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視覚障害者柔道のルール変更

今年1月から視覚障害者柔道では新たなクラス分け基準と新たな体重区分が適用されていることは、既に何度も書いてきましたが、その他のルールにおいても何点か変更が加えられているので、大きく変わった3点をここで紹介しようと思います。

1.組み方

視覚障害者柔道は、試合開始時、再開時には審判の「組み方」のコールでお互いに襟と袖を掴み、その状態から試合が開始されることが最大の特徴です。

以前まではこの「組み方」の規定は「一方の手で相手の前襟、もう一方の手でその逆側の袖の肩から肘の間を掴む」でしたが、今回のルール変更によって、袖を持つ位置は「袖口から肩まで」に変更されました。

これまでは「組み方」の段階で掴むことができるのは引き手は相手の上腕のみだったのに対し、前腕も掴んで良いことになりました。

柔道において、引き手は上腕よりも前腕側を握る方が一般的です。ですので、これまでは「組み方」で上腕を掴み、「はじめ」の後で前腕に持ち替える選手が多く見られました。今回のルール変更は、この持ち替えを必要としていた選手には良い影響を与えるのではないかと思われます。

また、この変更によって、試合開始時の間合いも多少変わったようです。

これまでは互いに襟と上腕を握っており、ルール上では、開始前には互いに腕に力を入れてはならないことになっているめ、審判は両者の肘を曲げさせ、互いにかなり近い距離から試合を開始していました。
しかし、今回の変更によって前腕を掴む選手もいるため、互いに十分に肘を曲げることは不可能になりました。そのため、開始時の相手との距離は変更前よりやや遠くなったように感じています。

審判の先生に伺ったところでは、「より自然な組み方から試合を開始する」という考え方からの変更だそうです。

視覚障害者柔道は健常者の柔道と比較して、極めて間合が近いことが特徴のひとつです。この点に大きな変化はないと予想されますが、これまでより遠い間合いで進行する試合は少し増えるかもしれません。
一方で、これまで持ち替えに手間を要していた選手が、その手間を省くことができるために、より積極的な攻防が期待される、という見方もあるかもしれません。

選手側の考えとしては階級内で、上腕を握る選手、前腕を握る選手をそれぞれ把握しつつ、それぞれのパターンに対して対策を講じていく必要があります。
さらに、試合展開に応じて開始時の引き手の位置を変えながら幅広い攻撃の手段を考えるというのもアリかもしれません。

ルールの詳細はこちら

2.円形マーク

正式名称が不明なので、「円形マーク」としていますが、従来B1クラスに該当する全盲選手や聴覚障害のある選手が袖につけていた赤や黄色の円形マークのことを指します。

今回のクラス分け区分の変更により、これまでB1クラスの選手がつけていた赤い円形マークと同様のものをJ1クラスの選手がつけることになりました。
また、これまでマークの位置は袖でしたが、ゼッケンの国名コードの左側に変更となっています。デフ選手も同様に黄色の円形マークをゼッケンにつけます。

IJF official backnumberにてプレビューを確認してみたところ次の画像のような形になります。

J1 red circle
yellow circle for deafth judoka

全盲かつデフの選手の表示がどのようになるのかは不明です。また、国内大会においてはゼッケンの形式が異なるため、どのようになるのか、こちらも不明ですが、少なくとも年内の大会は従来の袖の表示が継続されると思います。

私の聞いたところによると、全盲選手や聴覚障害のある選手にこのような表示を付する意義としては、試合中やその前後での審判による介助や情報保障が必要かどうかを判別しやすくするためだそうです。

しかし、今回のクラス分けの変更によって全盲に該当するJ1選手はひとつのクラスにまとめられ、審判が試合中に各選手に対して介助が必要かどうかを判別する必要性はなくなりました。ですので、正直なところこれまでと同様の意義においては赤い円形マークは必要無くなったのではないかとも考えられます。

3.ランキングポイント

視覚障害者柔道の国際大会を主に主催するIBSA Judoでは国際ランキングリストを作成しています。各大会ごとにランキングポイントが加算され、期間内のその合計ポイントが高い順にリストにランキングされ、パラリンピックの出場権はランキングが上位の選手から順に与えられます。

これまでのランキングポイントは各大会の入賞ポイントと勝利ポイントの合計または参加ポイントが出場した選手に付与されていました。このうち勝利ポイントとは各試合に勝利することで得られるポイントのことで、B1〜B3で割り当てられた自分のクラスと対戦相手のクラスによってその大きさが決まっており、不利とされる障害の程度の重い選手がランキング上は公平に争えるようにしたものです。

しかし、今回のルール変更に伴い、障害の程度による有利不利はなくなりました。従って勝利ポイントは廃止され、入賞ポイントと参加ポイントのみでの計算になります。

具体的にここまでの大会から、IBSA柔道グランプリの各ポイントは次のとおりであることがわかっています。

優勝…210pt.
2位…150pt.
3位…120pt.
4位…90pt.
5位…60pt.
7位…30pt.
参加ポイント…3pt.

また以前の傾向から、世界選手権やワールドゲームズなどのグランプリより大きな大会はグランプリの4/3倍、大陸選手権などのグランプリより規模の小さな大会はグランプリの2/3倍の比率のポイントが加算されると予想されます。
また私の個人的見解ではありますが、仮にパラリンピックがランキングポイントの対象となった場合はグランプリの5/3倍、東京国際などのさらに小さな規模の大会をIBSA公認大会として開催する場合は、大陸選手権などと同等かグランプリの1/3倍のポイントが付与されるのではないかと思われます。

IBSAのホームページを見る限りでは情報を発見することができなかったため、あくまで予想にはなりますが、我々選手はおおよそこのくらいという考え方で試合に臨まなければなりません。特にパラリンピック出場、さらにシード権の獲得まで考慮するとランキングは非常に重要です。まだまだ始まったばかりではありますがランキングからは常に目が離せません。

今回はルールで大きく変わった点を3点紹介しました。今後も重要な変更があった際には随時紹介していきたいと思います。

クラス分けルールの変更やランキングポイントについても少し解説しています。こちらも参考にどうぞ。

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