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おひとりさま旅行記vol.7 葉山

葉山。
その名を聞いただけで日常から意識が離れる。

このあたりのビーチエリアでは他とは一線を画した静かで優雅な町。
敷居は高くないが、特別感のある場所だ。

20代の頃、葉山御用邸を知らずに初めて前を通ったとき
辺りの雰囲気に何か普通ではないものを感じて
「ここに何があるの?」と車を運転していた友達に聞いたことを覚えている。
うまく言葉にはできないが、神々しさのようなものを感じた。
ここはちゃんとした大人が来るところだなと若い私は背筋がピッと伸びたものだった。

京浜急行に乗ると「葉山女子旅きっぷ」の車内広告を見ることがよくある。
いつかは使って行ってみようと思っていたのだが
遠出ばかりしていて、なんとなく機会を逃していた。

1月の方位取り旅行で長野へ行くつもりでいたのに家族が怪我をし、
遠くへ行っている場合ではなかったので
それなら近場で息抜きをしてこようと思いついた先が葉山だった。

ちょっと疲れていたし、晴れた日にふと海が見たくなってサイトを調べ、
すぐにデジタルきっぷを購入した。

強風の予報があったのに、どうしても今日行きたいと強く思い敢行。
そして電車に乗って15分ほどで家にスマホを忘れたことに気づく。

一度目のつまづき。
デジタルきっぷなんだから、スマホがなきゃどこにも行けないではないか。

ここまで来て・・・とガックリし、14日間使えるしそのまま帰ってもよかったが、ここで行かないとまたモヤモヤするだろうと
スマホを手に取りすぐに駅へ引き返した。

デジタルきっぷを買うのに手間取った上、スマホを取りに帰ったこともあり
逗子・葉山駅へ着いたのはもうお昼になろうという時間。

あまり調べていなかったこともありお腹も空いたので
リーフレットで目に留まった森戸海岸のレストランへ向かった。

ところが、二度目のつまずきをする。

バスを乗り間違えたのだ。
なんかおかしいぞと気づいてバスの運転手に尋ねたら
ここで降りて向こうのバス停から乗ってくださいと言われたのが御用邸前だった。

ボタンを掛け違えると、どこまでもずれていく。
自分の失態を苦々しく思いながら御用邸前を歩いた。
若い頃ほどの感動はないが、やはり辺りは清々しく清浄な空気をまとっている。
警備の方に挨拶をされ、凹んだ気持ちが少し癒された。

ぼやっとバスを待っていたら、いつもここへ来るときは誰かと一緒だったり
迎えに来てもらっていたなぁと自分がいかに恵まれていたか気づいた。
人間とは恵まれたままだとその有難みに気づかないものだ。
これはこれで、いい勉強になったと思う。(大袈裟)

まぁ間違ったとしても、バスはきっぷのフリーエリア内なので料金は余計にかからない。
あえて行き当たりばったりの旅でも面白いのではないかと思う。

たどり着いた海辺のレストランの窓から見える景色は、想像を超えていた。
建物は古いけれど、だからこそ、この立地を確保できているのだろう。

食事も美味しかったけれど、海を見に来た私にとってはオーシャンフロントの景色が何よりのご馳走だった。
そして給仕のおばさんがご機嫌で手慣れた手つきでデジタルきっぷに対応してくれたのも、なんだかとてもほっこりした。

せっかくのフリーきっぷなのでバスをどんどん使おうと次のターゲットへ向かうものの、三度目のつまづき。

今度は腹痛だ。
原因はすぐにわかった。ミルクスープだ。

寒かったのですぐに温まりたくて空腹に飲んでしまったのだが
私は乳アレルギーがある。

この前大丈夫だったし、と油断したが、
そういえば前回は前菜をしっかりいただいた後だった。

バスを降りてすぐに目的地の山口蓬春記念館へ向かう。
寒さと強風のため、行き先はバス停から近い所に絞っていたので
すぐに着くものだと思っていた。

が、記念館がなかなか見つからない。
ヒヤヒヤしながらやっと看板のある小道を上ると、なんと休館。(定休日ではない)

