社内でつくる!内製動画のやさしい教科書 01:なぜ社内で動画をつくるべきか?
皆さん、こんにちは。「社内でつくる!内製動画のやさしい教科書」へようこそ。
この連載では、社内で動画を制作するノウハウをステップバイステップでお伝えしていきます。
連載を順にお読みいただければ、動画制作の基礎をスムーズに身につけることができ、無駄な機材や書籍を購入して失敗することなく、社内で必要十分なクオリティの動画を量産できる上、制作ノウハウを蓄積することができます。
また、外注する場合にも、映像制作会社の言いなりにならない見積の賢い見方や、試写版のチェック方法などをご紹介したいと思っています。お楽しみに!
第1回の今回は、そもそもなぜ社内で動画を作るべきなのか、そのメリットについて詳しく見ていきましょう。
動画は必須…だけど
まず、押さえておきたいのが、私たちは今や紛れもない「動画時代」に生きているという事実です。スマートフォンの普及とSNSの発展により、動画コンテンツの需要は爆発的に増加しています。企業にとっても、動画は単なるオプションではなく、マーケティング戦略の中核を担う重要なツールとなっています。
・・・なんていう講釈は不要ですよね。
このような営業をすでに何度も受けていらっしゃると思います。
みなさんが直面しているのは、その先で、
「動画が必須なのはわかり切っている。だけど、制作をどうするか」
ということ。
外部の映像制作会社に依頼するか、それとも社内で制作するか。
この選択は単なるコストの問題だけでなく、会社のブランディングや情報発信の在り方にも大きく影響します。
私は15年以上、動画制作を生業にしています。
結論を申し上げると、社内でできることはトレーニングを受けた社内の担当者が行い、一定以上の規模や相当なクオリティが必要な場合にのみ、専門の映像制作会社やクリエイターに発注すべきと考えています。
では、映像業者の私が、なぜ社内で動画を作ることを薦めるのでしょうか?
そのメリットや理由を、順番にご説明していきます。
メリット1:コスト削減効果
まず挙げられるのが、コスト削減効果。
我々のような制作会社に外注すると、1本あたり数十万円、場合によっては数百万円のコストがかかることは何も珍しくありません。
そして、決して不要な経費を上乗せして高くなっているわけでもありません。従来の映像制作とはそういう相場感だったと思います。
一方、インターネットで検索してみると撮影込み3分程度のリクルート動画で75,000円くらいから請け負う業者があるようです。
この場合は主に1人で企画構成・撮影・編集を完結する、最近流行りの“ビデオグラファースタイル”が多いと思います。
これよりさらに安価な業者やクリエイターも存在すると思いますが、映像制作の費用を極限までそぎ落として、直接的に構成する(=製造直接費)ものだけにすると、大まかに言って人件費と収録メディア代のみ(実際にみなさんが見る見積もりはもちろん違う表記になっていると思いますが)。
撮影と編集に加え、事前の打合せもすると考えれば、そのクリエイターの時間単価はいったいいくらになるのでしょう。
事前の打合せに2時間。構成や当日のロケスケジュールの作成に4時間。ロケ撮影は前後の準備や当日の打合せを含めて5時間。
第1稿の試写版を提出するための編集には最低でも6時間はかかるでしょう。
その後、お客様からの修正指示を受け、内容を変更しつつ再度編集(5時間)、photoshopでテロップを作成するのに最低3時間。
BGMを選曲して、インタビュー音声と一緒に整音(音の調整)するのに2時間。
完成後にそれぞれの納品媒体に合わせた動画形式で書き出すのに2時間。サムネイル作成に1時間…とみると、3分程度のウェブ動画を納品するまでに、順調に行っても延べ30時間かかる見立てになります。
お客様からいただくのが、75,000円(税抜き)とすると、映像業者の時間単価は、2,500円。これは決して「アルバイトの時給」ではありません。
時間単価には、企業もしくは個人事業主として運営を続けていくための製造間接費や人件費(地代家賃や社会保険等)も含む必要があります(お客様には関係のないことですけれど)。
この価格でクオリティを維持できる方も、もしかしたら、いるかもしれませんが、本業のプロフェッショナルとして持続的かというと個人的には甚だ疑問です。
妥当なラインを考えてみると
映像業者が無理をしない、見積もりの最低ラインはこのくらいだと思います。これに10~20%の営業管理費を乗せる業者もあるかもしれません。
あとは、みなさまの会社と実際に制作する業者の間に「何社」入るかも大事ですよね。
代理店やマーケティング会社などを挟めば、当然マージンが上乗せされます。映像あるあるですが、発注者のみなさんは「50万も払っているのに、こんなのしかできないの??」と不満を募らせ、映像業者側は「8万しかもらってないからカメラ2台も出せないです…」と、お互いの受発注額を知らずに不幸になるパターンが発生するんですよね。
さらに言えば、ディレクターのほかにカメラマンと音声マンがいるような会社に頼むと、映像制作費=人件費ですから、単純に見積はどんどん上がります。
この価格を見て、いかがお感じですか?
