして、私が毎回初めにやるのがこれです。
このサービスは、どんな層のお客様に向けたものなのか、市場や業界の動向なども調べます。
ECサイトに例えると、サイトに掲載されている商品と、売上をアパレル、雑貨、家具など商品カテゴリごとに分解して、どんな商品が売れているのかをみます。
また、それらの商品を購入している方はどんな人なのか、サイトに来ている方はどんなニーズの方が多そうかをランディングページや検索クエリをもとに調べます。
可能なら、ユーザーへのデプスインタビューなどもやれると、ユーザーを想像しながらデータと向き合いやすくなります。
このフェーズで、このサービスの立ち位置や強み、弱み、伸びしろをできるだけ俯瞰してシンプルにイメージできることを目標にしています。

やったこと2: KPIレポートの整備

事業を運営している以上、おそらくKPIやKGIを見ていない会社はないと思います。
が、ここで大事なのは、サービスデザインの文脈で必要な粒度で把握できているかどうかだと思っています。
ECサイトでいうと、サイト流入とCVR、売上金額は見ているかもしれません。
でも、サービスデザインにおいては、もっと分解して今起きていることを知り、変化に気づく必要があります。
例えば、以下のような切り口はサービスデザインにおいては有用だと感じます。

  • ランディングページの種類別の流入、CVR、購入者数、客単価、売上

  • 新規ユーザーとリピーター×商品ジャンルごとの購入者数、客単価、売上

  • 購入者の年齢層別の購入者数、客単価、売上

  • 流入経路や媒体別の流入、CVR、購入者数、客単価、売上

  • サイト流入、カートへの商品追加、注文画面到達、購入完了のそれぞれのステップに到達したユーザー数と遷移率

上記はあくまでもECサイトでの例ですが、上記のような切り口で集計した結果をmonthly、weekly、dailyで前年の実績とも比較できるようにしました。
上記の分析粒度は、私が一休という会社で見て経験したやり方をベースに、自分が取り組む事業に置き換えてアレンジするようにしています。

また、今はBigQueryとLookerStudioなどの組み合わせで、ローデータから自動更新のレポートが簡単かつ低コストで作れてしまう時代。
分析レポートの更新はなるべく自動化して、マネージャーもチームメンバーの時間は、思考や実働に使えるようにしました。

やったこと3:データを見ながら仮説を立て施策を回す

1でユーザーやサービスの解像度を上げて、
2で何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかを明確にする。
この2つができていれば、仮説立てと施策の推進はかなりやりやすく、精度の高いアプローチができると感じています。
今起きていることがわかるようになったことで、事業目標とのギャップもわかり、施策の優先順位も判断しやすくなりました。
優先すべきものが見えると、それを優先するために他の施策は今はやらない、という判断もしやすくなります。
ECサイトの、全体の売上を伸ばそう、そのためにCVRを伸ばそう、ということしか見えていない状況では、あれもこれもそれも、全部やらないと!となりがちです。
しかし、これはとても効率が悪く、チームが疲弊しパフォーマンスを落とすことになる、と私は考えています。

また、実施した施策の成果を2で用意した数字ベースで具体的に報告していくことも重要です。
CVR上がりました!ではなく、このCVRの改善は、主にこの層のユーザーによるもので、なぜそのような効果に繋がったかというと、みたいなイメージです。
私は2のレポートを結果、結果の背景や内訳を詳しく調べる時は施策ごとに個別に追加の分析をして、何が起きたのかをチームにフィードバックするようにしています。
上司にも、チームにも、同じ指標を見ながら話をする、チームメンバーもその指標を見るようになると、サービス改善のチーム全体が同じ方向を見て一気にアクセルを踏める状態が作りやすくなります。

ちなみに施策実施後の効果測定は、リリースの翌日に必ず初速を見て、dailyとweeklyの推移を注視するようにしています。
ドラスティックな改修も行いますし、判断を早めることが回せる施策の量と質を上げることにつながるため、「すぐに見る!」を徹底しています。

まとめ

サービスのデザイン改善で売上は伸ばせます。
そのために必要なのは、今サービスに起きていることを正しく、解像度高く知ること。
そして、 KPIをサービスデザインに必要な粒度で可視化し、データを元に会話することが大切です。

極端な言い方をすれば、デザインの成果を証明できない、しづらいと感じているとしたら、サービスの実態を商品やユーザーセグメントごとに分解して捉え、今何が起きているのか、データから起きていることの詳細を語れるレベルに至ってない可能性が高いのではないかと思います。
私自身が過去に自分の仕事ぶりがなかなかKPIに現れなかった頃は、まさにその状態でした。

文字ばかりの記事で恐縮ですが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
誰かの何かの一助になりましたら幸いです。