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LMX(上司・部下交換関係理論)とは何か?-事例から考える-

現在、私は立教大学大学院リーダーシップ開発コースに通っている修士2年生です。修士論文のテーマは「上司と部下の関係性」についてまとめることになりそうで、重要な概念であるLMXについての論文を日々読んでいます。

これまでもLMX(上司・部下交換関係理論)についてはnoteにまとめてきたのですが、今回はLMXの事例を取り扱った論文があったので、そちらをの事例を紹介しようと思います。

論文名:グローバルリーダーシップの基本的条件─Leader-Member Exchange(LMX)の役割に関する研究─/佐久間 賢さん


LMXの歴史

一般的にリーダーシップは2つの側面をもつと言われています。一つは、リーダーがメンバー全体に働きかけて統括する側面と、もう一つは、リーダーと個々のメンバーが相互に作用し合う側面です。

これまでリーダーシップは、リーダーシップは資質で決まるという資質アプローチ、資質ではなく行動で決まるという行動アプローチ、リーダーシップは行動ではなく状況で決まるという状況アプローチに変わっていき、コンティンジェンシー理論、SL理論、経路-目標理論などが出てきました。

1970年代にはフォロワーの存在に注目するアプローチが一気に増え、フォロワーはリーダーに主体的についていく存在であり、リーダーはフォロワーの成長を導く存在でなくてはならないという見方が基本になりました。

そのころに出てきたのがLMXです。

LMX以前の理論は、リーダーの観点(特性、スキルなど)に立った理論か、 フォロワーの観点(状況対応、パスゴールなど)に立った理論でした。

LMXはリーダーとメンバー間の継続した「交換関係(exchange)」を意味し、1970年代 に米国で生まれ、90年代に新しいリーダーシップ論として発展。

LMXが生まれた背景については、このように記されています。

当時は、ビジネスをグローバルに展開するさいに、将来を託する人材を的確に選別して育成することが難しくなり、それが経営の1つの隘路(bottle-neck)になっていた。 LMXは、その解決策のつとして発達してきた理論である(Graen, et al., 1995)。具体的には、グローバルな競争力を強化するためには、全員を対象にする人材育成よりも、むしろ、人材を In-GroupとOut-Groupに峻別し、その In-Groupに対して経営資源を集中して投入し、必要な人材を短期的に育成するという考え方である(Graen, et al., 1995)。

「グローバルリーダーシップの基本的条件─Leader-Member Exchange(LMX)の役割に関する研究─」p564より抜粋

ちなみに、In-GroupとOut-Groupは下記になります。
In-group:リーダーとフォロワーが相互の信頼感、敬意、きずなで結びついた関係を構築している
・リーダーからより多くの支援や情報を受け、より高い信頼を得る傾向がある
・組織の重要な情報にアクセスしやすく、リーダーとのコミュニケーションがより頻繁に行われる

Out-group:リーダーとフォロワーの間には仕事上必要な最低限の交換関係が成立している
・リーダーからの支援や情報が少なく、信頼も低い傾向がある
・組織内での重要な情報へのアクセスが制限され、リーダーとのコミュニケーションが限定される場合がある

ユニクロの事例

この論文では、LMXの事例としてユニクロの事例が述べられています。

・2014年10月ファーストリテイリング(Fast Retailing,以下ユニクロ)は同年月期の売上1.38兆円(前期比21%増)の決算を発表。同社の会長兼社長の柳井正氏は、記者会見の席上で「組織が大企業病に陥ることが怖い」として、新しい発想がでない硬直した店舗運営に陥った例を説明した。

・例えば、問題が起きたとき「自分には関係ない」と考える社員が増えた事実が指摘された。1984年同社の号店が広島市内に開店してから、売上高兆円までに30年が経過している。柳井氏は「店長たちの考え方がわからなくなった」と危機感をもつ。

その対策として柳井氏は毎月数回、東京本部で開かれる国内店長との「対話」(exchange ideas and opinions)を実施する。 その約2時間かけた対話は店長たちの本音を聞く機会である。「悩んでいる店長の話を聞けば、ほとんどの問題が解決できる内容だ。それを解決し支援してあげたい」と同氏は力説する。

・これまでの店長を主役とする経営から、販売員を中心とする仕組みに変える新しい組織改革が実施された。すなわち、地域正社員が主体となり地域密着型の運営ができるようにした。例えば、彼らが中心となり「地域の特性に合う商品や接客方法」 を導入できるように変革された。

「グローバルリーダーシップの基本的条件─Leader-Member Exchange(LMX)の役割に関する研究─」p564,565より抜粋

すなわち、LMX(対話)によって、各地域の問題解決に必要な情報(「知」)が創出される職場に変革したのです。

この事例からもわかるように、柳井氏は LMX(対話)によって各店長の悩みを解決し、LMXを軸にして職場が運営されるよう努力を続けています。
つまり、一部のエリート人材を選択し、その人だけにアプローチをするのではなく、LMXを軸にしてリーダーとメンバー間の職場の交換関係を重視しています。

まず、① 職場に信頼関係を築き、それを基にして② 職場の「知」を活用 できる人材を長期的に選別するという視点へ移行する。成果主義では見落としがち なリーダーの人間的側面を重視する方法が導入されている点が注目されます。

改めて、LMXの可能性と活かし方について考えさせられる事例を学ぶことができました。

今後もただ学術概念について学ぶだけではなく、事例も共に学びながら「活かし方」を考えていきたいです。


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