IBSA柔道東京国際オープントーナメント
12月11日、東京・講道館でIBSA Judo Tokyo International Open Tournamentが開催されました。
この大会は日本で初めて行われるIBSA公認大会であり、パリ2024予選の世界ランキングポイントが付与される大会です。
ランキングポイント自体はそれほど大きくはありませんが、アジアの国々にとっては近場でポイントを稼げる大会であり、日本チームにとっても低コストで大量の選手を派遣しクラス分けを進めることができる、同時に多くの選手の実力を国際レベルで測ることができる、自国開催でアドバンテージを得ることができるなど、非常に重要な位置づけとなる大会です。
日本人の各選手にとっては、今後の国際大会派遣に選出されるためにはこの場で十分なアピールをする必要があります。
私は今年で僅かながら実績を積むことはできたため来年以降の派遣のハードルは多少下がりましたが、先日の世界選手権では望む結果を出せずランキングレースに出遅れてしまいました。パリへの出場、さらにシード権獲得を目指す中では今回は重要な大会です。また、自国開催であること、大会の参加者数などを考慮すると優勝は必須という認識で臨みました。
これらと併せて私自身の気持ちの整理として、前回の失態を払拭し得る試合内容を求めていきたいと考えていました。
今回は試合4日前の7日(水曜日)に東京へ入りました。今大会の宿泊は有明の相鉄グランドフレッサ。8日以降の朝のストレッチはホテルからすぐ近くのオタクの聖地・東京ビッグサイト前で行いました。去年、選手村から遠目に見ましたがすごい形してますよね。1度でいいのでいつかはコミケにも行ってみたいです。
8日.9日はクラス分け。私は既に完了しているので練習のみ。8日と9日の事前練習会場は東京武道館です。体調は概ね良好。前回の反省から少し強度を上げてアップを行います。
8日までの体重は75kg台を安定して記録しています。約1年間の増量の成果です。まだ足りませんが…。
試合前ですが増量は継続です。調整練習で練習強度が落ちたからか、9日朝には76kgを記録しました。私史上最重量です。ちなみに計量前日。
練習を終えて74.4kg。この感じなら明日の計量は直前で水を抜けば余裕…が、ここで重大ニュースが!
計量の実施時刻が予定の16時から12時へ早まるというのです!元々早まるかもという話はありましたが、まさかそんなに早くなるとは…ピンチ!!
というのも、先に書いたように練習後に水抜きをする予定でしたが、早まったために時間がありません。3kgくらいなら時間さえあれば落とせる重さですが、10日は練習・計量が行われる講道館への到着は8時45分の予定。どんなに少なくても着替えや練習に1時間半は必要で、しかも仮計量で一度はオフィシャルの体重計に乗っておきたいので、練習後にホテルに戻ったり外の銭湯に行く暇はありません。
練習前に水を抜く方法もありますが、睡眠時間や生活リズムの関係から朝は時間がなく、前日夜に水抜きをするにも水を抜いて長時間乾物状態を維持するのは体の調子を崩す恐れがあり抵抗があります。そもそも、水を抜いた状態で練習なんて怖くてできません。検討の末、食べる物の無駄を省くことで体重をセーブすることにしました。これもナンセンスですが。
9日の練習を終えてホテルに戻ると昼食にはコンビニのおにぎりを購入。食べられないとわかると無性に食べたくなるのが人間のサガ。お菓子コーナーに足を捕らえられますがなんとか振り解いて部屋へ戻りました。夕方に水を抜いて、水を戻しながら夕食を食べます。夕食もこれまでよりやや少なめ。炭水化物とビタミン、果物は多めに。
10日の朝食もいつもより控えめに。ここまでやって、練習前の体重は74.8kg。不本意ですがこれで問題なし。放っておいても1kg弱は落ちるので練習で1kg分動けばOK。余裕です。
体重に関係なくいつもより運動量は多めを考えていたので、講道館に到着すると長々とストレッチをして打ち込み、乱取り、スピード打ち込みなど。自前の体重計にちょこちょこ乗りながら体重と必要な運動量とを比べながら水を飲みます。そうこうしてると11時半を回ったので仮計量へ。
体重計に乗ると73.0kg! すばらしい!!
どうせ代謝で少し落ちるので水を一口二口。乾いた体と微妙なスリル。この時の水は少量でも美味しく感じます。
時刻は正午を回り本計量開始。軽い階級から順に体重計に乗ります。
私の番。体重は72.9kg!
惜しイッ!
