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環境の不確実性と組織間関係とは?

組織は、不確実性にあふれています。

不確実性は環境を記述するための概念ですが、それが組織間関係の強化と弱化のいずれを促進するのか、動機は何かという点について統一的な姿として明確になっているわけではないことから、それを明らかにしようとしたレビュー論文があったので、今回はそちらを紹介します。

この論文はレビュー論文になるので、詳細は本論文をぜひ、お読みください!

論文名:環境の不確実性と組織間関係/小橋勉さん

目的

不確実性と組織間関係との関わりを明らかにしながら、組織による組織間関係を通じた環境適応についての諸研究を理論的に整理すること

論文では、不確実性の定義を、代表的な研究である Galbraith(1973)の「職務を完遂するために必要とされる情報量と、すでに組織によって獲得されている情報量とのギャップ」を紹介しています。

また、組織間関係の目的を大きく2つに分類しています。

不確実性へ対応の安定化:一定の組織間関係が既に存在しているかどうか。不確実性の高い環境では、組織は長期的な取引関係や提携を強化し、安定したネットワークを構築することでリスクを低減しようとします。

不確実性へ対応の環境への柔軟性の獲得:不確実性対応行動の目的が環境の安定化か環境への柔軟な対応のいずれか。逆に、市場や技術が急速に変化する場合、組織は固定的な関係を見直し、新たなパートナーを求めることで柔軟性を確保しようとします。

このように、組織間関係の強化と弱化は、環境の不確実性と密接に関連しており、それぞれの状況に応じた戦略が取られることが示されています。

考察

環境の不確実性が組織間関係の形成・変化に与える影響は一様ではなく、業界特性や企業戦略によって異なることを述べています。

例えば、製造業ではサプライチェーンの安定化を図るために長期的な関係が重視される一方、ITやスタートアップ業界では柔軟性を優先し、短期的な提携やパートナーの変更が頻繁に行われる傾向があります。

また、組織の初期状態(既存のネットワークの強さや過去の取引履歴)が、その後の関係の強化や弱化に影響を与えることも示唆されています。

論文では、環境の不確実性に対する組織の適応戦略として、組織間関係の強化と弱化のメカニズムを、さまざまな研究をもとに整理しています。組織は安定性と柔軟性のバランスを取りながら、環境の変化に応じてネットワークを再編成しています。

この論文は、不確実性への対応について、そもそもどのような関係に基づいた行動なのかという初期状態の視点焦点組織の直面する環境とパートナー組織の能力との関わりという視点不確実性への対応が安定化と柔軟な対応のいずれの目的を持つのかという視点に基づき、分析を進めています。

企業経営者や組織マネージャーが戦略的にパートナーシップを考える際の理論的な指針にもなり得ると思ったのと、組織そのものが環境変化に対する適応のための知識への理解にもなりました。


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