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人前で涙を流した日のこと
抗がん剤治療が始まる前の週、町内のお地蔵様の幕の材料を買いに、松原通にある手芸店に行きました。
大量に買い込むときは船場界隈まで出向くのですが、今回は生地と幕房、打紐くらいなので、こちらで間に合います。
前回もここで購入したのでどこにおいてあるかすぐわかり、買い物はささっと終わりました。
この手芸店を西に進んだあたりにどうしてもお参りしたかったお寺がありました。
平等寺(通称・因幡薬師)さん。
がん封じのお寺として知られています。
以前、友人が脳腫瘍で手術することになった時、こちらにお参りしました。
その彼、今ではすっかり回復し、仕事をバリバリこなしています。
このお寺、今はインバウンド需要がすごいらしいというおはなし。
たしかに、主にアジア系の観光客で賑わっていました。
まずは御仏に手を合わせ、そしてお守りをいただきました。
水琴薬壺のお守りはスマホにつけています。
塗り香は、以前次女が誕生祝にくれたお香入れに入れ、ハンドクリームを塗ったあとの手にすり込んでいます。
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このお守りを渡していただいた時に、「来週から抗がん剤」
と、ここまで言った後の言葉が出なくなり、代わりに涙がボロボロこぼれ落ちました。
がん告知を受けた時も平然と聞いていたのに。
「どうか打ち勝ってください」
と言われ、頷くだけでした。
自分でもどうして涙が出るのかわからない。悲しくはない。辛くもない。
あ、そう思い込んでいるだけ?
本当は誰かにすがって、こわい、死にたくないと泣きじゃくりたかった?
家族の前でも、誰の前でも泣かない、と決めたわけじゃない。
何もかも受け入れて、前を向いて進むしかないじゃないと、そう思っていたのに。
自分でもわからないところで我慢していたの?
う〜ん、わからない。
たくさんのがん患者さんの祈りを受けとめてこられた「がん封じのお寺」の方に接して、私の心の中にある小さな感情、澱のようなものが塊となって飛び出した、そんな感じ。
とても不思議な感情でした。
しばらく境内をウロウロしながら、少し自分の気持ちを整理して、本当はどうしたいのか。どうしてほしいのか、考えました。
結論
お腹すいた
うちに帰ってみんなでお昼ご飯を食べよう!
なるようにしかならん!
やれることをやるだけ✌