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第16回全国視覚障害者学生柔道大会

7月29日、講道館にて第16回全国視覚障害者学生柔道大会が開催されました。

この大会は全国の視覚障害のある学生を対象とする柔道大会で年に一度開催されています。
学生と聞くと一般的な中学生〜大学生を想像しますが、参加資格は「盲学校(特別支援学校)中学部・高等部在籍者または、中学校・高等学校または大学・視覚障害者関係施設等に在籍する学生・生徒で、視覚障害のある者」となっており、盲学校の専攻科に所属する学生も参加可能で、過去には30代、40代の選手も出場していました。
また私のように大学院生も出場できますし、年齢を重ねてから大学や大学院に入学した方も学生ですので参加できます。

盲学校の中高等部や専攻科から柔道を始める方が一定数いるこの競技において、この学生大会は初心者が臨むのに非常に適した大会であると思います。

今年は特に初心者の割合が高かったと言えます。
大会参加者は4人。その全員が柔道を初めて2年未満の無段者です。内訳は男子73kg級2名、女子70kg級2名。それぞれ高校生(専攻科含む)と中学生が1人ずつです。

試合はそれぞれの階級で2戦先勝方式で行われました。
いずれの階級も2試合で決着しましたが、特に女子の試合はゴールデンスコアの延長線にも連れ込む試合などもあり、非常に白熱しました。男子も豪快な投げが決まる場面などもあり会場も沸いていました。

試合なので勝ち負けこそはつきましたが、皆とても頑張っているようでした。試合が初経験という出場者も多く、貴重な経験と新たな課題を得られただろうと思います。
高校生は年齢的にもシニアの全日本大会にも出場できるので、ぜひそちらや昇段審査などを通して試合経験を積んでいってほしいと思います。

そして、そもそも、なぜ私がこの会場にいたのかというところですが、当初は私も将来のライバルの偵察のために(笑)、出場するつもりでいました。一応、学生なので。
しかし、申込後に初心者しかいないという連絡をもらい、であれば、大会に出場という形でなくても構わないから運営上都合の良い形で使ってくださいと申し出たところ、特別参加として出場者と1試合ずつエキシビションマッチを行うこととなりました。

ということで、4試合してきました。相手は初心者ですが試合という形式上負けるわけにはいかず、かと言って趣旨を汲めば本機になるわけにもいかず、さらに相手に怪我をさせるなんてことはあってはいけませんし、初心者の予測できない動きに惑わされてこちらが怪我しても仕方がありません…
非常に難しい試合でした(笑)

試合時間3分のうちいずれも2分ほど使いつつ、体捌きや手首の動きをうまく使いながら対応しました。投げる時は絶ッ対に引き手を離さないように、しっかりと注意して投げました。

中には初心者とは思えないほどパワフルだったり鋭い技をかける選手もおり、将来がとても楽しみになりました。

そして、その将来について、視覚障害者柔道連盟では非常に大きな課題に直面しています。

今回の学生大会の参加者は4名、年々減り続けています。
私が初めて視覚障害者柔道に出場した第10回記念大会の時には15人、かつて最も多い時期は27人もの選手が出場していました。

この減少の主な原因として考えられるのは、盲学校の柔道部員数の減少です。
柔道を教えられる教員がいない場合が増えていることなどから、部活どころか授業においても柔道を実施しない学校が増えています。
また、インクルーシブ教育の発展によりそもそも盲学校の生徒数、特に比較的軽度な障害のある生徒数が減少しており、さらに単一障害の生徒の割合も低下傾向にあり、他の障害種を併せ有する生徒が増えています。そのため安全面などから柔道の授業や部活を実施できない例が多いと聞いています。また、体育の授業自体で競技に結びつくような運動をする機会が少なかったり、実施するとしても全国盲学校体育大会の種目となるようなフロアバレーボールやサウンドテーブルテニスなどパラリンピック競技には含まれない種目を行う場合が多かったりするようです。

一方で通常校に通うようになった弱視の生徒たちも、こちらはこちらで体育の授業に参加できなかったり、見学していたりと運動経験を積む機会が少なくなっています。そんな生徒が柔道部に所属するなんてことはまずありえないでしょう。
座学においてはインクルーシブが進んでいますが、体育となるとハードルが高いこともあって難しいのではないでしょうか。

このような現状によって柔道をする視覚障害学生は減少傾向です。今後の課題としては、冊子や動画を用いた盲学校教員に対しての視覚障害者の柔道指導法の整理と共有、通常項に通う視覚障害者の発掘・勧誘などが必要になってくるのではないでしょうか。
また、違った方面からのアプローチとして、眼科医による紹介という方法も確立が進んでいます。こちらは連盟の担当眼科医である辻先生の提案で、先生曰く、どんな視覚障害者も絶対眼科には来る、眼科こそが視覚障害者を発掘するのに適している、眼科医に視覚障害者スポーツの意義や患者のケアとしての有用性が伝わればより多くの視覚障害者がスポーツに取り組む環境を作ることができる、とのことで私も強く同意するところです。


このように、競技人口の減少に対してできる取組はまだまだたくさんあります。私自身は現在KUNDE柔道に特に積極的に取り組んでいますが、他の視点からも選手の発掘、育成に関わっていきたいと思っています。

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