IBSAワールドゲームズ・バーミンガム2023
8月20日から27日でIBSAワールドゲームズに参加するためイギリスに遠征に行ってきました。
今回はその振り返り・試合編です。
今回の大会、IBSAワールドゲームズは4年に一度開催される視覚障害者スポーツの総合競技大会で、IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)が主催する最大の大会でもあります。
実施競技はパラリンピック競技である柔道、ゴールボール、サッカーに加えて、パワーリフティング、ボウリング、チェス、ショーダウン、テニス、アーチェリー、クリケットなどが行われています。
大会期間は18日から27日、バーミンガム大学を主会場として開催されました。
柔道競技は大学のスポーツ&フィットネスセンターで23日から25日。23,24日が個人戦で25日は団体戦です。私の出場したJ2,73kg級は23日に実施されました。
この大会はパリの予選として最大のポイントを獲得できる大会で、パラリンピックのちょうど1年前としても重要な大会でした。かなり気合を入れて望みましたが、結果は初戦敗退、敗者復活戦も勝ち上がれず。非常に厳しい結果となりました。
まずは試合前の状態から。
今回は時差調整が非常に難しいスケジュールでした。イギリスとの時差はサマータイム期間なので8時間。私がこれまで経験した最大の時差が7時間なので未知の領域です。また、現地への到着が試合3日前の20日。正確には20日の22時半にロンドン着ですので、実際にバーミンガムの宿舎に入ったのは日が変わって21日の午前2時。
さらに厄介なことに今回のフライトはフランクフルト経由。直行便かあるいは乗り換えでもバーミンガム空港着かであれば、さらに言えばもう2日ほど前の昼着なら完璧でした。しかしそこはいろいろな事情があるようで…
ただ、このスケジュールの割には時差には意外とすぐに適応できました。確かに夜22時ごろになると多少眠くはなりましたが、十分許容できる範囲です。
ところが体調はそうはいかなかったようです。あまり良くありません。若干風邪気味でした。ここらへんは考えられる要因がいくつかあって、現地との気温差、食事と睡眠のサイクルなどです。
特に後者は今後の課題です。
今回は時差が大きいこともあって、日本にいる時からイギリス時間での食事睡眠を推奨されました。しかし日本での生活や稽古のスケジュールではどうにも実践できそうになかったため、19日の成田前泊日から実践することにしました。この日も午前は稽古なので必然的に睡眠を先延ばしにして成田では眠らない、かつ食事時間もズレるため日本の生活サイクルでは食事を1回多く摂るということになりました。これが胃腸には負荷だったようです。
なかなか今回ほどの時差は経験できませんが、パリ本番に向けてはしっかりと方法を確立しておく必要があります。
次に体重。これも自分の考えが甘く、反省点があります。
元の体重自体は通常と増量の中間程度の食事量で75〜76kgで安定していました。少し食べる量を減らせば73kgくらいはすぐに落ちるのでしょうが、そんな減らし方は良くないので、いつも通り動いて水抜き。
国内では2,3度試しました。現地でも計量前日に一度試しましたが、この時は洗濯機のせいで食事後になってしまったので73までは落とさず。ただ、いずれも問題なさそうでした。
計量当日も午前に練習。昼食をとってから水抜き。この時に73まで落としました。しかし問題はここで落とすのが早すぎました。計量は18時半でしたが、その前に14時からプレ道着コントロールがあり、いずれも宿舎から徒歩20分かシャトルバスで5〜6分ほどの試合会場。選択としては先に落としてコントロールを受け、そのまま会場に残って(実際には周辺の散策を行いました。)時間になったら計量でしたが、20分の道のりを往復してでも、コントロールの後に宿舎に戻って直前で水を抜くべきでした。
結果干からびた状態で4時間を過ごしてしまいました。
さらに良くなかったのがリカバリー。その干からびた状態が固定して十分に水が戻せなかっただけでなく、夕食にかなりスパイス強めなカレーをいきなり食べてしまいました。これら一連の体重管理は本当に悔やまれるミスです。おかげで体重の回復が十分でなかっただけでなく、胃腸にも負荷をかけてしまいました。
一方で睡眠については非常に良好で、いつも通り足りてないような気もしていますが、スケジュール上とれるかなり良いの睡眠でした。ベッドも多少柔らかかったですが、体への負担は感じませんでした。
試合当日の朝は5時起床。若林先生と宿舎の周りをウォーキング、体操、ストレッチ、ジョギングなどで体を起こします。今回はその後朝食。前回まで当日朝は朝食、運動の順にしていましたが、食べた後だと走れなかったり動きが鈍ってしまったりなので今回は逆にしてみました。これはおそらく良かったと思います。
しかしなんか疲れる。心拍も上がるのが早くなっている気がします。また呼吸が浅くなっていることを指摘されました。
