私が、手紙を好きな理由。
私は手紙が好きだ。LINEやメッセンジャーやメールで伝わる言葉ももちろんあるけれど、手紙じゃないと伝わらない気持ちもあるんじゃないか、と何処かで思っている。
なぜ、手紙がそんなに好きかというと、母とのエピソードが大きい。
母は、筆まめな人だった。何かしらあれば、誰かに手紙を書いたり、贈り物をしたり、人への感謝を常に忘れない人だった。今もそう。
記憶に強く残っているのが私が小学4年生の時。沖縄に行って戦争の歴史を学ぶという平和学習ツアーがあった。なんと3泊4日で、参加費は市が負担してくれるので全て無料。ただ、市内の小学生が全員応募対象だったので、応募多数の場合は抽選、と書いてあった。
親はついてこれないので、一人で行かないといけなかったのだが、母は「せっかくだから応募してみたら?」と背中を押してくれて、私は応募することにしたのだった。
ただ、応募条件に、「なぜ行きたいのか」という1200字の理由を書いて送らなければいけなかった。あれこれ考えて、なんとか応募期限までに理由を書き終えて、封筒に詰めて封をしようとした時に、母がこう言った。
私はキョトン、とした顔で母を見つめていたのだと思う。一筆、の意味がわからなかったのと、母が言っていることを理解するのに時間がかかった。
続けて母が言う。
誰と一緒に行きたいんだろう…..優しい人かな、一緒にいて楽しい人かな、あと怒らない人がいいな。あれこれ考えていると、母が言う。
小学生だった私は「一筆」という言葉を理解できていたかは怪しいが、ツアー主催者の人にとにかく私は行きたい!という気持ちを手紙に書くことだと理解して、一生懸命想いを綴ることにした。
理由には書かなかった自分の気持ちとか、沖縄にとにかく絶対行きたいんだ、とか、色々書いた気がする。
そんな想いに溢れた「一筆」を封筒に入れて、応募した。
2週間後。
郵便受けに、沖縄平和学習ツアーの結果通知たるものが入っていて、ドキドキしながらみる。
すると、「一緒に行きましょう」という無事に選ばれた結果と共に、主催者の方からの返事も入っていた。
直筆だった。この時、幼いながら私はとても嬉しかった記憶がある。
想いって、ちゃんと届くんだ。
この時から、私は手紙が好きになった。小さい頃の、成功体験。
そんな経験からか、今年30歳になって、お世話になっている30人の方々へ手紙を書いている。書いている私の方が、満たされる気持ちになる。
もちろん、その30人の中に、自分の家族へも入っている。
お母さん。手紙届いた?
期待してないけどさ。
返事、まだ来てないよ。