第百三十一話:新たな出会い
色々話をしていく中で、モアナちゃんに「ジムにいい人いないんですか?」と聞かれた。
そもそも、ジェームズとの付き合いを応援している人は誰もいなかった。スタッフのマイケル、モアナちゃん、日本の母親、ジェームズとの共通の友達、全員が「ジェームズにとっては良いだろうけど、ゆかにとって付き合うメリットがなさすぎる、苦労するだけだよ。」と言われ続けていた。
それでも、「私が見捨てたらこの人は一人になっちゃう」と、この頃にはよく分からない使命感すら感じていた。
ジムにはほぼ毎日行っているので、話かけてくれる人もいて、それもモチベーションになっていた。その中に、一人かっこいいなぁーと思う人がいたのだが、ある時から急にトレーニングのサポートを頼まれるようになった。
レッグプレスという足を鍛えるマシーンを使うときに、やりながら重量を下げていきたいらしく、20キロのプレートを外していって欲しいということだった。いつもどこから来たの?とかそんな話をしたあとに、手伝ってと切り出される感じだった。
この話をモアナちゃんにしながら、「男の人が周りにいるのに20キロのプレートを外してって聞いてくるって、たぶん私のこと男だと思ってるよ!気になってる女に20キロ運ばせないじゃん、高重量でトレーニングしすぎてて女性として見られてない!」と話をして爆笑した。
そのあとに、いつものようにジムに行ってトレーニングをしていたら、久しぶりにそのかっこいい人が来て、例のレッグプレスを使ってるところを丁度見かけた。モアナちゃんに話をして爆笑した直後だったので、思い出し笑いをしそうになりながら、「今日も手伝ったほうがいい?」と軽いノリで聞いてみた。
今までそんなふうに話しかけたことがなかったし、ジムでも誰かに話かけられたら話す程度なのだが、この時は自然と言葉が出ていた。
「今日はもう終わったから大丈夫!」と言うので、自分のトレーニングに戻っていたのだが、なぜかその彼がすぐに追いかけてきた。「もうトレーニング終わったの?」から始まり、すごい勢いでいろんな質問をされた。
いつも一人で黙々とトレーニングをしているイメージで、あまり誰かと喋っているとこを見たこともなかったので、すごい勢いで質問をされびっくりしてしまった。
それでも、なんだか久しぶりに男性に話しかけられて、とても嬉しい気持ちになっていた。