この時点で、成田を出る前から感じていた「イヤな感じ」が一層明確になってきました。それは体調不良から来るのか、打った対策がことごとく失敗していることから来るのかは不明ですし、それにどう対応して良いのかもわかりません。
部屋に戻って朝食。そして出発までの時間は荷物を作って支度を整え、ゆっくり過ごしました。
試合会場に着くと早々にランダム計量の対象になっているとの情報をもらいました。初めての経験です。とはいえ、リカバリーがうまくいってなかったこともあり5%なんてとても届いていません。余裕です。ただ体重計に乗るだけでした。
アップはいつも通りゆっくりと。試合が第1試合場の4試合目と早めではありましたが、この時の体調から、なんかやりすぎると良くないだろうという直感に従いました。いつも通りにやっていたとして結果が変わったかはわかりませんが、後から思えばこの直感は気持ちの弱さの現れでしかなかったのかもしれません。
初戦の相手はイランのジェッディ選手。先のアジア選手権の決勝で敗れた相手です。彼は初出場の去年の世界選手権の覇者で、激戦区のJ2,73kg級において頭一つ抜けている選手です。この選手に勝てない限りは金メダルはあり得ません。
前回は極端なケンカ四つの態勢に対して有効な技が出せず、隅返の技ありで逃げ切られてしまいました。
今回はこの隅返への警戒と、この技に入られやすい態勢、つまりは極端に開いた態勢に対しての対策を打ちました。
なるべく相手と正面で対し、背中を持たせない、持たれても切る。序盤はこれでうまくいっていました。しかしこちらの技が出せず。
次第に体格、体力の差が効いてきたのか、完全に密着されたところに内股。直感的にはすかせると思ったのですが判断ミスでした。そのまま持っていかれて一本。
序盤の対策こそはうまくいっていましたが、終始引手を制されたまま、そしてこちらは腰が引けた状態が続いていました。ここは明らかに体力の差。身長も体重も向こうが上ですし、筋力、パワーも劣っていました。階級を上げて1年半。体重は多少増えてもやはりまだ73で戦うにはまだまだ体ができていないことを痛感しました。
そもそもフィジカルで負けては自分の技を出す形を作れません。今回は自分の強みが全く活かせない試合でした。
去年に続き世界選手権の1回戦負け。私は世界選手権に弱いようです…。
イランの選手は予想通り勝ち進んだので、今回は敗者復活戦が発生しました。
敗者復活戦の1回戦はポルトガルのロチャ選手。これまでの結果を見れば格下の相手です。一回戦から時間が空いたこともあり、次も見据えて少し時間をかけて体をほぐしながら戦おうと思っていましたが、そんな甘くはありませんでした。
開始数秒は軽い動さがありましたが、突如密着され裏投に入られそうになりました。咄嗟に足をかけて大内刈り一本。勝ちこそしましたが一瞬ひやっとする試合でした。そのつもりはありませんでしたが、油断していたのかもしれません。反省です。
次は比較的すぐ試合が回ってきました。
相手はジョージアのカルダニ選手。先のヨーロッパ選手権のチャンピオンです。カルダニ選手とは2度目の対戦で、前回は4年前、19年のグランプリ・バクーの2回戦で対戦して肩車で一本負けでした。彼はその後すぐに階級を73に上げたので、これ以降の対戦はありません。この選手も73で金メダルを取るためには避けて通れない相手です。
この試合も序盤は作戦通りの展開。こちらから積極的に動き、攻撃。相手に指導を与えます。カルダニ選手は積極的な攻めに弱いという傾向があったのでこのような作戦を取りましたが、正直いえば私も積極的に攻めることが苦手なタイプ。相手のスタミナも削れましたが、この数十秒でこちらもかなり消耗してしまいました。
指導以降こちらも攻めが緩みました。指導が入ったことで相手も攻撃を開始。動きの中でうまく足を合わせられ技あり。
取り返そうと攻撃を試みますが、引手が十分な形を作れず有効な技をかけきれません。結局最後は肩車で一本負け。この肩車はカルダニ選手の得意技ということで警戒していましたし、序盤は防ぐことができていました。しかしこの時は体力が持たなかったのか懐に潜られる前に止められず、また入られた瞬間も自分自身の感覚としては、止めた、と思ったのですが相手はさらにそこからもう一段階持っていくパワーと技術を持っていました。
今回の大会では総じて体格・体力の差というのが明らかでした。体重、筋肉量、パワー、どれをとっても73kg級で戦うには不足しています。
またそれが要因なのかケンカ四つで引手の十分な形を作れていません。次の試合に向けての課題としてはこれらの部分を改善していきたいと思います。
今回負けたことで状況は非常に厳しくなってしまいました。ランキングも落ちてパリ出場枠の当落線上です。ランキング上での目標はシート権確保。そのためには今後の試合全てで表彰台に登り、かつ複数大会での優勝が必要になります。もちろんそのつもりで毎回臨みますし、不可能だとは思いませんが、「もう失敗できない」というのは非常に苦しい。
気持ちだけは絶対に折られないよう気合を入れ直して今後も稽古を積んでいきます。
引き続き応援よろしくお願いします!
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