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夏にぴったりのメディチ家の別荘


フィレンツェ周辺には、かつてメディチ家が余暇を過ごした別荘が12あり、2つの庭園と併せてユネスコの世界遺産に登録されています。

休暇、狩り、ワイン造り、避暑などのために使っていた別荘群。
今回ご紹介するのは、フィレンツェの街の北西にあるカステッロの別荘です。特に庭園の一角にある「動物の洞窟」と呼ばれる所は水のパフォーマンスが凄く、涼むにはぴったりです。12年間修復のために閉鎖されていましたが、今年の4月に終了しました。


入って右手
入って左手

名前の通り、この洞窟を模した空間には様々な動物が大理石、花崗岩などで表されています。

下から上に動物がピラミッド状に配置されています。一番下には狼に喰われる羊、頂点にはキリンといった具合です。


羊を襲う狼


動物群の前には白い大理石の水桶があり、種々の魚貝が表されています。こちらも本物の魚が石から顔をにゅっと出しているようにリアルです。


そして、これらの彫刻の間や水桶、床の穴から水が吹き出します。メディチ家は紀元前に古代ローマ人がこの側に作った水道橋を利用して、この華やかな噴水を作らせました。


水が出ている間はまるで洪水の様に洞窟内を水が迸り、中にいたら最後、水没させられそうなくらいの勢いで吹き出します。外にいても水しぶきをかぶるくらいですから。そのため、この洞窟は「洪水の洞窟」とも呼ばれます。


水が噴き出す様子


この洞窟のコンセプトは、当時流行っていた世界と生命の起源です。水から生命が生まれたこと、それと旧約聖書の「ノアの方舟」のエピソードも被せています。


しかし一番の狙いは、メディチ家の治世を讃える事です。

この周辺にあるメディチ家別荘と庭園に残る多くの装飾は、コジモ・デ・メディチ1世の依頼であり、時の芸術家達が神話や聖書の話を引き合いに出して、装飾のプログラムを作りました。


「動物の洞窟」でメディチ家を象徴するのは、ユニコーンです。この中に表された生物の中で唯一、想像上の動物。その角の魔力で水を差す浄化するとの伝説から、コジモの善政による効力を讃えています。


入口正面にある動物群。頂点にはユニコーンが。

洞窟の図像学は庭の中にある他のモニュメントとも繋げられ、奥が深いです。


別荘は歴史地区からバスで1時間位の所にあるので、緑も豊かで街中の観光とは違った楽しみがあります。

フィレンツェにいらっしゃる時の参考になさってみて下さい。


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フィレンツェ歩き ここだけの話
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