見出し画像

夫婦間で異なる「コロナ禍における清潔感」にどう向き合う?

この文章は、パナソニックのナノイーXとnoteで開催する「#清潔のマイルール」の参考作品として主催者の依頼により書いたものです


「”清潔のマイルール”というテーマで執筆いただけませんか」
そんな連絡をいただいたのは、11月のことだった。

わ、私でいいんだろうか……と迷いながら、筆をとっている。

何を隠そう、私は「おおざっぱ王国の民」で有名なのだ。

整理整頓は苦手だし、埃まみれの部屋でもあまり気にならない。

「死ななきゃいい」を基本に生きているので、そもそも埃やゴミに気づかない性質である。おおざっぱ王国の民は、「清潔」とは程遠い人間なのだ。

一方、神経質な国の住人である夫は真逆で、THE綺麗好きなタイプだ。

「家が綺麗だと気持ちいい」が口癖で、すぐロボット掃除機をかけたがるし、洗面所に落ちている私の髪の毛をめざとく見つけては掃除をしている。

我が家の清潔は夫によって守られていると言っても過言ではない。

結婚当初はそれこそ清潔に関する価値観がお互いに180度違ったため、
我が家にとって「綺麗」とはどんな状態なのか、一つ一つすり合わせていった。

「清潔感」のすり合わせは、共同生活をする上で欠かせないテーマだ。清潔に関する価値観の違いに直面するたびに、「だって私は気にならないんだもん」「そんなに綺麗にしなくても、死ななければ大丈夫だよ」と子どものような言い訳を繰り返した。

コロナ禍で訪れた変化

そんな中で、新型コロナウイルスの爆発的な流行を機に私たちはさらに「コロナ禍における清潔感」についてもすり合わせなければいけなくなった。

うがいや手洗いは1日に何回するのか、外出はどこまでOKか、1日に何回換気をするか、どれだけ消毒を徹底するか。パートナーと意見が分かれた人は少なくないだろう。

我が家でも、新型コロナウイルスについてまだ情報が少なかった初期に、どれくらい外出するかで意見が分かれ、話し合いをしたのを覚えている。「外出は極力控えよう」と言い出したのは、綺麗好きな夫ではなく、おおざっぱな私の方だった。

「家族の健康を守りたい」と思うと、人は少し変わるのかもしれない。「気にしすぎと思うかもしれないけど、これからも二人でずっと元気に生きたいから」と前置きし、夫に外出をなるべく控えてほしい旨を伝えた。

これまで清潔なんて1ミリも気にもしなかった私が、「家の中でよく触る場所は除菌しよう」「外着もすぐ脱いだ方がいいらしいよ」と提案し、几帳面な夫を驚かせた。

徐々に新型コロナウイルスの影響が判明し、ワクチン接種も開始され、感染者数も落ち着いてきたタイミングで、我が家の清潔に関するルールも落ち着いていったが、人の変化というものは面白いものだなと思う。

これまで「夫の清潔の基準を引き下げていかにおおざっぱな自分にとって楽なルールにするか」ということしか眼中になかった私が、「家族の健康を守るためにどんなルールがいいか」という基準で夫と話し合えるようになった。

コロナ禍で変わった「家」という場所の意味

我が家ではコロナ以降で「家」に対する価値観も変わった。

オフィスに出社する働き方をしていた頃、私にとって「家」はただ寝るだけの場所でしかなかった。「寝れればいい」ので家が汚かろうが散らかろうがそこまで問題はなかったのだ。

そんな中で、コロナ禍でお互いにフルリモートで働くようになってから、これまで「寝るだけの場所」だった家が、「職場」に変わった。当たり前だが、部屋が汚いと仕事に集中できない。

また、外出が制限される中で家で過ごす時間も自然と長くなり、家は「快適に過ごすための場所」としての役割も担うようになった。

コロナ前はそこまで家具にこだわりのなかった私たちだったが、家の壁紙を張り替えたり、家具のテイストを統一したり、お互いにとってリラックスできる空間を作るにはどうしたらいいかを話し合った。

また、それまでは生活に支障がない限りは極限まで掃除したくないというズボラ具合だった私が、快適な仕事環境を維持するために収納グッズを購入したり、デスク周りの整理整頓グッズを探したりするようになった。

自分たちが心地よく暮らせるためのPDCAを回すことで、ただ寝るだけの場所でしかなかった家が、唯一無二の空間に変わっていくのを実感した。

その結果、以前は全く理解できなかった夫の「家が綺麗だと気持ちがいい」という言葉の意味が、数年ごしでようやく理解できるようになったのだった。

相変わらずおおざっぱなので、掃除の頻度が上がったなどの劇的な変化はない。でも夫から掃除を一緒にやることを持ちかけられた時に、以前であれば「えー、まだ別によくない?」「そんな頻繁に掃除しなくても」と面倒くさがっていた私が、「そうだね、綺麗にすると気持ちいいもんね」と前向きな姿勢で取り組めるようになった。

状況が変化する中で、対話を続けていく

他の家庭ではどんな変化があったのだろう。子どもがいる家庭では、これまで以上に親子での手洗いを徹底するようになったり、できるだけ人のいない公園で遊ばせるようになった人も多いかもしれない。

高齢の両親と同居している家庭では、居住スペースを完全に分けるようにしたり、空気清浄機を購入したりといったケースもあるだろう。

状況が変化する中で、各家庭がそれぞれの状況に応じて意思決定をしている。

きっとこれからも社会の情勢は変わっていく。
私たち自身の価値観も変わっていく。

一回ルールを決めて終わり、ということはなく、
これからも絶えず対話が必要なのだろう。

家族の健康を守りながら、ひとりひとりが心地よく過ごせる方法を模索していくのは正直とても大変だ。お互いに分かり合えないこともあるだろう。

でもそんな時は、お互いに対立するのではなく、価値観の違いを尊重し、「お互いを大切に思っている」という前提を伝えた上で、ぜひ話し合ってみてほしい。

清潔、換気、除菌ーーコロナ禍による新しい生活様式の中で、窮屈に感じることがないかと言われると嘘になる。

でも「家族の健康を守りながら心地よく暮らす」という文脈が加わった今、私は以前とは違う気持ちで「清潔」というものに向き合っている。


いいなと思ったら応援しよう!

あつたゆか@「共働きのすごい対話術」著書
いただいたお金は、結婚生活を円満にするwebサービス「ふたり会議」の開発費用にあてさせていただきます!