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VUZE XRを使ってVR180動画を作ったときの覚え書き
0 前置き
今年は何度目のVR元年でしょうか。
元祖VRゲーム機の誉れ高い任天堂「バーチャルボーイ」が1995年の製品ですから、今年はVR24年くらいでいいですかね。
去年はスタンドアローン型のVRヘッドセット「Oculus Go」が登場し、DMMのVRエッチビデオラインナップも充実していって、VRにはとてもお世話になりました。
さて、VR作品を視聴するハードルは一気に下がりましたが、制作サイドは依然厳しいもの。3DCG系(MMDなど)のVRコンテンツは、元々3DCGが扱える人が更にVRに手を出してようやく制作できることから、どうしても供給に限りがあります。
実写のコンテンツも同様に難しい。立体視でない(モノスコピックな?)360度VRコンテンツであれば、リコーのTHETAを始めとするカメラのおかげで手軽に始められますが、解像度が足りなかったり、動画機能が不十分だったりと、コンシューマー向けの価格帯で満足できるカメラがありませんでした。
更に言うなら、個人的にモノスコピックVR360にはそこまでの魅力を感じない。Oculus GoでVRコンテンツを楽しむ上で没入感の要になるのは、やはり立体視=ステレオコピックであることだと思うんです。エッチなビデオで一通り試した上での意見ですから信用してください。
とにかく、VRで何かをやるなら立体視じゃなきゃ旨味を活かせない!
そんな思いを滾らせながら酒を飲んでいたところ、360度VRと180度立体視VRとの両方に対応したカメラが出たとの記事が目に留まりました。
VUZE XRというこのカメラは、手持ち部の上にフリップするカメラが2つくっついた面白いデザインの新製品。
価格は6万円弱ですから、GoPro Hero7のBlack Editionと同程度です。GoProの手ぶれ補正は と て も 気になりますが、それと同じ程度の価格でVR180に手を出せるという点に魅力を感じ、酒の力を借りてポチりました。
……長くなりましたが、オタクが興味に負けて新しいVRおもちゃの人柱になったというお話です。
ここからは実際にVR180動画を撮影・編集した上で思ったことを挙げていきます。途中に私が撮ったVR180動画もねじ込んでおくので、よければVRゴーグルを付けて見てみてください。
1 VUZE XRについて
(1)操作性に難あり
設定はすべてスマホ経由で行う必要がある上に、スマホと接続中は本体側のボタン操作が効かなくなるので、設定してすぐに撮ろう!と思って本体のボタンを押しても何も起きません。
なので事前に設定を済ませておき、スマホとの接続を切った状態で撮影することになるでしょう。構図とか確認して撮りたい気もしますが、基本的にカメラをパン・チルトさせるようなこともないので、撮りたいものの方向にカメラを向けてればOKですから大丈夫だと思います。
逆に、一度設定を済ませておきさえすれば、とりあえず単体で撮影できるのは良いですね。これでセルフタイマーとかも使えたらもっと写真が捗ったんだけど_(:3」∠)_
(2)動作がワンテンポ遅い
スマホでの映像プレビューはもちろん、静止画・動画の切り替えや電源投入も含めて、動作がワンテンポ遅く感じます。
撮影ボタンを押したときの反応は悪くありませんが、電源投入に時間がかかるのは念頭に置いて撮影したほうが良いかもしれません。
2 VR撮影について
(1)カメラをパン(左右に振る)すると高確率で気持ち悪くなる
VR動画を視聴するときは、ヘッドセットを通じてシーンを追体験します。だから、自分が首を振ってないのに映像だけ左右に振れると……気持ちの良い映像にはならない気がします。
もしかしたらよい方法でパンすればもっと違った印象を受けるのかもしれませんが、VR素人的にはパンなしで映像を組んだほうがミスがないと感じました。
(2)カメラの高さは目線の高さに合わせる
前項と近い話ですが、シーンを追体験するとき、普通は立ったり、座ったりしていると思います。カメラの高さも立ったり、座ったりしているときの目線の高さに合わせましょう。