1本でこの価格です。
採用動画となれば、
会社紹介動画
先輩社員動画×3
最低でもこの4本をつくる企業様が多く、特に先輩社員の動画はインタビューと業務風景で構成するため、学生さんがよく見てくださる動画でもあります。
会社紹介動画は、一昔前は10分程度の尺が多かったものの、最近ではコンパクトに3分程度にすることも多くなりました。
この4本分の制作費用を直接映像制作会社に問い合わせると、おそらく90万~150万くらいの見積書が出てくるのではないでしょうか(何度でも言いますが仲介者を挟むともっとかかります)。
ただ、ここで広報・人事採用担当者のみなさんには心配ごとが出てきますよね。
「インタビュー動画に出演してくれたアイツ、辞めちゃった…」
これで毎年社員紹介動画をつくり直す企業様もあります。
書面を交わして退職後も数年間は使用するとしている場合もあるようですが、みなさんが円満退社とは限らず…。
結局、別の社員で同じ構成の動画をつくり直すケースも多いですよね。
ただ、そのたびに20~30万かかっていたのでは、社内的にコストパフォーマンスがよくないと判断されるのもしかたのないところ。
さらには会社の組織改編で部署名が変わったので修正しなければならないというケースも多発します。業者に修正を依頼すると、それだけで数万円請求されることも珍しくないわけです。
そこで、できることは社内で内製してみましょう!というわけです。
社内制作の場合、初期投資(機材やソフトウェアの購入費用、専門家からのレクチャー)は必要ですが、長期的に見るとコスト削減が可能です。
もちろん、高度な技術を要する動画については外部に依頼する必要があるかもしれません。しかし、日常的な商品紹介やサービス説明、社内向けの動画などは、十分に内製化が可能です。
メリット2:無駄なコミュニケーションコストの削減
社内で動画を制作することの大きなメリットの一つが、無駄なコミュニケーションコストの削減です。外部の制作会社に依頼する場合、自社の商品やサービス、企業文化について一から説明する必要があります。
経験のある担当者の方が多いと思いますが、これって相当な時間と労力がかかりますよね。
無理にかっこよくする必要もないのに、クリエイターから「シネマチックに行きましょう!」なんて言われて無意味に背景がボケまくっている映像を納品されたり…。
映像の目的とそれに適した映像効果を考えられる映像業者は意外と少ないものです。
一方、社内の人間が制作を担当すれば、そもそも商品やサービスについての深い理解があるため、このプロセスが大幅に短縮されます。また、細かな修正や調整も、社内でスムーズに行えるため、制作の効率が飛躍的に向上します。
メリット3:フットワークの軽さとタイムリーな情報発信
社内で動画を制作することの三つ目のメリットは、フットワークの軽さとタイムリーな情報発信が可能になることです。
外部制作の場合、企画から公開まで数ヶ月かかることは珍しくありません。しかし、内製化することで、この期間を大幅に短縮できます。
例えば、みなさんの会社で新商品・サービスの発表に合わせて動画を公開するとします。
製品自体のプロモーション動画だけは映像業者に依頼するとしても、それに付随する操作説明や活用方法の動画などは社内で作った方が圧倒的に便利です。
この場合はマーケティング部か営業部、または広報部の予算で動画をつくることになりましょうか。
