スマッシュブラザーズCPバトル選手権[最終回] ある兄弟の物語。
これはある兄弟の物語。
時は2021年、その1年前から始まったパンデミックで人々の生活は大きく変わり、あらゆる活動は制限された。
それはここ、きのこ王国も例外ではなかった。
ある男の家にその弟がやってきたところから物語は始まる。
「ようやく来たみたいだな。」
「兄さん!
こんなの来たけど知ってる?」
緑の帽子を被り、髭を蓄えた男は息を切らせながら兄に質問した。
「ああ、さっき私のところにもきたよ。」
「CPバトル?なんだろうね、これ?」
「ちょうど身体もナマっていたから、いい運動になるんじゃないか?」
「いい運動って、これ戦うってことだよね?」
「そうだな。
スマッシュブラザーズに出ているファイターが集まって誰が一番強いのかを決めるってことだろ。」
「どうする?」
「どうするも何も、出るしかないだろう。」
「僕はあんまり気が乗らないなあ。」
「そんなこと言うな。
今、世の中がこんな状況だけど少しでも何か行動をおこして前に進みたいんだろう。」
「そうだけど、、。」
「それだけじゃない。
私はこの大会でも中心キャラとしての責務がある。
それはお前もだ。」
「責務?」
兄と一緒に行動をすることがほとんどだが、時々怖い屋敷を訪れたりする時は1人で行動する。しかしその時でもそのような責任を感じたことはなかった。
「この大会が私たちや応援してくれている人々にとってどう言う意味があるか。
少なくとも、お前か私のどちらか、または仲間が優勝するしかこの大会は成功と言えない。」
「そうなの?」
出場するかどうかも悩んでいるのに、優勝しろというのはかなり難易度の高い話である。
自分にその実力があるのかすら、わからない。
兄は背負ってきたものが大きすぎるが故、この大会もこのファミリーにいる以上普通に戦うわけにはいかない覚悟が既にあった。
「しかし、当然そう思っている他の人からすれば私たちはかなりマークされるはず。
私の対戦相手を見ろ。
ソニック、ガノンドロフ、セフィロス、テリー、、、、彼らが私と戦うことによって大会がかなり盛り上がるのは必然。
しずえやデデデはかなりの実力者と聞く。
勝利を期待されると同時に私が苦しむのも期待されている。
これから2023年公開の映画があって準備も大変な時期もあり、大会に向けて十分な準備ができるとは限らない。
私が予選突破できない可能性は正直高いだろう。」
「そうなの!?」
「お前のところはどうだ?
、、、。
曲者が多そうだな。
パワー勝負ではない感じだから、お前にも十分チャンスがありそうだ。」
確かに同じグループには力でねじ伏せられてしまうようなファイターは少ない。
得意な道具を使えばいい戦いができる気もしてきた。
不安は消えるわけではないが。
「大変そう、、。」
「大丈夫。
この大会は4位までが決勝トーナメントに出れる。
この組み合わせなら十分、4位以内に入れるだろう。
むしろ、4位でいいと思って無理はしない方がいい。
私ほどマークはキツくないだろうから、勝てそうな相手にだけしっかり勝てば十分予選通過は可能。」
「なんか、兄さんの話聞いていたら、大丈夫な気がしてきた。
ありがとう!
ちょっとトレーニングしてくるよ!」
「大会前に無理して、怪我するなよ!」
「じゃあね」
すっかり最初の自信のない感じから、晴れやかにそして軽やかに兄の家から飛び出していった。
「、、、。
こんな感じだが、どうだ。」
兄は弟の気持ちをなんとか前に向かせたことで安心し、弟がくる前に会話をしていた者がいるテラスの方に目を向けた。
「弟様の気持ちを動かしていただき、ありがとうございます。
必ず、我がスーパーマリオ勢が優勝するように、全知全能をかけてサポートします。」
「頼んだ。
さっきも言ったが予選は4位でいい。
そのためにあいつのいる組にMiiファイターが2人いるから、予選通過するようにすることも可能だろう。
もし私が予選通過できない時はあいつがプレッシャーを感じでしまうかもしれない。
緊張しなくて試合ができるように、他に注意がいくようなことをしてくれ。
隕石とか外部から何かしら危機が迫って、平和が失われそうになってしまう状況でもいい。
その時は、キノコでもスターでもこれらの道具を使って地球を守ってくれ。
大会では使えないみたいだしな。」
「承知しました。」
「Miiファイターも3人とも決勝トーナメントに進むだろうから、彼らもうまく使ってくれ。そして周りの雑音は彼らが防げば大丈夫。
あとはあいつの持っている強運で勝ち上がるだろう。
そして、最後にあいつが優勝することができれば、全てがうまく収まる。
、、、
頼んだぞ。」
「承知しました。
我ら4人で必ずこの大会を成功させます。」
「さて、私もやるからには優勝を目指したい。
ちょっとトレーニングでもするか、、。」
「先ほどピーチ姫様が会いたいと言っていましたが、、、。」
「呑気なものだ、、、。
ピーチもちゃんとトレーニングしないと散々なことになると言っておいてくれ。
じゃあな。」
そう言うと兄は、これから起こる運命を全て受け入れるような深い呼吸をして、弟のいる方に走り出した。
「さ、我々も準備を始めるとしよう。
くれぐれもYUJIYUJIにはこのことは黙っておこう、、、。」
誰にも予想のできない運命の歯車が回り出した。
スマッシュブラザーズCPバトル選手権
おしまい