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上司部下交換関係は、どのように資源の交換が生じているのか?

職場の中でのリーダー・メンバーとの関係性を考える時に、「上司部下間の交換関係(leader member exchange; LMX)」という考え方があります。上司と部下の個別の関係性が、それぞれの資源の交換をベースに構築されるとの考え方です。

リーダーとメンバーの関係性が良いこと(LMXが高いこと)は、組織に以下のような効果を与えることがわかっています。

・メンバーの仕事のパフォーマンスが上がる
・組織へのコミットメントが上昇する
・離職率が下がる
・ストレスによるバーンアウトが減る
・創造性が上がる…..etc

Graen & Uhl-Bien (1995), Liden, Wayne, & Stilwell (1993)

今回のnoteでは、「どのように資源の交換が生じているのか」について、詳細に検討を行った研究についてまとめます。この研究では図表1の理論モデルを検証して、おおむね支持する結果が得られています。

参考:Liao, Z., Liu, W., Li, X., & Song, Z. (2019). "Give and take: An episodic perspective on leader-member exchange." Journal of Applied Psychology, 104(1), 34.


上司と部下の関係が「エピソード」単位で形成されていく

仕事をしていると、日々、リーダーとメンバーの間で細かなエピソードが発生します。

ここでいうエピソードとは、リーダーとメンバーの間で発生する個々の相互作用の出来事を指しています。具体的には、1つ1つの「エピソード」は、リーダーがメンバーに対して支援やフィードバックを提供する場面や、メンバーがリーダーに報告や協力を行う場面といった、特定のやり取りや出来事のことです。

リーダーからメンバーに、メンバーからの貢献を超えて、資源(情報、アドバイス、称賛、サポートなど)が提供されると、メンバーは「それに見合う貢献を返すべき」との感覚を強めます。これらのエピソードは相互作用の積み重ねとして捉えられ、一方の行動が他方の反応を引き起こし、それが次のエピソードに影響を与える形で進行します。

その結果、メンバーのそのときの仕事へのエンゲージメントと、その後のリーダーへの貢献度が高まります。

すでに高いLMXのもとでは、両者の関係は長期的なものとして認識されているため、超過して得られたものをすぐに戻さなくては、という感覚は弱まります。

図表1
Liao, Z., Liu, W., Li, X., & Song, Z. (2019). "Give and take: An episodic perspective on leader-member exchange." Journal of Applied Psychology, 104(1), 34.を元に原田が作成


リーダーとメンバーの関係性がしっかり構築されるまでは、日々仕事を依頼したり、されたりするなかで上記のような細かなプロセスが発生します。

リーダーからサポートやアドバイスをされた分、「しっかり仕事に貢献しよう」とか「このリーダーのために働こう」という感覚が生まれやすいということですね。

リーダーがメンバーに対してポジティブな行動を取れば、メンバーもそれに応じてポジティブな行動を返すという「相互性」も確認されました。一方で、ネガティブなやり取りが発生すると、信頼が低下し、関係が悪化する可能性があることもわかりました。

しかし、一旦良好な関係性ができてしまえば、あまり貸し借りを気にすることはなくなります。信頼関係がある程度できていると、「これをしないと、リーダーにこう思われるのではないか」という不安って初期の頃に比べるとなくなりますよね。その感覚だと思います。

資源(情報やサポート、アドバイス等)を多くもつリーダーの側から、メンバーに対してたくさんの資源提供を行うことが、良い関係性構築のサイクルを回すのには役立ちそうなことがわかります。

交換関係、なのでギブアンドテイク、なんですね。

リーダーからの持続的なポジティブな交換が、リーダーとメンバーの強固な関係構築に不可欠であることを示唆していますね。

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