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「SCIENCE FICTION」発売後の宇多田さんを追う⑧−3
こんにちは。自己満足な毎日をすごしたいです。
「SCIENCE FICTION」発売後の宇多田さんを追う⑧−3です。
⑧シリーズでは、4月21日(日)に放送されたEIGHT JAM、デビュー25周年 宇多田ヒカル特集!!を紹介しています。
前回は、ベストアルバムリリースの理由や、タイトル「SCIENCE FICTION」について、「traveling〜Re-Recording」を☆Taku Takahashiさんにオファーした理由、そのアレンジへの要望と☆Taku Takahashiさんとのやりとりを振り返っていきました。
今回は「光」についてスタジオでの話と、楽曲制作についてのインタビューについて見ていきましょう。
以下、宇多田さんの発言を⭐️、インタビュースタッフさんの発言を■個人的な考えは🔹で記載しています。
「光」についてスタジオで
☆Taku Takahashi、tofubeatsさんが選んだのは、2002年リリース、1カットでのMVも話題となったこの曲「光」
☆Taku Takahashiコメント
この曲のメロディーは本当に美しいです。絶妙な旋律の中でも際立つ美しさを持っています。その美しさは、サビのメロディーの「ド」(曲のキーの基準となるルート音)の使い方。各フレーズの終わりが安心感を与える「ド」(キーの基準となる音)の音で綺麗に解決されている素晴らしいメロディーライン。僕が思う美しいメロディーの原理がスゴく詰まっている曲です。
ナレーション
では、サビのメロディーの音階に注目
曲のキーはB♭
どんなときだっ「て」(ド)(基準音)
ずっとふたり「で」(ド)(基準音)
どんなときだっ「て」(ド)(基準音)
そばにいるか「ら」(ド)(基準音)
きみというひかりがわたしをみつけ「る」(ド)(基準音)
さらにtofubeatsはこちらの歌詞に注目
「うるさい通りに入って 運命の仮面をとれ」
tofubeatsコメント
「光」や「愛」など、いわゆる平易な言葉やモチーフを大胆に、しかもいやらしくなく新鮮に聴かせるのはめちゃくちゃ難しいのですが、「光を撃て」「運命の仮面をとれ」みたいな劇場的な言葉の使い方など、歌詞のデリバリーによってめちゃくちゃドラマチックに聴かせる本当にスゴい曲です。
スタジオにて…
☆Taku Takahashiさん
究極の美しいメロディーってドレミファソラシドだと思うんですよ。ドで始まってレミファって行って、ラで不安定になってシで解決したくなって、それでまたドに戻る。
この曲に関して言うと、この曲ってB♭の曲なんですけど、B♭をドに置くようにして。まず、ラで始まるんですよ。ラってなんか不安、不安で始まって。さっき、ドで終わるって言ったじゃないですか?また、ドの前にシがあって、ドに行きたいって言うのを。まずラの不安で始まって、解決させたいって言ってて。で最後のところを、またシで終わるんですよ。また次ちょっと続きたくなるような。これ多分、無意識に作ってると思うんですけど、ヒッキーの曲、スゴいのがハッピーな曲でもちょっとなんか哀しさの余韻が入ってる。マイナーなメロディー(切ない)とメジャーなメロディー(明るい)が混在をしている。そのさせ方を最も美しく聴こえさせる方法をとってるなって。
🔹音楽に全く詳しくない自分にとっては、「へ〜」でしかないのですが、プロってこんなところにまで注目して音楽を聴いているものなんですね。しかも、「究極の美しいメロディーがドレミファソラシド」だなんて。さらに「ヒッキーの曲、スゴいのがハッピーな曲でもちょっとなんか哀しさの余韻が入ってる。マイナーなメロディー(切ない)とメジャーなメロディー(明るい)が混在をしている」と表現されたのを聞いていて、あーそうか、だから宇多田さんの曲って「traveling」みたいに、明るい曲でもただただイケイケドンドンではなくて、引き込まれる感覚になるんだろうなと思いました。
村上信五さん
歌詞のところですよね
tofubeatsさん
「光」って曲名で、「どんな時だって たった一人で」って歌い出しの曲、使ってる言葉に難しいこととかないわけですよ。ちょっとありきたりな感じでいくのかなって思ったら「運命忘れて」ってきて、「光を撃て」みたいな。「光を撃て」?みたいな感じになってきて。2番も「運命の仮面をとれ」みたいな。で、最後の方はどんどん言葉数が増えて行くっていう「先読みのし過ぎなんて意味の無いことは止めて」、これはこれで歌詞っぽくない、普通の言葉だけど歌詞っぽくないみたいな感じで、なんかセリフっぽい言葉まわしになって、言ったらこう、歌詞の中にいろんなテイストの歌詞が1個に入ってると。それによって、歌詞だけでも、めちゃくちゃストーリーがあって。この曲よく聴くとアレンジはけっこうシンプルで。そのシンプルなアレンジを実は歌詞のパワーでぐいぐい引っ張っていっているっていう。
どんな時だって たった一人で
運命忘れて
暗闇に光を撃て
運命の仮面をとれ
先読みのし過ぎなんて意味の無いことは止めて 今日はおいしい物を食べようよ
🔹聴きすぎてもう感じていませんでしたが… 確かに「光」から連想される歌詞ではないですよね。ただ、ご自身の名前と同じ「光」というタイトルをつけて、大切な曲の1つだと言われていましたし、ゲーム「キングダムハーツ」の主題歌でもあり、有名な曲で、思い入れが強い人もきっと多いかと思います。それぞれ、好きな部分があったり、全体を通して好きだったり、もしくは好きな部分を選べないと思っていたり。曲の発表以降、少ないライブの中で必ずセットリストの中にも入っていますし。言いたいことがとっ散らかってきましたが、とにかく「光」も好きです!
