「SCIENCE FICTION」発売後の宇多田さんを追う⑧−5
こんにちは。自己満足な毎日をすごしたいです。
「SCIENCE FICTION」発売後の宇多田さんを追う⑧−5です。
⑧シリーズでは、4月21日(日)に放送されたEIGHT JAM、デビュー25周年 宇多田ヒカル特集!!を紹介しています。
前回は、スタジオでの「誰かの願いが叶うころ」「Gold〜また逢う日まで〜」「あなた」についてのやりとり、そしてインタビューでの「『あなた』の『ai』」に、作詞の苦労や締め切りについてを見ていきました。
今回からは4月28日(日)の放送分を見ていきましょう。
以下、宇多田さんの発言を⭐️、インタビュースタッフさんの発言を■個人的な考えは🔹で記載しています。
大反響の宇多田ヒカル特集完結編ということでスタートです。
前回の放送の振り返り
「time will tell」
「Addicted To You」
「Be My Last」
「Prisoner Of Love」
「Stay Gold」
「真夏の通り雨」
「君に夢中」 をバックに
ナレーション
デビューから25年、世に送り出してきた楽曲は100曲以上。そんな数ある中から、プロがぜひ聴いて欲しい!!宇多田ヒカルの名曲とは。さらに宇多田へのマニアックな質問も。
スタジオで「初恋」をピックアップ
まず、いしわたりがピックアップしたのは、
「好き」と伝える表現の多様さがすごいという名ラブソング「初恋」
いしわたり淳治コメント
ラブソングにはいかに直接的な言葉を使わず、相手のことを「どれくらい好きか」を伝える側面があります。「もしもあなたに出会わずにいたら誰かにいつかこんな気持にさせられていたとは思えない」など、ひたすらに”あなたが好き”という思いを伝えるフレーズの引き出しの多さ、表現の角度の多様さがスゴいです。
いしわたり淳治
ラブソングとは何かということを考えると、やっぱり相手のことをどんなふうにどれくらい好きなのかっていうのを誰が上手く言えるかみたいな、ちょっとコンテストみたいな側面が、誤解を恐れずに言うならばあると思うんですけど、宇多田さんの「初恋」って曲を聴いたら、Bメロをサビにしたら、他のもう1曲作れるんじゃないかとか、Aメロを他のサビに使えたんじゃないかとか。ラブソングとしての球数、決め球の多さっていうか。惜しげもなく。これを畳み掛けることによって、結果、またさらに相手のことをどれだけ好きかって表現になっていて。もう何重にもすごいなって思いますね。
🔹「初恋」というと、「真夏の通り雨」も手掛けた柘植泰人さんのMVがすごく印象に残っていますね。若い女性と老齢の女性、そして宇多田さんのシンプルな衣装でも力強さと儚さのようなものを兼ね備えたかのような歌唱シーン。すごく惹き込まれました。さらに、「I need you」というフレーズ。「I love you」でも「I want you」でもない。「I need you」。必要なんだと。確かにラブソングかもしれませんが、自分にとっての大切な人という感覚を覚えた作品でした。そして、2018年「Laughter In The Dark」での静寂は今思い出しても鳥肌が立ちます。
Q.日本語をどのように捉えている?
ナレーション
そこでいしわたりから、日本語の歌詞についてこんな質問
ということで、インタビューへ。
■ Q日本語で書く事へのこだわりはありますか?英語と比べると格段にメロディーに乗せにくい言語だと思いますが、日本語というものをどんな風に捉えていますか?
⭐️日本語のほうが好きです、書くの。遊べるっていうか、自由度がすごく高いんですよ。だって語尾だって敬語にも出来るし、だよ、だぜ、だ、だもん、何でもアリじゃないですか。そこで大分、言っていることのニュアンスがそれだけで全然違うし、あと主語がいらない言語なんで、それがすごく面白いです。
🔹日本語の自由度が高いというのは、分かる気がしますね。こうやって書く文章と、話し言葉でも違いますし。ドイツ語なんかでは女性名詞とか男性名詞というものがあったりしますよね。他にも、英語で「Mr.」「Mrs.」なんかの違いがあったとしても、日本語では「〜さん」と言えば、どんな性別の人にでも通じるとか。こうして考えてみると、言語って面白い。
スタジオの高橋茂雄さんは、
「捉え方がやっぱり、日本語と英語、両方できる人の感覚やもんな」と感じられたそうです。
次の質問への布石です
ナレーション
以前番組で佐藤千亜妃は、宇多田の日本語の歌詞について、
「復帰後から日本語の美しさっていうのを、響きみたいなのを意識して書かれているのかなっていう部分が増えてですね。もしかしたら海外に住むことで日本の良さが逆に身にしみて分かることがあったりとか、日本の文化っていいなって、自分のアイデンティティーを振り返る時間が”人間活動”の期間にあって。そんな気がしますね」
さらにナレーションが続きます。
98年のデビュー以来、止まることなく大ヒット曲を生み出し続けた宇多田だが、2010年「人間活動」として音楽活動休止を発表。
アーティストではなく、普通の生活を求めロンドンへ移住。その間に母との別れや息子の誕生などを経て、2016年、約6年ぶりに活動を再開。宇多田は復帰後の「Fantôme」と、続くアルバム「初恋」では、「日本語で歌う」ことがテーマだったと、後にインタビューで語っているのだが、日本語への意識の変化はなぜ生まれたのか?