親切なVRエッチビデオの場合、このビデオは寝転がっての視聴を想定しているとか、座って見ると楽しめるとか、動画の冒頭で教えてくれたりします。
撮影時の視点と同じ視点で視聴するのが一番綺麗に没入感を演出できるとすれば、大体のシーンでは普通の目線の高さを目安に撮影するのが良いのではないでしょうか。
(3)映像の意味合いによる表現の違い
これは何も試したわけではありませんが、プロが制作したVR180動画を見て感じたこととして、映像の意味によって酔い方が違う気がします。
映像を「追体験の、観客の視点を代行する映像」と「カメラが撮った映像」に分けて考えます。
視聴者が「現地に行って追体験している!」と感じさせるようなFOV的な映像はあまりパンしないほうが良い。
一方で、「これはカメラが撮った映像だけど、偶然VR180になっている」と思わせるような映像は、スムーズであれば多少パンがあっても違和感なく受け入れられる気がします。なぜかはわかりませんし、間違っているかもしれません。
3 VR編集について
(1)重い
言うまでもなく編集が重いです。Premiereではプロキシ作って少しでも軽く編集できるようにしていますが、冷静に考えて5.7Kの動画編集なので重いです。
(2)テロップの位置に気を使う
テロップのみならずピクチャー・イン・ピクチャー(pip)した挿入画像とかでもそうですが、普通の長方形ビデオであれば、邪魔にならない場所にでも配置しておけば良いでしょう。しかし立体視VR映像の場合、奥行きのことも考えなければなりません。
Premiereでは、テロップ等に対してVR平面に投影エフェクトを適用し、表示させる場所を決めて、更に視差をどの程度付けるかも設定することになります。
この設定値が曲者で、いつもこの値なら違和感ないよ!みたいな魔法の数値は存在せず、背景の奥行きに合わせて違和感のない位置に配置する必要があるようです。筆者はVRゴーグルがOculusGoしか無いので、確認のたびに書き出して→OculusGoに送って→設定し直してって流れを踏むのがなかなか面倒でした。PCVR機器ください。
(3)イマーシブでないエフェクトは使える
Premiereでは、最近のバージョンでイマーシブビデオ対応エフェクトが登場しました。これらを使えばVRビデオでも違和感ないよ!とのことですが、VR180の場合、別にイマーシブビデオ対応である必要はないようです。
というのも、イマーシブビデオ対応ってつまり360度動画のように継ぎ目なくスティッチされるコンテンツを想定していて、普通のエフェクトだと継ぎ目に違和感が出るから専用のものを用意してるわけで、VR180のように全球になっていない場合は普通のエフェクトでも問題ないように見えました。違ったら教えてください。
4 まとめ
私は日常的に映像を作ってるタイプの人ではありませんが、とりあえず新しいおもちゃを触った限りでは上のような印象を受けました。
立体視のVR180で作ったコンテンツにはとても魅力を感じますし、是非自分でも作りたい!と思っていたので、このカメラを買ったことは全く後悔していません。でもやっぱり手間の割にやりがいが無いというか、どうしてもVRコンテンツを視聴できる人がまだ限られている&視聴できる人も、普段からVRゴーグルを付けて生活しているわけじゃないので、リーチできる人に限りがあると思います。頑張って撮ったVR180動画があるので置いときますね。
「是非VR180で作成したい!」「この場所を体験して欲しい!」ような映像を作るときは迷わずVR180を選びますが、そうでない場合……360度で平面視の映像を撮影して、後からLittle Planet(Tiny Planetとも)エフェクトかけたり、必要な部分だけ切り出したりして普通の長方形ビデオに落とし込んであげたほうが、編集の手間も減るし、見てくれる人も多いんじゃないかな、っていうのが今の感想です。
何はともあれ、VR180だけじゃなくてVR360も撮れるこのカメラは買ってよかった。今後はLittlePlanetな写真を増産してインスタでチヤホヤされてきます。