第百十三話:発覚した衝撃の事実
年配の警察官が帰ってしまった後も、調書取りは続いた。
マイケルも話を別室で聞かれ、私の言っていることに嘘がないか調べられているようだった。
そんな中、私の労働許可証の手続きをしていたコンサル会社の担当であるバンビーノが警察署に到着した。彼も調書を取られた訳だが、すでに提出したと言っていた書類の送り状を紛失したため、提出したことを証明できていないということが発覚した。
そして、警察官に「本当に提出したのか?」責められる度に弱気になってきているのが、私にも分かった。労働局の職員たちは、バンビーノに提出した証拠となるものを提出するように再三求めたが、出てこなかったため、労働許可証を取得しようともしていないと判断したようだった。話を聞きながら、「そりゃあそうだよな」と怒りが込み上げてきた。
調書が取り終わり、私とバンビーノは別室で待たされることになった。
これから警察官たちと話をして、賄賂として渡す金額を交渉し、今日留置場にぶちこまれずに帰れるように話を持っていかなければならない。(この国で不可能なことはないが、そのためにはお金を払わなくてはならない)
朝警察署に連れて来られてから、もう5時間くらいはたっただろうか。
今日ここから出られるのだろうか、これからどうなるのだろうという不安で頭がいっぱいな私をよそにバンビーノは世間話を始める。
沢山の人がいる警察署の一画で、声をひそめて
「初めて黒人とエッチしたときはどうだった?」「いいものを持ってるから、旦那さんは失いたくなくてこんな行動にでたんじゃないか?」等々、
「お前がさっさと仕事しないからこうなったこと分かってるのか?」と突っ込みたくなるようなセクハラ発言を永遠に続けるバンビーノ。
ここがバーで少しお酒でも入っていたら大好物な下ネタ話だが、ここは警察署で今留置場にぶちこまれるかどうかの瀬戸際なわけだ。というわけで、適当にあしらって、話をさっさと終わらせた。
バンビーノに殺意を抱き始めたところで、マイケルが戻って来た。
今日ここから出られるようだが、(予想通り)警察官がお金を要求しているという。