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視覚障害者柔道のクラス分け変更

今月5日、IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)が一つの資料を公開しました。

視覚障害者柔道のクラス分けが変更になるというものです。

クラス分け

まず「クラス分け」とは、パラリンピックの競技において選手を障害程度によって分類し、より公平に競技を行えるようにしたものです。すべての選手は医療機関でのMDF(診断書のようなもの)を作成したうえで大会に参加し、大会の際に認定された医師による検査や診察によってクラスが決定されます。
この一連の流れは非常に厄介で、競技団体や医師、選手本人にもかなりの負担です。この辺りの大変さはまたいつか書きたいと思います。

これまでのクラス分け

柔道はこれまでB1、B2、B3という3つのクラスに分類を行っていました。

B1(全盲)…視力   〜0.0025
B2(弱視)…視力   〜0.032  or
     視野直径 〜10度
B3(弱視)…視力   〜0.1      or
     視野直径 〜40度

しかし、実際に競技を行う際にはこのクラス分けによる分類はなく、すべてのクラスの選手を混合して、男女別体重別の階級のみで分けられていました。

では、なぜわざわざクラス分けを行うのかという疑問もあるかもしれません。選手側から見た情報のみになりますが、クラス分けには次の3つの目的があったように思います。

1.出場資格の確認
B3の基準に満たない程度の視機能を有している選手を排除することです。障害の程度がB3の基準よりも軽い選手は出場が認められません。
日本ではおおよそ視力0.3以下の人々を視覚障害者と定義しているため、視覚障害があっても必ずしも出場資格があるわけではありません。

2.全盲の選手をわかりやすくする
クラス分けでB1と判定された選手は柔道着の袖に赤い丸を縫い付けなければなりません。これは、競技中に開始線までの移動などに際して審判等による補助が必要であることをわかりやすくするためです。

3.国際ランキング
国際ランキングとは試合の結果に応じて付与されるポイントによって各階級でランキングをつけるものです。主に大会におけるシード権やパラリンピックの出場者を決定する際の基準とされます。
これまで適用されていた国際ランキングでは、障害の程度に応じて獲得ポイントに差がありました。ランキングポイントは大会への参加や入賞で付与されるものの他に、各試合の勝利によっても得ることができました。ここにクラスによる差が設けられており、同じクラスの選手に勝った時より、自分より障害の軽いクラスの選手に勝った時の方が多くのポイントを得ることができ、自分より重い障害のある選手に勝った時には得られるポイントは少なくなります。
具体的には、同じクラスの選手に勝った時は30ポイント。クラスの差が1つあるごとに10ポイント増減します。
つまり、B3の選手は同じB3の選手に勝つと30ポイントですが、B1の選手に勝った際には10ポイントでした。逆にB1の選手はB3の選手に勝つと50ポイント得ることができました。

このように多少の違いはあれど、柔道においてこれまでは、クラス分けでどのクラスになるかはさほど大きな問題ではありませんでした。

しかし、今年から障害の程度によって競技の際にも分類が行われることになりました。

新しいクラス分け

新しいクラス分けの基準は次の通りです。

J1…視力   〜0.0025
J2…視力   〜0.05   or
      視野直径 〜60度

J1、J2と言うと、サッカーのようですね(笑)。おそらくですが、「柔道」のJだと思われます。

これまで男子は7階級、女子は6階級で計13種目となっていたのですが、男女、障害クラスの4つのカテゴリーそれぞれに体重別4階級ずつ計16種目となり、種目数は増加します。
またIPCの発表によると、パリ2024パラリンピック柔道競技の出場選手枠数は東京2020から10増えて、148人となります。

以上が今回のクラス分け基準変更の大雑把な概要です。


今回のクラス分けの変更は選手やスタッフに大きな衝撃を与えました。これほど大きな改革に適応していくのはとても大変ですが、2年半後に迫るパリ2024に向けて、今後ますます視覚障害者柔道が盛り上がっていくといいなと思います。

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