2019ドイツ紀行④[もう1つの城と教会]
今回訪れたもう1つの城、それはホーエンツォレルン城だ。
こちらは普墺戦争で勝った方の、プロイセン国王が建てた城。勝った方だから、という訳でもないかもしれないが、こちらの方が合理的に造られているような気がする。門から玄関までのエントランスの道幅がかなりあって、傾斜もゆるく、自動車でも楽に上がれる。あるいは城の周辺から下界の街並みが360度見渡せるようになっている。見物していても移動が楽だし、居住性も高い。多分実際に戦闘が起こったら、こちらの城の方が戦いやすいし、敵も攻め落としにくいだろうな、と思う。
しかしどっちの城が魅力的かといえば、断然ノイシュバンシュタイン城だ。この建造物には人を惹きつけて止まない、美の執念のようなものがあると思う。その正体はよく分からないのだが…。
その代わりと言ってはなんだけど、このホーエンツォレルン城には印象深い礼拝堂があった。室内に飾ってあるマリア像も真摯な表情で我々を見つめている。実はノイシュバンシュタイン城にも3つの礼拝堂の造築が計画されていたが、オーナーのルートヴィッヒの突然の死により、工事は中止されたらしい。しかしこの地ではやはり教会がないと、画竜点睛ということになるのかもしれない。
さてもう1つ、僕たちは草原の中の素晴らしい建物に遭遇した。ヴィース教会という比較的小さな教会だが、現在は世界遺産に登録されているという。その外観はとてもシンプルで端正だ。
しかし一旦館内に入ると、室内の装飾は壮麗で、その全貌はとても写真には収まらない。我々が訪れた時はたまたまミサが行われていたが、林さんが教会側と交渉し、特別に内部を見学させてもらうことができた。
礼拝堂の内部は、無数の彫刻と装飾、天井画が重層的に響きあっていて、一瞬3D映像を見ているような錯覚に陥った。異次元の空間に誘われたような気分で壁に沿って堂内を一周すると、大きな支柱をまたぐたびに、天井画や彫刻が異なるテーマで訴えかけてくる… まるでオペラの一場面のように。
恐らくは聖書のエピソードを絵物語として展開していると思うのだが、僕はそちらの方の知識がないので、何が語られているのかは分からない。ただここに集う人々は、この絵物語をリアリティをもって自分の身に取り込んでいるのだろうな、と感じた。
祭壇の奥には「鞭で打たれるキリスト像」が飾られている。このキリスト像が涙を流したという伝説から、この教会へはるか遠方から信者が巡礼に来るようになり、この地が徐々に有名になったらしい。
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