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怒涛のラマダン〜コロナ禍、子連れ取材のラマダン事情〜

*4/5〜5/30までトルコ南部にて行っているシリア難民の取材レポートです〜(レポートNo:210422)

ラマダンとは何ぞや

トルコでは、4月13日からラマダンが始まりました。ラマダンとは、イスラム教の重要な義務とされ、一年のうち1ヶ月間(イスラム暦のため、毎年月がずれていく)、日の出から日の入りまで水を含めた一切の食を断つ行事です。

シリア難民の家族とともに、私もラマダンをしています。私の夫はシリア人で、8年前に結婚して以来、日本でもラマダンをしてきました。今回、取材にラマダンがぶつかった(というよりもラマダンに取材をぶつけた)ため、子連れ取材、ラマダン、コロナ禍のなかで、未曾有の日々を過ごしております。

ラマダンと聞くと、1ヶ月間ずっと断食すると勘違いされやすいのですが、実際は太陽が出ている時間だけ食を断ち、夜は通常よりも豪華で盛大な食事をとります。

美味しくなければえらいことになる朝食「ファトュール」

取材先のトルコ南部では、午前4:30頃〜午後19:15頃までの約15時間がラマダンの時間。19:15前には、家族全員が集まって料理を前に着席し、ラマダン明けを知らせるアザーン(モスクから流れるイスラームの祈りの言葉)や太鼓の音が聞こえるのを楽しみに待ちます。このとき、料理の用意ができていなかったり、料理の味がまずいと、大変なことになります(夫婦関係が)。経験者としてお話すると、過去に私も、ラマダン明けの食事(「ファトゥール/朝食」と呼ばれる)の味がえらいことになり、夫が激怒して、離婚危機にまで発展したことが何度かありました。また、魚をあまり食べないシリア人の夫なので(砂漠で生まれ育ったため)、ラマダンに焼き魚を出したところ、怒り狂ってえらいことになったことも。とにかくラマダン明けの食事は、美味しくなければならないのです。

ファトュールの後、通常なら人々は、深夜まで友人宅や親戚宅を訪ね歩き、お茶を飲んだりお菓子を食べておしゃべりを楽しんで過ごすのですが、コロナ禍の今は、人々が集って密になることを避けるため、夜9時以降の外出が禁止されています。そんなわけで今年のラマダンは、人々が賑やかにぞろぞろ行き交うこともなく、家族で過ごします。そして一度寝て、午前4:30頃からラマダンが始まる直前に、お腹がパンパンになるまで食い貯め、飲み貯めしてまた寝ます。そして起きるのが昼前、という家族も少なくありません。

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ラマダンは辛いのか?

私も毎年ラマダンをやっていますが、ラマダンは辛いのか?と聞かれると、私の感覚ではズバリ、辛くありません。みんなと同じように、ラマダンの始まる直前にたらふく飲んで食べるからです。あまりひもじさを感じないのですが、それがラマダンの基本理念に対してどうなのか!、という疑問は置いておいて、人々は実際はこのように、ストイックにならずにこのラマダンを楽しみに過ごします。

昔はラマダンは苦しいもので、ほとんどの人が痩せたそうですが、最近はラマダンのあり方も現代化しているのですね。たらふく食べて寝て過ごす人も多いため、太ることが珍しくないようです(!)ただし生活に窮するシリア難民のほとんどは、日々の生活のため、普段通り働いています。それでも日本人の生活から考えると、だいぶゆったりとした過ごし方をしています。

そもそも、なぜ人々は、15時間にも及ぶラマダンをするのでしょう。その目的は、断食をしてひもじい思いを経験することで、食料を満足に食べられない貧者の苦しみを理解し、他者への救済の精神を養うことにあるとされます。

またラマダン月は「聖なる月」とされ、自分の身を清め、信仰心を強めたり、生活を改めることが良しとされます。断食の他にも、貧しい人への積極的な施しが行われます。ただし断食は、病人や幼児、妊婦や旅行者などはしなくても良いとされ、ラマダンをするかしないかは、個人や家族の裁量に任されています。ちなみに子供は7歳くらいからするようで、取材に連れている私の子供たち(2歳と4歳)は、通常どおり飲み食いしています。

