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【無料】ゲビーでスピーディーなハイシーンを通じて謙虚になる男の話

メッセンジャーあいはらさんの有料配信ライブ、「ゲビーでスピーディーなハイシーン」を観賞させていただいた。

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コロナの産物とも言える有料配信ライブは、笑いの新たな可能性を広げている。

「ライブは生で観たい」という考え方も当然根強いし、実際に生の臨場感と空間は別格。

だが、お笑いと音楽の決定的違いも配信時代になったことで浮き彫りになった。

こんなご時世ゆえ、やむなしに音楽ライブも配信で行われてきたが、音楽ライブの真骨頂は生音を聴けることと会場の一体感。

それゆえ、音楽ライブの配信にはどうしても物足りなさがつきまとうが、お笑いライブは内容こそ面白ければ配信でも満足を得ることができる。

これはコロナから生まれた1つの発見だった。

旬な芸人さんが出演する配信お笑いライブは通常の会場キャパを大幅に超える売り上げに達する場合もある。
ソールドアウトがなくなったことで売り上げの上限は青天井。
お客さんはチケットが取れなくて諦める必要もなくなり、期間中の見逃し配信もあるので好きなタイミングで観ることができる。

諸々の要素踏まえ、配信文化の誕生にはプラス面しかない。

ただ、どうしても配信チケットの購入はネット文化との距離感が問われる。

完全にスマホを使いこなせる人からすれば、オンラインチケットの購入などは容易く、むしろ助かると言ってもいい。
だが、ネット文化に慣れ親しまない層からすれば、スマホやPCを駆使してログインのためのパスワードを入れたり、クレジットカード番号を入れたり、購入に至るまでの壁は思った以上に高い。

ゆえに、ファンの年齢層が若くなる若手芸人が配信チケットの売り上げにおいて有利なのだが、メッセンジャーあいはらさんのトークイベントとなれば、その視聴対象は酸いも甘いも知り尽くした大人が対象となる。

テレビ、ラジオ、YouTubeなど
無料コンテンツが大量に溢れるなか、大の大人たちを納得させられる有料コンテンツなのかが問われる。

キャーキャーファンがいないぶん、イベントの中身に対するハードルは高いのだ(いないと決めつけてすみません)

出演はメッセンジャーあいはらさん、芸能記者の中西正男さん。
そして、ゲストにシャンプーハットのてつじさん。

円熟味あふれる手練れのメンバーであり、配信チケットを購入するのに全く躊躇はなかった。

どう考えても裏切られるはずがない。
なぜなら、今回出演されている御三方の共通点は、関西ラジオ界の猛者たちなのだ。

どんなイベントなのか予備知識はなかったが、想像以上にフリートークで構成されていて驚いた。

一言で言えば、そのトーク内容は「むき出し」である。
下世話かつ男くささ満載だが、そのベースにはフリートークの地肩がある。
関西でトークの筋トレをし続けてきた演者の力量を感じざるをえない。

2時間以上に渡って3人のゲビトークが展開されていたが、私は今回の配信を通して、どこか懐かしい風を感じた。

私は大阪出身であり、多感な時期を大阪のテレビと共に過ごしてきたのだが…
どこか、あの多感な時期に触れていたものと似たような空気を感じたのだ。

「無法地帯」とまでは言わないが「赤裸々」

言葉の一つ一つに細心の注意を払わざるをえない現代メディアシーンに対する、ある種のカウンターパンチ。

言葉狩りと揚げ足取りに忙しい現代において、面白さを追求して本音をブチカマす姿勢は敵である。
何が糾弾されるか分からないご時世で足元をすくわれ奈落の底に落とされるのなんて、ほんの一瞬。

無難にいけば「つまらなくなった」と突き放され、果敢に攻めれば「時代に合っていない」と叩かれる。

誤解を恐れず言わせていただければ…
かつては人を傷つけたり人に傷つけられたりはザラにあった。

「誰も傷つけない笑い」なんて言葉すらなく、力のある演者同士は刀を持って斬り合っていた。

一見、モラル無視、傍若無人に見えるかもしれない。

だが、1つ忘れちゃいけないのは、お互いが一流のプロ同士だったという現実。
ザクザク斬り合ってはいるが、板の上に立つのは全員プロの剣士。

プロライセンスを取得した上での殴り合いだったのだ。

決して、あの頃のような時代に戻ってほしいと言っているわけではない。

ギスギスしたものが正解ではないし、世の空気感や風潮は肌身をもって理解できているつもりです。

だが、時に本音の笑いもあっていいと思う。

ただただトレンドに合わせて空気を読んで、誰かの顔色を見続けるなんて、人を喜ばせるために存在している表現者にとって不健全極まりない。

今回、「ゲビーでスピーディーなハイシーン」にお金を出して観る人の気持ちがよく分かった。
酸いも甘いも経験してきた大人は、力のある演者たちのフルスロットルなトークを聴きたい時だってあるだろう。

地雷を踏まないことが優先順位の上位となったメディアの現状に物足りなさを感じるのは当たり前。

このイベントは忖度の一歩奥に踏み込み、ギアを一段階上げて喋り続けるラジオ番組だった。

あいはらさん、中西さん、てつじさんと
フリートーク巧者が自由に喋るだけでイベントが成立してダイレクト課金を生み出せるのならば…

そこに必要とされる要素は演者の力量のみ。

当然、作り込みや緻密な構成を必須とするイベントならば作り手の技量は問われますが、自由に演者を泳がせるだけで、ここまでの面白さを提供できるとなれば、考え方は変わらざるをえない。

コロナはこれまで見えにくかった真実を散々炙り出してきましたが、、、

板の上に立つ演者の力量の凄まじさを今一度教えてくれました。

おもしろい人が喋ればおもしろいのだと。

他には何もいらんのだと。

知ってはいましたが、その現実はさらに浮き彫りになりました。

何一つためにならんイベントだと、おっしゃっておりましたが、、、
このイベントをガッツリ観させてもらったことで、自分自身が謙虚にならざるをえなかった。

アウトプットは誰にでもできる時代であるがゆえ、力のある演者さえいれば面白さは担保される。

その真実を踏まえた上で、、、
その現実をハッキリ認めた上で自分に何ができるのか?

このたびゲビーなトークを通じて、ヘンシーン願望が湧いてきた。
なるべくスピーディーに自分の本領発揮が活かせる居場所を見つけたい。


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