
カルピスソーダでの天然な出来事
「ミーンミンミンミン」
蝉の鳴き声が止まない、夏真っ只中の8月だ。当時、私は中学生だった。
その頃の私には密かな楽しみがあった。それは、帰宅後にカルピスの原液を炭酸水で割って飲むことだ。部活動で疲れ、火照った身体に、とても染み渡る。
「カランッ」
氷を2つほどグラスに入れ、原液をそそぐ。私はかなりの甘党なので、このまま飲んでしまいたいと思うほどだ。そして、あまり薄くしたくないので、炭酸水は少なめにそそぐ。カルピスソーダと共におやつを食べると、たちまち元気になれる。こんな生活を続けていた。
ところが、ある日、母が声を荒らげて私の名前を呼ぶ。何かやらかしたのかと考え、恐る恐る母の元へ駆けつけた。
「あんた、もうカルピスの原液ないんやけど、なんかしたんか!!」
このように言われたものの、カルピスを飲み始めて4日くらいだったので、そろそろ切れてもおかしくないのではと思った。
必死にその旨を母に抗議すると、渋々理解してもらえた。それに、またカルピスの原液も買ってくれるらしい。とても嬉しかった。
その翌日、私は今日も疲れを癒すためカルピスソーダを作っている。「トクトク」とカルピスの原液がグラスに注がれる音が、私の中の疲れを溶かしていくようだった。そして、できあがった瞬間、なぜか母が登場した。
「あんた、どんだけ原液入れてんねん!!病気になるぞ」
どうやら母は、私がカルピスソーダを作り終えるのを見ていたソーダ。なんちゃって(笑)。
私は母の言うことがすぐには理解できなかった。
だって、作り方をしっかりみて作っているのだから。
「ちゃんと容器に書いてある作り方どうりにしたんやで!カルピス4:炭酸水1の割合や!!」
私は誇らしげに言った。しかし、母はカルピスの作り方が書かれている面を私の目の前に突きつけてきた。それを読んでみると、衝撃の事実を目の当たりにした。
なんと、正しい作り方は炭酸水4:カルピス1の割合だったのだ。私とは真逆の比率。完全に勘違いしていた。私は原液を無駄にしていた現実を受け止め、謝った。母にとっては、そんなことよりも病気にならないかが心配だったみたいだ。
母が気づいてくれなかったら、かなり健康に危なかったかもしれない。そんな母に「ありがとう」と、心の中でそっと感謝した。
ところで、私の舌はひょっとして馬鹿舌なのだろうか。あの激甘なカルピスソーダを、なんの違和感もなく「美味しい」と飲み干していた自分がいる。それどころか、「これがカルピスソーダの味なんだ」と信じて疑わなかったのだ。思い込みとは、なんとも恐ろしいものだ。この事件があってから私はドリンクを作る時、比率をよく確認するようになった。
──────────────────────
正しい作り方で作ったのもそれはそれで美味しかった。あと、炭酸が強くなったのもよかった。炭酸水の量が増えたから当たり前だけど笑
著:yu-jin