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【前編】【火星】 火星を見上げる時代に終止符を


みなさん。住所を書く時、どう書きます?
東京都 港区 芝公園4丁目2−8とかって書きますよね?


しかし
30年が経った未来。

お母さんが愛する子へ仕送りを送る際、こう書く時代が来るかもしれません。


「太陽系 第四惑星 火星 第二首都 〇〇区 ○丁目」

火星に人が住む時代。
あなたは想像がつきますでしょうか?
つかない?
じゃあ、それは時代に遅れている証拠です。

いまや、夢ではないのです。

 






あと30年を切った火星移住


NASAは早くて2050年に火星移住を開始すると公言しています。
かなり思い切った発言かと思いますよね。
同じ気持ちです。
では、まず火星に行くまでの難しさを一緒に痛感することにしましょうか。


現段階で人類が到達したことのある距離は地球から何kmだかご存知でしょうか?

答えは、
約400171km


これは、せいぜい月の裏側です。
これに対して、火星の距離はどれくらいかご存知ですか?

答えは、
約57590000km

 
これは、歴史上人類が最も遠くへ行った距離の約144倍も遠くに離れています。

”さらに”

みなさんが火星移住に対して絶望感を感じざるおえないような事実を述べなければなりません。

この距離は、火星が最も地球に接近した時の距離を表しています。
というのも、下図にある2014年から2027年で観測できる火星の最短距離を見てみると
2018/07/31が火星と地球の再接近となります。 
でも、今はもう2022年。

credit: 国立天文台NAOJ

つまり

従来のロケット移動では、火星とか夢のまた夢の遠い存在ということ。
火星に行くまでの大変さ、痛感していただきましたか?


では、そろそろみなさんに希望も与えておきましょう。




火星へ飛ぶ新しいエンジンは、小さな太陽🌞


credit 左:矢沢サイエンスオフィス 右:NASA


上の2枚の写真、アメリカと日本がそれぞれ描く”核融合エンジン”の構想図です。
左が日本、右がアメリカの思い描く核融合エンジンの完成形となります。
どちらかというと日本の方がSF色が濃いような気がしてロマンを感じますが、こちらがあなたを将来火星へ連れて行ってくれるかもしれない核融合エンジンたちということです。

そもそも、核融合とは…という話からしていませんでしたね。
これが分からないままでは、ここから読み進めていくと苦しむ一方なので解説させて頂きます。



人類が核融合に期待する理由


核融合と聞いてごっちゃになりがちなのは、核分裂反応です。

なぜなら、あなたの身の回りにある核エネルギーというのは
多くの場合が核分裂によって生み出されているからです。
その例として挙げられるのが、原子炉による原子力発電です。

核分裂の仕組み(credit: SpaceOasis)

核分裂というのは、ウランやプルトニウムなどの重い原子核に中性子が衝突して、原子核が分裂することで起きる反応です。
例として、原子力発電の燃料としても用いられているウランの核分裂を上図に載せています。


では、一方で
核融合とは一体なんでしょうか。

credit: NASA

ここで、訂正させていただきたい。


先ほど、身近にある核エネルギーは原子力発電で利用される核分裂と言いましたが、
実は、もっと身近に存在していたのが核融合です。

なぜなら、核融合をすることで
燦然と輝き、地球の大地に緑と生命の根源を与えた太陽という存在はがあるからです。

 

核融合の仕組み(credit: SpaceOasis)

核融合というのは、水素のような軽い原子にもう一つの水素が衝突することで、中にある原子核同士も衝突し融合反応が起こり、少し重い原子が生成されるという反応です。
これにより、反応前後で中性子の結合エネルギーに変化が生まれ、わずかに質量が反応後の方が減少します。このとき、同時に莫大なエネルギーが発生します。

そして、人類はこのエネルギー生成方法に多くの期待を寄せているのです。
理由は以下の3つにあります。

・安全性
・エネルギー源の確保のしやすさ
・エネルギー効率


あるに越したことはない安全性


核融合が安全と謳われる要因は、その条件の厳しさにあります。
先ほど、核融合の例として太陽を挙げましたね。 
太陽は軽々と核融合をしていますが、条件は超高温度かつ高真空かつ高密度かt…もうやめておきましょう。
まあ、太陽という圧倒的な存在がおこなっている反応の時点で少し嫌な予感はしましたが、非常に発動条件が厳しいのです。
だからこそ、すぐに反応を止めることができるというメリットも隠れているということなのです。
これこそ、緊急時に反応が暴走せず、安全性を担保してくれているという訳なのです。



エネルギー源を手に入れる敷居の低さ



核分裂というのは、反応物にウラン鉱を用いますが、核融合は用いるのは水素です.
厳密に言えば、三重水素、重水素となりますが、組成から考えても水から手に入れることが出来ます。
これほどありがたいことはないでしょう。
みなさんも、美味しいのか分からないコース料理を頼むよりも、最寄りのスーパーで買った手羽先を料理して食べたいという方が大半だと思います。
つまり、リスクをもってウランから核分裂をして得るエネルギーより、リスクも少ないし水素からしっかりとエネルギーが得られるなら、多少手間がかかっても後者を選択するということです。



効率は良い方がいい



では、まず核分裂と比較してみましょう。
核分裂:1個のウラン原子核の分裂反応による発生エネルギーは、約200MeV
核融合:1個ずつの重水素原子核と三重水素の融合反応による発生エネルギーは、約17MeV


これを見ると、
「核分裂の方が効率いいのでは」
と思ってしまいますね。

いえいえ、それは早計です。

それぞれの燃料であるウランと水素の質量を比較したときに、圧倒的にウランの方が大きいのです。
つまり、単位重さあたりで再度比較する必要があり、またさらにわかりやすくMeVという物理単位ではなく、石炭での発電エネルギーを単位に変換してみます。
核分裂:1gのウランの場合の発生エネルギーは、石炭3トン分
核融合:1gの水素の場合の発生エネルギーは、石炭13トン分


つまり、核融合しか勝たんというやつです。



では、実際にこの核融合を利用して、
一体どんなロケットエンジンの研究が行われているのかみていきましょう。





↓ ↓ 続き ↓ ↓
【中編】 核と共に火星へ ~新たなエンジンで~

お楽しみに。



WRITER & DESIGN: yuji TAKAHASHI

宇宙工学を専攻する大学生。
宇宙ビジネスの分野を独学で学び、そのアウトプットを兼ねた情報発信でNoteでの投稿を開始。
SNSでも、様々なニュースの発信。
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