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お笑い芸人が笑いを語ることの是非

昨今のトレンドとも言える流れの一つ。

お笑い芸人が笑いを語ること。

その新たな流行に関して言及するケンドーコバヤシさんのインタビューが、とても興味深い内容でした。

お笑いの世界に対して
「もうすぐ破滅するんじゃないですかね。マジの話。」

言葉のチョイスにはケンコバさんらしいサービス精神を感じますが、たしかに笑いの裏側を語ったりネタを論理的に分析する芸人さんが増えたことに賛否はあるかもしれません。

あらためて思いますが、本当にケンドーコバヤシさんは信頼できる芸人さんだなと。
プロレス好きなケンコバさんらしく虚実入り乱れたアングル込みの発言かもしれませんが、お笑い人として一本大きな幹を感じます。
そのブレない漢の姿勢に憧れない男子はいない。

ちなみに、お笑い芸人が笑いを語る流れは最近始まったわけでもなく、紐解けば過去にも存在するのですが…
昨今、圧倒的に増えた。いや、増えすぎた。

大きな分岐点となったのはナイツ塙さん著書の「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」だと私は推測している。

漫才をロジカルに説得力を持って語れるナイツの塙さんの圧倒的分析眼に疑いの余地はなし。
漫才関連本における名著であり、業界界隈でも話題になった一冊。

お笑い芸人が笑いを語る上での是非…の「是」の部分。

その裏側語り自体が面白く、エンターテイメントたりえる部分。

例えば、ネタを書ける芸人さんのネタにまつわる寸評や分析や研究のプロセス。

「バカにお笑いはできない」

やはり、その着眼点には板の上に立つ者にしか分からない世界があり、いくら作家が一生懸命アドバイスしようと板の上に立って客前で勝負している感覚は分からない。

ようするに、何の壁にぶつかっているのか?
うまく言語化できなくとも板の上に立ってネタをやり続ければ、いつか超えられないハードルが訪れる。

どこをどのように修正すれば漫才、コントが面白くなっていくのか?
芸人さんからの細かい指摘自体もエンタメ感満載。
時にブラッシュアップと共に進化していくネタのプロセスも込みでファンは楽しめる。

さらには「実は、あの当時…」みたいな知られざる苦悩話。
お笑い芸人さんがこの類の裏の姿を見せる機会も飛躍的に増えた。

あちこちオードリー(テレビ東京)
やすとものいたって真剣です(朝日放送)
八方・陣内・方正の黄金列伝(読売テレビ)

普段は見せない姿や普段は話さない裏側にフォーカスする番組も増えているが、これらの番組が存在することの是非で言えば圧倒的に「是」だと私は思っている。

ひたすら芸事に打ち込む人間が抱え込む苦悩や心情吐露は究極のエンターテイメントであり唯一無二の価値がある。

芸人の裏側ドキュメントを描いた最高峰はM-1アナザーストーリーである。

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涙なしでの視聴は不可避。泣きそうになるのではなく、本当にポロポロ涙をこぼしながら観てしまう。

「芸人が泣く姿を見せたらダメ」
そんなお笑い美学も素晴らしいが、時には泣いてる姿もいいじゃないかと心の底から思わせてくれる番組。

M-1グランプリは漫才賞レースやバラエティ番組の枠を飛び越え、いつしか高校野球的青春群像劇も兼ねている。
試合に負けてワンワン泣いている高校生たちが監督に熱い言葉で叱咤激励されているシーンは否応なしに泣ける。
熱闘甲子園ならぬ、熱闘M-1グランプリである。

やはり、M-1グランプリの存在を抜きに笑いを語る文化の発展は避けて通れない。

これらは全てお笑い芸人が笑いを語り己の裏を曝け出す「是」の部分である。

私はお笑い芸人ではありませんが、文章でマジメにお笑いを語り尽くしていることもふくめ、これらは1つのお笑いエンターテイメントとして確実に楽しんでもらえます。
表側に興味のある人はメイキングもドキュメントも知られざる秘話も考察も好きで当たり前です。

愛を持ってマジメに語れば面白いものになる。
とにかく真剣に綴っていますので、ご興味あればよろしくお願いします。

しかし、今回のテーマは「お笑い芸人が笑いを語ることの是非」

ここまでエンターテイメントたりえるのなら別にいいじゃないの?という意見が大半を占めるかもしれないが、賛否両論の否の部分にも迫ってみたい。

お笑い芸人が笑いを語る機会が増えた裏には3つの時代背景の移り変わりが隠されています。

●M-1グランプリの影響力

●SNS全盛時代

●コンプライアンス遵守となった現代

これら3つの事象と共に、お笑い芸人が笑いを語ることにおける是非の「非」を深掘りします。


M-1グランプリは夢であり呪縛


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