【詩文の暗唱】〇年生だからこれを、なんて関係ない!~「曾根崎心中」をめぐるドラマ~
詩文の暗唱の魅力にはまって
担任をしていた時は、毎年実践していました。
2003年頃から、
かれこれ10年以上続けていたことになります。
世の中もちょうど、齋藤孝氏(明治大学教授)が出版した
「声に出して読みたい日本語」
がブームになり
NHKのEテレでも
「にほんごであそぼ」が始まった頃でした。
担任した学年に合わせて
「声に出して読みたい日本語」の中から
私が選んだ詩文を印刷して綴じ
「〇年〇組 暗唱詩文集」
を作り
その中から任意の詩文を選んで
「暗唱テスト」をしていました。
ある学習サークルで教えてもらった方法なのですが
これがまた子どもたちが熱中するのです。
・自分の席で立って暗唱する(題名、作者も)
・ちょっとでも言いよどんだり、詰まったりしたら不合格
・最後までよどみなく暗唱できたら合格
ルールはひじょうにシンプルでした。
一言でいうと、「合格基準が厳しい」。
この、厳しいルールに子どもたちは燃えるようでした(^^)
厳しいからこそ、合格したらうれしさもひとしお、みたいな。
そんな中で、5年生の子どもたちに人気だった詩文の一つに
「曾根崎心中」がありました。
作者は近松門左衛門。
江戸時代の人形浄瑠璃の作品です。
この冒頭の部分を暗唱するのですが
なぜかこれが子どものアンテナにひっかかったらしく
子どもたちが「そねしん」と略して呼ぶほど
クラスの人気の詩文の一つになったのでした。
◆―――――――――――――――――
曾根崎心中
近松門左衛門
この世の名残り、夜も名残り、
死に行く身をたとふれば、
あだしが原の道の霜、
一足づつに消えて行く、
夢の夢こそ哀れなれ。
あれ数ふれば、暁の、
七つの時が六つ鳴りて、
残る一つが今生の、
鐘の響きの聞き納め、
寂滅為楽と響くなり。
(以下略)
――――――――――――――――――◆
ちょうどその年の秋に
社会見学で大阪の東梅田辺りを通った時のこと。
「先生、『曾根崎』って書いてある!!」
と子どもたちから驚きの声が。
そう、「曾根崎」が大阪の、
しかも自分たちにも身近な梅田にある地名だって
子どもたちはその時初めて知ったのでした(^^;)
また、道中の電車では
長時間乗っている間に
友だち同士で小さな声で暗唱が始まり
その中に「曾根崎心中」も登場していたのでした。
いやあ、男の子と女の子が一緒に
「われとそなたは夫婦星、必ず添うとすがり寄り」
なんて言っているのを見て
担任の私は何とも笑いをこらえるのに必死でしたよ。
ほほえましいのなんのって(^^)
ちょうどその年度が終わる頃、
縁があって、齋藤孝氏の講演会で、
暗唱の模擬授業をする機会をいただきました。
せっかくだから、子どもたちに人気だった、
私の地元大阪の作品「曾根崎心中」で授業したのですが
5年生がこの作品を好んで暗唱していることや
「そねしん」と略して楽しんでいることを知った齋藤孝氏は、
たいへん喜んで聞いてくださったものでした。
数か月後の、氏のインタビュー記事では
そのエピソードを取り上げてくださっていて、
私もうれしく思いました。
詩文の暗唱をするのに、
〇年生だからこれは無理、とか、
〇年生ならこれくらい覚えなくちゃ、
ということは全然ないんだな、と
強く感じさせてくれたできごとでした。
音声配信でも、お話しています。
暗唱指導の初期におすすめの実践はこちら
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【ワーク】
子どもたちに暗唱させたい詩文を選ぼう。
(取り組むことで自分の考えが整理されます。ご自分のノートでも、コメント欄でも、書いてみてくださいね)
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【質問】
どんな日本語の文章を読ませたいですか?
(ご自分に問いかけてみてくださいね。答えはすべて正解です)
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