計量会場の会議室を出るや否や水を飲みます。リカバリー、リカバリー。超大事。
そのまま講道館で昼食を摂り、バスでホテルへ戻ります。もちろん水を飲みながら。
部屋へ戻ると買っておいたおにぎりを4個ほど。おいしい。
今回の組み合わせ抽選の配信はなし。先生方からの連絡を待ちます。
抽選の結果を知ってびっくり、J2.60以外は全てラウンドロビンでした。参加国の顔ぶれやアップ会場での観察から、私の階級J2.73は総当たりになりそうと踏んでいましたが、まさか本当に4人しかいないとは…!
夕方は体のケアと映像分析。今回は抽選が昼だったので夜に慌てる必要がなくて助かります。
しかも相手は皆知っている人ばかり。韓国のキム選手以外は対戦経験がありますし、キム選手もこれまでの大会で何度か見かけています。
担当コーチの野田先生とともに若林先生の部屋へ。主にキム選手の分析を行いました。
そして夕食。1日半ぶりにお腹いっぱいに食べました。カレーがおいしい。
夕食の後は一人でいると緊張するからという他の選手とともに雑談タイム。話のトピックは主に自己啓発とエクレアの語源。なぜエクレアの話になったかというと、ここ数日静電気がひどい的な話だったかと思います。エクレアがなぜエクレアと呼ばれるのか。廣瀬誠さんがネットで調べてくれたところによると、「素早く食べることができるから」が最も有力な説なのだそうです。
これは納得いきません!! 異議を申し立てたい!
その理屈で言えば🍙🍔←これらもエクレアじゃないか!!!!
この日は22時半ごろ就寝。7時間弱、ぐっすりとは言わないまでも、十分な睡眠がとれました。やはり睡眠は一番の体のケアですし、睡眠の質がパフォーマンスには直結すると思います。今回はベッドが柔らかすぎるということもなく安心して眠れました。
試合当日。朝起きて朝食へ。食べるもの、量に注意しながら食べます。
食後で体重は75kg弱。うーん…やはり食事を抜く減量は良くない。体重がリカバリーできていない。
特に動きながらの増量中は一食怠るだけでそれを補うのはかなり大変です。不本意ですが食べ過ぎは良くないのでこの体重で行くほかなし。
講道館に到着したのは8時半を回る前。着替えてアップを始めます。
今回もダラダラとストレッチ。30分以上かけて準備運動を終えて打ち込み。9時40分になった頃に一度試合場の畳に触っておきたいと思い7階へ。試合場に入り打込みを10本したところで大会運営の遠藤先生に追い出されてしまいました。試合場でアップしたらダメだったようです。
6階に戻り打ち込みの続き。その後野田先生に軽く乱取りの相手をしてもらいました。今回はアップの強度を少し上げようというのが調整練習期間を含めてのテーマでした。
乱取りを終えた頃に試合が始まったので、ここで一旦休憩。アップ会場のモニターで試合の様子を伺います。
3台並んだうち中央に試合順、左右にそれぞれの試合場の映像が映ります。しかし、中央の画面は左に第一試合場の試合順、右に第二試合場の試合順が表示されるのに対して、左右のモニターは左が第二試合場、右が第一試合場なので最初は混乱しました。実際の試合場同士の左右の位置関係は正しいので、変だとも言い難く…。
4試合目で60kg級の阿部さんが登場。私は8試合目なので、この試合を見届けてから最後のアップ、スピード打ち込みを行い7階へ移動。
いよいよ試合です。
試合の様子は視覚障害者柔道連盟のYouTubeチャンネル、ライブ配信アーカイブでご覧いただけます。
1試合目は藤本さん。(動画の1h14mごろ)
これが10度目の対戦。雑に言えばいつもの展開。藤本さんの巴投を防ぎつつ、けれども私も決定打が出せない。しかし今回の私はよく攻めることができていたのではないでしょうか。いつもとの違いとしては、投げる背負にこだわらずに不完全な背負や背負投以外の技も積極的に仕掛けられたことが大きかったのではと思います。その効果か、今回は指導を受けずに試合を終えました。
ひとつ反省すべきなのは、「はじめ」の前に技をかけてしまったこと。なかなか動かない試合展開を打破しようと開始際の背負を狙いましたが、審判のコールの読みが外れ先走ってしまいました。
もちろん、普段から「はじめ」と聞いてから動くようにはしているのですが、特に気持ちが強い時には審判の合図のタイミングをなんとなく測ってしまうことがあります。それが外れるとこのようなことが起こるのです。今回はこれに気づいたのが背負った後だったので、引き手を離すことでその場を逃れて「待て」にできましたが、東京パラの3位決定戦の時には足を一歩下げただけのところで気づいたためそのまま試合が進行し、気が動転したまま不用意な技を仕掛けて返されてしまいました。