Q.メロディーと歌詞は同時に生まれる?
ナレーション
そんな「光」についてこんな質問が
☆Taku Takahashi
Q「光」はメロディーと歌詞が非常に密接に結びついており聴く人の心を強く捉えます。制作過程で、メロディーと歌詞は同時に生まれるのでしょうか?
宇多田さんのインタビューへ
⭐️ほぼ無いです。大体メロディーが、っていうかほぼ100%メロディーが先に。先に歌詞ってことが今まで一度も無くて。メロディーがないと、言いたいことがわからないんです。コードとかからが一番無意識な感じで、自分との対話の始まりで。自分が考えても自分が何を感じてるかわかんない、モヤーンとしたスープみたいな、無意識の。潜在意識のスープみたいなところからポロポロ、コードとかメロディーとかが出てきて。メロディーは母音とか子音と結びついて出てきます。だからここは「i-」であってほしい。このメロディーのここの部分、ここはなんか「かぁっ」とか、そういう音がほしいとか、「あー」みたいになってほしいとか、そういうのがメロディーの筆みたいじゃないですか、歌って。書道じゃないけど、はねるところがあったり離すところとまたつけるところと、そこが太くつくのか、薄くうっすら細く始まるのかとか。ベースと似てる気がするんですけど、声って特に筆っぽいなと。そういうのを出すときに勢いをつけて、こうパーンっていきたいのか逆にわーって落ちたいのか、ただこう、譜面で書けない要素がいろいろあるじゃないですか。そういうのと一緒に子音、母音が出てきてだんだんなんかちょっとスープにミネストローネかな?くらいに、ちょっと具のなんか、小さい具がうっすら見えるみたいな状態がなんか、ほわーんって見えてきて、それぐらいの状態で言いたいこと、その感情、どんな気持ちを表現したいのかわかってきたから。そこで歌詞考え、言葉って自然と考え始めたときに、子音と母音とかに導かれてもっとこう。そういう制約があったほうが、制約がないと(歌詞が)出てこない。制約があればあるほど、ある意味限定されて、はまることと言いたいことが一致することがなかなかないから、難しいはずなんですけど、制約があればあるほど、自分でも予想してなかった歌詞がぱーんと出てきて、言葉とか。「あ、それだ」とハマる!!
■制約というのは、先程宇多田さんがおっしゃった言葉ではなくて、音だとか子音の「i-」とかに当てはまるような言葉を?
⭐️そうですね。あと単純に文字数とか。メロディーがもうできてるから、文字数はほぼある程度決まって。ここは、らららららららーって歌いたいから8文字かぁとか。短歌とかそういうことじゃないですか。季語がなきゃいけないとか、多少、字余りとかでもメロディー食って入っちゃえばいいやとか、歌い方ちょっと調整しちゃえばとかできるけど、基本ははめていきたいんです。そうすると、あ、こんなこと私言いたかったんだ!!
スタジオへ戻って、村上信五さんが
吉澤嘉代子さんに「いかがでした?」と振ると、
吉澤さんは
「あっついですね、本当に。文字数とか、私もやってることを宇多田ヒカルもやってんだって」
☆Taku Takahashi
歌詞、素晴らしいし、素晴らしい歌詞はメロディーが大事で。素晴らしいメロディーには歌詞が大事で、ということで。メロディーから向き合っていくのいうのはまた、すごいですよね。
Qメロディーと歌詞は同時に思いつく?
・ほぼ100%メロディーが先。
・メロディーがないと言いたい事が分からない。
・メロディーは母音子音と結びついて出てくる。
・母音子音に導かれてどんな気持ちを表現したいかが分かる。
・制約がないと歌詞が出てこない。
古田新太さん
ある程度の制限があったほうがやりやすいっていうのは、すごくよくわかるよね
🔹メロディーが先に生まれる、例えばここは「i-」にしたい、という話は何度か聞いたことがありますね。ただ、メロディーが筆みたいとか、スープに例えるとか、ここまで詳しい話になるとは… 宇多田さんの頭の中、すごいです。そして自分との対話だと捉えられているんですね。誰しも、自分との対話をしているし、必要。ただ、真っ向から向き合えている人はどれだけいるだろう? あ、これ以上行くと怖いな、こうしたいけれど、周りのことを考えたら無理だな、といい意味で折り合いをつけている、言葉を選ばずに言えば背を向けている、逃げている、無視している人も多いのではないだろうか? もちろん、それが必要なこともあるが、自分の本当の気持ちは大切にしたいものですね。加えて、制限がないと歌詞が出てこないというのは、例えば具体的に何を書きたい、何文字程度で、読んでもらう対象は…というようなことと同じなのかもしれませんね。
今回は、4月21日(日)EIGHT JAMから、「光」についてスタジオでのやりとり、宇多田さんの楽曲制作についてメロディーと歌詞ができる順番について見てきました。次回も引き続きお送りします。
最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️
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