Q日本語への意識の変化はなぜ?
⭐️ロンドンに引っ越してからですね。日本語を話すことがあんまりなくて。読むくらい。ちゃんとした日本語っていうか、話し言葉よりもっと高次元で整理整頓されたというか、削ぎ落とされた日本語っていうか。しかも文学的な日本語に触れてて、そういうところからきてるのかな。あと、息子のために日本語で歌い始めた。私は日本語の童謡をほとんど知らなかったんです。息子には日本語の童謡を潜在的にも聴いてて欲しいなと思って。そういう本とか、自分がわからないからボタンを押すとその曲が流れるみたいな、すごい素敵な歌のお姉さんみたいな人が歌っているような本があって、それで私も聴いて覚えて一緒に歌ったりしてたんですけど。
そこから日本語にまた向かっていくみたいな。1回リセットして雑な日本語がない環境で、そういうところから入ったのがよかったのかな
■なるほど。逆にちょっと距離を置いたからこそ出てきたテーマというか
⭐️はい、そうだと思います。
■宇多田さんがこうやって厚紙で開いてボタン押すみたいな
⭐️固いやつですね、あの。子どもの
■あれを一緒に聴いたりして覚える
⭐️ぞうさんとか。そういうのから始まって。あ、こういう感じなんだ〜って泣いちゃうとか
■「ぞうさん」を宇多田さんが歌って聴かせてあげる
⭐️はい
■その後、人間活動とおっしゃっていた、その人間活動を経た
⭐️あ、すみません。もう1個、今思ったら、前の質問なんですけど、「Fantôme」ってすごく私にとって弔い、母の弔い的な作品で、それで突き詰めていったらジャケットでも、お母さんみたいな髪型にしたりとかだったんですけど、多分歌詞も、母って思ったらやっぱり私にとっては日本語。彼女とはずっと日本語で話してたんで。っていうのが大きかった。そうそれがあった。ぞうさんだけに。「ぞうさん」もお母さんと子の話なんですよ。そう、そこで多分すごい結びついたんだと思います。童謡ってだいたい、親子とかそういう話で。
🔹日本を離れて、日本人とも関わりなく生活するということは日本語からも離れるということで、書物などを通して文字として読むことになった。しかも文学的な日本語に触れるということは、宇多田さんの表現を借りれば「高次元で整理された日本語」「削ぎ落とされた日本語」であって、口語的なものではなかった。その影響により、日本語への感度が上がったというか、表現の奥深さが深まったというか。アルバム「Fantôme」とか「初恋」って、リラックスして聴くというよりも、感情の琴線に触れる感じがするのは、日本語の響きによるものなのかもしれないですね。
それから、日本の童謡は、自分たちにとっては幼い頃から触れてきて、あまり深く考えていなかったけれど、幼少期を日本で過ごしていない宇多田さんにとっては新たな発見がたくさんあるというか、親子を歌った温かみのある優しい音楽だったのかもしれないですね。
スタジオでの日本語に関するインタビューの振り返り
いしわたり淳治さん
なるほどなと思いましたね。雑な日本語に触れなかったって。雑な日本語っていう感覚、僕らにはないから。あ、そうか、確かに雑かもしれないって。でも、さっきおっしゃってたのは、語尾が「だぜ」とか「だもん」ってのもありえるって。それ、言ったらジャンクな日本語じゃないですか。それに対しても親しみを持って接してあってバランス感覚がやっぱり良い!!んだろうなーって思いますね。なんか、いろいろと腑に落ちるところがありましたね。
次回は楽曲中の違和感について、スタジオのミュージシャンたちからの指摘と、宇多田さんの回答から追っていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️
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