研修をつくる上での大事な4つのポイントとは?
仕事柄、クライアントさんへ研修を提供させていただくことが多いのですが、研修設計・開発の上で参考にしているのがこちらの本です。
今回は、研修設計・開発において特に「企画」のポイントについて、上記の本を参考にしながらまとめていきたいと思います。
参考文献/研修開発入門・中原淳著
研修開発のプロセスとは?
そもそも研修を企画して経営に効果を示すまでを「研修開発のプロセス」と呼び、下記のステップが示されています。
一番最初の研修企画とは、「経営層や現場のニーズを把握し、戦略や現場の課題を見定め、さまざまな政治交渉の末、研修対象を決定すること」と書かれています。
この段階がなければ、そもそも研修というものは生まれません。クライアントさんのニーズを汲み取ってまずは形にしてみる最も重要なプロセスです。
研修企画の4つのポイント
この本では、研修企画の4つのポイントをまとめています。以下、詳細をまとめていきます。
①ニーズの探索
経営と現場とコミュニケーションしながら「経営と現場のニーズを、研修開発担当者自らが探索すること」です。
私はここでどれほど「生の声」を拾えるかが非常に重要なのではないかと思っています。経営陣だけの声を拾っても、現場からすると「それって経営陣の話でしょ」ということになってしまいます。経営と現場、両方、という視点は欠かせません。加えて、組織の中期経営計画や、経営理念など、長期的視野に立って考える、組織ニーズも重要となります。
対面やオンラインだけでMTGをするのではなく、現場まで足を運んで様子を見ることもニーズの探索になると思います。どのような服装で、どのような席の配置で、仕事中のコミュニケーションはどんな風に取っているのかという仕事風景を見るだけでも色々な気づきがあると思います。
ニーズが見えてきて「これに違いない!」と飛びついてしまうのも危険です。「本当にこれが本質的なニーズだろうか?」と常に疑いながら、何が本質かは見極めて考えています。
②人材マネジメント施策の検討
経営陣と現場のヒアリングを重ねて、ニーズを取得したあとにすべきことは、「抽出された問題を、採用・人事育成・配置・処遇などのさまざまな人事マネジメント施策の、どの手段において解決するのが最適かを考えること」だとこの本では述べています。
ニーズを聞いてきたクライアントは、さまざまな課題を解決するためにさまざまな施策をすでに実施している可能性があることを忘れてはなりません。すでに取り組んでいる施策とどう組み合わせると最適なのか、あるいは、研修だからこそできることを考える必要があります。
この段階で、このクライアントの課題はこれではないか、と仮説を立てます。
③学習者の分析
ニーズを調査し、人材マネジメント施策の検討をした上で仮説を立てたその次は、学習者を分析し、介入の対象者を決め込むことです。
いわゆる対象者となる人ですが、この対象者を間違えてしまうとこれまで積み重ねてきた苦労が水の泡になってしまいます。
対象者はなるべく具体的に絞り込みます。(例:入社3年以内の中途社員で海外勤務をしていない者)
研修を受講した後に対象者はどのような変化が起こるのか、そしてどのような成果が見られるのかまで想像しておくことも大切です。
この企画の段階ではないですが、私はいつも対象者の人へは事前アンケートを必ず取って、そこで情報収集をします。この会社に勤めて何年で、なぜこの研修に参加しようと思ったのか、期待していることは何なのか、どんな悩みを持っているのか。対象者との期待値調整を直接できることは稀なので、ここで期待値調整を行います。
④「経営陣」と「現場トップ」のステークホルダー化
最後に重要なことが、研修効果をさらに上げるために経営陣などの利害関係者と同じ船に乗ってもらうことです。
同じ船に乗るとは、「研修提供者」と「クライエント」という分割された関係ではなく、共に組織をより良くしようとするプロジェクトチームとして、同じ視点を持つ当事者になることに近いのではないかと私は考えています。
この企画の段階で、いかに巻き込めるかがとても重要です。
そのために企画提案で必要な事項は網羅することはもちろん、これまでの自分が蓄積してきた過去の実績データや変化など入れ込み、信頼を感じてもらうのも一つです。
以上が、研修開発の「企画」における重要な4つのポイントでした。
研修はやることが目的なのではなく、研修後に対象者がどうなっているかという経営インパクトがとても重要です。
経営インパクトをしっかりと出すためにも、企画段階から4つのポイントを意識していきたいですね。