今回はなんとか難を逃れましたが、今後も十分に気をつけなければなりません。
結局この試合は藤本さんの小内刈の足を払い、浮落のような形で体を浴びせて一本。背負で決めれなかったのは残念ですが総じて悪くはない内容でした。
2試合目はカザフスタンのオラザリューリー選手。(動画の2h36mごろ)
今回の大会では一番の警戒対象。先日の世界選手権で3位に入賞しており、ランキングも今回出場の選手の中では最も高い選手です。
彼とは2度目の対戦です。前回は5月のグランプリ。お互いにポイントを取り合い、最後は私がなんとか返し技で勝ちましたが、彼の特殊なクロスグリップは対応方法が掴めず再戦して勝てるかと問われると難しいと感じる相手です。
本当であれば前回と同じように真っ向からぶつかって彼の技を学習したいところですが、今回は優勝が必須。彼とやる時は確実に勝てる方法を取ると1ヶ月も前から決めていました。
その方法とは私の一番の武器、開始際の背負投です。前回の対戦で彼から(私の肘を犠牲に)これで技ありを奪ったことや、世界選手権の際にこれが決まらずとも最初に技を仕掛けることで主導権を握れることに気づいたことなどから、試合前の作戦は待てがかかる度にこれを仕掛け、技あり2つを奪うというものでした。
そのために私はここ最近で開始際の背負を重点的に練習し、また肘の負傷から半年かけて背負に耐えられる肘造りをしてきました。とは言え相手もこれを一度食らっているわけですから、そう簡単には決まるまい、そう思って強引な形ではありますが技あり2つでの勝ちを想定していました。
いざ試合開始。一本。
狙ってはいましたが想定外でした。相手は納得していないようで、「はじめ」の前だったのではと審判に確認していました。
私もなんとなくモヤモヤ。もちろん狙い通りに勝てたのは良かったのですが、ちゃんと警戒しておいてくれないとこっちが隙を突くような戦法を採ったみたいで…いや、私は悪くない、はず。
とにかく一番のヤマ場を超えたので一安心。残り1試合きっちりと締めていきたいところです。
そして、この時点で
私 2勝
藤本選手 1勝1敗
オラザリューリー選手 1勝1敗
キム選手 2敗
となり、直接対決の結果から残り試合を待たずして優勝が決まりました。
私の残り試合は午後の予定。とは言え午後の2試合目なので意外とすぐ。この間いろいろあって、慌てて階段を駆け上がったり、廊下の奥で耳を塞いで頭を抱えて丸まったり、ゼリー飲料がうまく吸えなかったりしました。
午後の2試合目、私の今日最後の試合はキム選手との対戦。(動画の4h33mごろ)
優勝が決まっていたこともあって、この試合はやりたいようにやろうという感じでした。あそこまで背負にこだわるつもりはなかったのですが、やはり背負投こそ至高(?)少し維持になっているところはあったかもしれません。
1つ目の技ありはうまく乗せられましたが、高い背負だったので落とすまでに相手が少し体を捻ってしまい技あり。できればここで決めたかったです。結局最後は中途半端な背負で技あり2つ目。
この試合の良かった点としては積極的に攻めることができた点、そして相手の技をほとんど封じることができた点です。これをどの試合でもできれば良いのですが…。
1つ目の技ありはかなりの手応えがあったのですが、2つ目はあまりしっくりきませんでした。最後があんな感じだとやはりモヤっとします。これで優勝が決まるならまだ嬉しさもあるのでしょうが、優勝が決まった後だと満足できない気持ちの方が強くなります。ラウンドロビンの良くないところですね。
3試合を通して、今回は内容がすごく良い試合だったと思います。一度も指導を受けずに終わる大会は私にはかなり珍しいですし、当初の作戦通りに展開するというのもなかなかできることではありません。ところが、なんかスッキリしない。
毎度試合を終えて特に良い試合ができると「嬉しい」とか「ホッとした」というような気持ちがあるのですが、今回はそのどちらも感じませんでした。ほんと、なんかスッキリしない。
これは2試合目が原因なのか、3試合目が原因なのか、ここで優勝するのは当たり前と思っているのか、この優勝でも先の失敗を取り返せていないと焦っているのか。どれかと言われればその全てというのが正しいと思います。
試合に勝って喜べないというのは少し寂しい気もしますが、前向きに捉えればこの結果・内容で満足していないということかもしれません。
次の試合の予定はまだ決まっていませんが、次は勝って喜べる試合をできるように頑張ります!
引き続き応援よろしくお願いします。
今大会は東京パラスポーツチャンネルのYouTubeで実況つきで配信されています。
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