ここからはラマダンのシリア料理をご紹介します。

ラマダンのシリア料理

ラマダンの期間、人々は一日二食です。19時過ぎに〝朝食〟という意味の「ファトュール」をとり、ラマダンが始まる直前の午前3〜4時頃に「サフール」と呼ばれる軽食をとります。

「ファトュール」は、手間暇かけて調理され、ラマダンの間、一日のうちの正式な食事とされます。先ほど書いたように、このファトュールが美味しくないとえらいことになります。

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ラマダン明けの食事、「ファトュール」

ある日のファトュール-1
「シシバラク」

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羊肉や鶏肉の挽肉にスパイス、ハーブを混ぜて包み込んだ小ぶりな餃子を、ヨーグルトで煮込んだ料理。

ある日のファトュール-2
「マラカ・ホダール」

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鶏肉とジャガイモやニンジン、豆をスパイス(主にターメリック)で煮込んだ料理。
付け合わせに、ホブス(シリア人が常食とする薄型のパン)を砕いて油で揚げたものを散りばめた「ファットューッシュ」サラダ。

ある日のファトュール---3
「カプセ」

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みんな大好きなポピュラーなシリア料理。日本でいう「寿司」のような存在。スパイスで炊き込んだご飯に、スパイスで煮込んだ(またはオーブンで焼いた)鶏肉を乗せたシリア料理。付け合わせに「ラバン・ワ・ヒヤール」と呼ばれるサラダ(水を加えてトロトロに溶いたヨーグルトに砕いたニンニクと塩・こしょう、オリーブオイルを加え、きゅうりのみじん切りを入れたもの)。「ファットューッシュ」サラダ。

ある日のファトュール---4
「スィーニーヤー」

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「スィーニーヤー」とは、お皿を使ったオーブン焼き。トマト、ジャガイモ、羊肉(または牛肉)、玉ねぎなどを重ね、焼いた料理です。まずひき肉にスパイスやニンニク、トマトやタッブーレ(イタリアンパセリ)のみじん切りを加え、よく練ります。

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オーブンで焼く前の「スィーニーヤー」。すごい肉の量ですが、この家庭では羊を飼っていて安価に羊肉を食べられるため、今日はたくさん羊肉を用意したとのこと。

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こんな大皿を一体どこで焼くのか!と思っていたら、あらまあ!。トルコには(シリアでも同じく)、「フロン」と呼ばれるベーカリー(パン屋)がいたるところにあり、人々はそこに「スィーニーヤー」を持ち込んで焼いてもらうのです。パンを焼く大きな釜があって直火で焼くので、とても美味しく焼けるのと、安価に利用できるとのことで、「スィーニーヤー」以外にも、アラブ菓子やクッキーを焼きに持って行ったりと、さまざま利用されているようです。

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さて、ようやく「スィーニーヤー」が完成です。お母さん、今日も美味しいご飯を作ってくれてどうもありがとう!
今日のメニューは「スィーニーヤー」、付け合わせにミントの葉、トマトときゅうりのサラダ。

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ラマダンが始まる直前に食べる軽食、「サフール」
ジャムやゆで卵、オリーブなどの付け合わせからなる簡単な食事。

ある日のサフール---1

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ズッキーニの塩油炒め、ゆで卵のオリーブオイルかけ、オリーブ(各家庭の手作り)、ラーメン、ツナ缶、チーズ、ハロワ(ゴマのペーストに砂糖を加えて固めたもの。ジャムのようにホブスにつける。)、オリーブオイル、ザータル(スパイスを混ぜたふりかけ的なもの)、トマトやピーマンなど


ある日のサフール---2

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ツナ缶、ゆで卵のオリーブオイルかけ、ジャム、チーズ、オリーブ、オリーブオイル、ザータル、ラーメン、クリームチーズ、ハロワ、ラーメン、自家製ヨーグルト。

こちらはトルコ南部のシリア難民の家族の家に泊まりながら撮影した一例です。一見豪華に見えますが、皆家族が多いため、これらの食事は10人ほどで囲む分です。料理は豪華に作って目で楽しみ、お腹は主食であるホブス(シリア人が常食する薄型のパン)で満たす、というのが一般的のようです。

またシリア国内では物価の上昇が続いており、困窮のため、食事も一日一回、肉や卵をほとんど買えないといった人々が非常に多いとのこと。シリア国内での厳しいラマダンが想像されます。

以上、ラマダンの様子のご紹介でした。





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小松由佳
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