【後編】【火星】 火星移住計画の始動
さあ、惜しくも最終回となってしまいました「核と共に火星へ」シリーズ。
【前編】【火星】 火星を見上げる時代に終止符を
【中編】【火星】 新エンジンで叶える火星旅行
に続いて
今回は、火星までの移動が完了して火星という砂漠の大地で
人々が定住していくために、どのように核エネルギーを利用するかについて深掘りしていきます。
では、最後まで楽しんで。
火星に住む前に月はどうなの?
現在、NASAが主軸となり動いているARTEMIS計画はご存じでしょうか?
こちらの計画に関して、私の方で全解説をしていますので、ぜひご覧ください。
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【導入編】 アルテミス計画で猛加速する宇宙開拓
ARTEMIS計画のゴールは「有人火星探査の実現」です。
しかし、 「【前編】【火星】 火星を見上げる時代に終止符を」 でも記述した通り火星と地球の距離は非常に遠く、現在の技術では安全な移動手段の実用化は出来ていません。
そこで、火星探査の布石のために計画されているのが「月面社会の確立」という訳です。
ARTEMIS計画は、有人火星探査を最終目標に掲げた長期的なミッションとして企てられており、2022年11月16日に打ち上げられた有人探査Orionは、ARTEMIS1というミッション名を掲げて、ARTEMIS計画初動の美を飾る記念すべきミッションとなりました。
そして、肝心な月面社会構築の序開きとなる有人月面着陸を目標としたミッションは、ARTEMIS3で計画されています。
では、月面で社会を構築するために必要なエネルギーの供給システムを、宇宙開発の先端に立つ機関はどのように考えているのでしょうか。
実は…
NASAも悩んでいる。
NASAだって悩むんです。
月の放射線量は、地球の200倍あります。何百年とかけて地球に築いてきたインフラは、月に降りたってしまえばアメリカ国旗くらいしかありません。月の夜は約350時間も続きます。
地球から一番近くにある月でさえ、人が住めるようにするには多くの課題と挑戦が付きまとってしまうことは、皆さんも理解できると思います。
そして、こういった問題に対して様々な解決方法が挙げられている中で、最もポピュラーで可能性を秘めているのが ”核エネルギー” なのです。
難題の活路に原子炉を
NASAは、月面に核分裂反応による電源供給つまり、地球でも用いられている原子炉を月面にも設置することを計画しています。
この計画は、Fission Surface Power Projectと命名され、現在実現に向け数多の人々が熱心に活動しています。
また、NASAのSpace Technology Mission Directorate(STMD)で行われているKilopower Projectでは、核分裂装置の月面実証を計画したプロジェクトも動いており、月面実証の前段階におけるKilopower Reactor Using Stirling Technology(KRUSTY)の実験は2018年に成功を収めています。
では、なぜ原子炉をエネルギー供給の手段に選んだのか。
理由は以下の3点にあります。
・信頼性
・発電力
・携帯性
原子炉の強み 「信頼性」
みなさん、「月の夜」がどれほど月面社会構築に邪魔を働いているかご存知ですか?
月の夜という響きはどこか神秘的に感じますが、そんな神秘的な夜は約350時間も続きます。ここまで、続くと太陽の光は差しませんが、嫌気は差しますよね。
これにより、太陽光発電での安定的な電力供給は不可能であるということがわかります。
そこで、こちらの原子炉を利用することで長い夜でも関係なく、24時間連続稼働で安定した電力供給が可能になるという訳なんです。
原子炉の強み 「発電力」
NASAが委託企業に設計を依頼しているシステムで考えた場合、少なく見積もっても40キロワットの電力を供給する能力を持っていると言われています。
これは、30世帯分の電力を10年間連続的に供給することができる電力量です。
また、将来的に地球外で発電した電力を宇宙船に供給することも考えると、生活最低限度の電力では話になりません。
原子炉の強み 「携帯性」
宇宙へ運搬する上で切っても切り離せないのが、携帯性です。
最終的には、火星の大地で電力発電することを考えた場合、大きくて重い発電機はロケットにとって非常に負担になります。よって、コンパクトさは火星移住からさらに飛躍した他惑星での滞在でも非常に有効な機能であると言えるでしょう。
Fission Surface Power Project
2022年の6月にNASAと当プロジェクトの共同進行をするDOE(アメリカ合衆国エネルギー省)が、Fission Surface Powerシステムの設計コンセプトとして以下の3社を選定しました。
・lockheed Martin社
・Westinghouse社
・IX社
さらに、こちらの募集案はある条件下で応募をかけていました。
それは、”10年以内に月での実証が可能な発電システム”
これは、先述したARTEMIS計画への盛り込みも視野に入れたことでの実証準備期間だと思われます。
つまり、この小型原子炉は月面での実証が成功となれば、火星での本格的な実証も視野に入ってくると考えられます。
以下に、NASAのこのプログラムに選定された各3社のFission Surface Powerについての記述がされている公式ホームページのリンクを貼っておきます。
英語が強い方はぜひお読みください。
Lockheed Martin社
Westinghouse社
IX社
現段階における最適解
現在ある技術力で、現実的に火星の定住を考えた場合のエネルギー源。
それは、「核からの生成」以外は考えにくいという結論に至ります。
電力生成でよく挙げられる別の選択肢は、「太陽光発電」ですが、以下の二点で問題があります。
・火星と太陽の距離
・火星の天候
地球と火星の距離は、かなり遠いと前編の方でも記述しましたが、火星と太陽ではそれ以上の距離があり、太陽エネルギーでの発電もおぼつかないは自明なことです。
さらに、火星の天候も問題です。
火星は赤い星といわれると共に、砂漠の星ともいわれます。
また大気が存在する火星では、ダストストームといわれる火星の竜巻が発生します。これにより、砂が巻き上げられ、それが太陽光パネルの上に蓄積した場合、いずれはパネルから得られる太陽光は減少していき、最終的に電気の供給は途絶えてしまう…
そんなバッドエンドが待っています。
そんなことホントに起きるのかって?
実際にその現象と似た問題を抱える火星探査機があります。
火星探査機InSight
この火星探査機InSightは、上写真にも写っている円形の展開式太陽光パネルで電源供給を行っていましたが、続く火星の悪天候などで砂が積み上げり、結果InSightが得られる発電量が時々刻々と減少していることが明らかになっています。
そして、これが原因により運用停止が余儀無くされていることも事実です。
つまるところ
火星で生きるための技術は現代階の技術では
「核を利用した発電方法」
が最適解だということです。
そして、安定的な電力供給が叶った暁には、そこに人類が居住することも夢ではなくなります。
そうなれば、そこでオフィスワークをしたり、優雅に紅茶を飲んだり、家族団欒でご飯を囲んだりすることも、いずれは現実となるでしょう。
そして
火星で新たな産声を聞ける日も
もし火星に居住できる技術が確立し、人が何十年と住み続ければ
我々人類にとって母なる大地である青い星を知らない
赤い星生まれの子供も誕生するでしょう。
遠いようで、そう遠くないこの未来にあなたは着いてこれますか?
まだ心の準備が出来ていない?
では、私はお先に火星にでも行って優雅にティータイムでもしていますね。
では、また。
【完】 核と共に火星へ
WRITER: yuji TAKAHASHI
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