マンガのような展開だが、自分事となると全然笑えない。
あとは向かいの美術館に一縷の望みを託す。

今思えば美術館には併設のレストランがあるのでそこに入ればよかったが
その時は美術館が改修中なので休館だったらどうしようと恐怖でしかなく
ミュージアムショップが開いていた時は店員さんが神に見えた。

トイレだけ借りて失礼するのも気が引けて、自分土産を買う。
ショップで前の客がオンライン決済で、今日は通信状態が悪いんですが、と店員さんが言ったとおり、ずいぶん待たされたが
今日はそういう日なんだなともう諦めて、トイレがあっただけで有難いと思う仏の境地だった。

最後に残った「ごほうび券」というお土産やアクティビティを選べるチケットはこのあたりの老舗ケーキ屋さんのお土産にした。

私はとろけるプリンや甘さ控えめケーキとかはあまり好みでなく、
しっかりめのものが好きだ。
甘いものを食べたいのに、わざわざ甘さ控えめにする理由がわからない。
控えめじゃ満足できなくて、結局余計に食べちゃわない?と思うのは私だけだろうか?

ここはその点で満足できる好きなお店なので、この旅のお土産にふさわしい。
家にケーキを持って帰るにもそれほど苦ではない距離なのがまた嬉しい限りだ。

そんなに気軽に行けそうな距離なのになかなか足が向かなかったのは
やっぱりバスを利用する必要があったからで、
そういう面ではこの「旅きっぷ」という企画はとてもよいものだと思う。

他にもたくさん行きたいところがあるし、クルージングだって行ってみたい。
マーロウのプリンもしばらく食べてないなぁと、家でコップ代わりにしているビーカーを見ながら若かりし頃の記憶をうっすら思い出す。
(余談だが、この近辺に暮らす人の家にはマーロウのビーカーがひとつはあるのではないだろうか?)

もっと葉山を知りたいし、逗子の辺りだって回ってみたい。
暖かくなったらもっと朝早く出て、あちこち行こう。
そんな期待が膨らむほんのつかの間の日帰り旅だった。


※葉山女子旅きっぷは京急の往復乗車券と逗子葉山エリアのバスフリー切符
 食事とお土産(または体験)がパックになっていて、提携のお店から選ぶことができる。
 紙のリーフレットは泉岳寺以外の京急の各駅に設置してあるそうなので、なければ駅員さんへ問い合わせてください、とのことでした。


各駅に置いてあるリーフレット。デジタルよりやっぱり紙の方が見やすい!
葉山御用邸です。穏やかな佇まい。ここへ来ると心が洗われる感じがする。
バスから見える景色も最高なんです♡
お店の中から見える景色。ずーっと見ていたかった。
女子旅きっぷのプランの食事。赤魚のソテー美味しかったです。
まさかの休館日。とても素敵なところだと後から聞いたので、絶対リベンジするぞ!
神奈川県立近代美術館 葉山館  海沿いに建つ広く大きな建物です。右はレストラン。
ラ・マレード・チャヤ葉山本店  お土産を選んで紅茶で一服中。
右手はレストラン ラ・マーレ
こちらも素敵なんですよ〜
カフェ脇にちょこっと砂浜。散歩。
京急の逗子・葉山駅改札口です。
どっちが北口か、いまだにわからない。
ホームに女子旅きっぷの看板あり。京急、力入れてます。
お土産はチャヤのケーキ2種と焼き菓子2種。
美味しくて大満足でした。
自分土産は唐辛子の箸置きでしたとさ♪



【今回の旅で使ったお金】
葉山女子旅きっぷ代+お土産代(550円)+紅茶代(660円)=最寄り駅がわかってしまうので内緒


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