従来のようにすべてを外部制作に頼ると、制作時間の逆算に苦労されていたかと思います。映像業者からは「納品の1か月前までには撮影を終わらせたい」「2週間前までにはナレーション収録のお立合いを!」「最終製品版の画像は今日中にください!」などなど…。
でも、商品開発部や製造部に聞いても、「まだそんなものできるわけないだろ」「ギリギリまで調整中!」と怒られてしまうなんてことも。動画や広報資料の制作部署の方は板挟みで苦労が多いですよね。
でも、相当規模の予算をかけるプロモーション動画やCM以外の動画制作を内製化してしまえば、外注と比較してもかなり余裕をもって内容の調整が可能になり、より新鮮で正確な情報を届けられるようになります。
その他のメリット
以上の三つの主要なメリットに加えて、社内で動画を制作することには以下のようなメリットもあります:
ブランドの一貫性維持:社内で制作することで、企業のブランドイメージやトーンを一貫して維持しやすくなります。
社内のクリエイティブ人材の発掘と育成:動画制作を通じて、社内の隠れた才能を発見し、育成する機会が生まれます。
部署間連携の促進:動画制作プロジェクトを通じて、異なる部署間の協力が促進され、組織全体のコミュニケーションが活性化されます。
内製化の課題と対策
もちろん、動画制作の内製化には課題もあります。主な課題と、その対策を見てみましょう。
技術的なスキル向上の必要性
対策:初期段階では講師を招いて映像制作を学ぶことから始めましょう。適切な講師が見つからない場合はオンライン学習プラットフォームを活用することも必要ですが、札幌の企業様の場合はサッポロネストまでお問い合わせいただければ万事解決です。
継続的なスキルアップのためには、動画内製化支援を行っている業者に依頼して月額数万円の顧問契約を結ぶこともお勧めです。※当社でも最近増えてきております。動画コンサルのサブスクのご依頼。単なる動画制作というよりはもっと大きな括り(=人事・教育・採用・広報等をひとまとまり)において、動画やITを使ってお手伝いさせていただくケースが急増中です。
品質管理の重要性
対策:社内でのレビュープロセスを確立し、複数の目で品質をチェックします。今後の回で詳しく解説しますが、炎上リスクを避けるためにもレビューの仕方に工夫が要ります。また、外部の専門家に定期的なフィードバックを依頼するのも効果的です。
機材やソフトウェアの選定
対策:次回以降の連載で詳しく解説しますが、初めは必要最小限の機材から始め、徐々に拡充していくのがおすすめです。
まとめ:社内で動画をつくる時代へ
ここまで、社内で動画を制作することのメリットを見てきました。主なポイントを整理すると:
長期的なコスト削減が可能
無駄なコミュニケーションコストを削減できる
フットワークが軽く、タイムリーな情報発信が可能
これらのメリットを考えると、多くの企業にとって動画制作の内製化は検討に値する選択肢と言えます。
もちろん、すべての動画制作を内製化する必要はありません。高度な技術を要する動画や、特別に重要な案件については外部のプロフェッショナルの力を借りるのがベストです(ぜひ当社にお声がけを!)。
大切なのは、自社の状況や目的に応じて、内製と外注をうまく使い分けること。
次回以降は、社内で動画を制作するために必要な基本的な機材とソフトウェア、そして技術的なことについて詳しく解説していきます。
動画制作に興味はあるけれど、何から始めればいいかわからない...
そんな方にもわかりやすくお伝えしていきますので、お楽しみに!