#236 お遍路 後記 2020年11月6日
お四国八十八ヶ所霊場巡礼 独りお遍路1,200km通し打ちは、令和2年9月20日に安房ノ国一番札所霊山寺で始まり、同年11月6日に讃岐ノ国八十八番札所大窪寺にて結願致しました。
お遍路は、名前や日付、願意を「納め札」に記し、本堂と大師堂に納め、一連の所作により納経を行います。
リブラン二代目社長としての僕の願意は「リブラン三代目時代の繁栄」でした。
「なぜ50代前半の現役経営者が、50日も会社に行かず、通し打ちお遍路に挑戦するのか。」
という問いは、今治市で遭遇したプロ冒険家の阿部 雅龍くんから頂きました。
それは実に的確な問いでした。
インタビューでお答えしましたが、背景なども含めて「なぜ今なのか」を記しておこうと思います。
社長には重要な仕事が幾つかありますが、本当に重要な社長にしかできない仕事とは、「次の社長をつくること」なのです。
此処を疎かにし、黒字廃業を選ぶ高齢社長のなんと多いことか。
17年前、僕はリブラン二代目社長を引き受けた時から、三代目社長を如何に作るかを考えてきました。
成功する企業は僅かと言われる業態変更へのストーリーが出来つつある頃、僕は60歳社長引退を社内社外を問わず公言してきました。
「60歳なんてまだ若い、早過ぎるよ。もったいない。」と、先輩経営者やお取引銀行から、僕を思って下さるお言葉を幾つも頂戴しましたが、言われるほど自分の考えは正しいと思うようになりました。
その後、社長引退時期を55歳に繰上げました。
それなりの組織となった企業は、社長引退を自身の年齢の限界を軸に決定してはならないと僕は考えています。
次の社長が最もパワフルに働ける年齢やタイミング、意欲を見計らい、気が充実する手前で、社長自ら自身の進退を決定することが永続する企業の条件であり、優秀な部下を飼い殺しせず、活躍させなければならないのです。
企業を完全に私物化するなら、死ぬまで社長職から離れず、死んだ後のことは知らん。ということでも良いのでしょうが、僕は創業者から事業承継された者として、それは選択肢にもなりません。
リブランや事業の永続性は担保できないし、そもそもそんな人生は美しくない。
社員は社長をクビにすることはできません。新たな時代を作るのは新たな社長や新たな社員たちなのです。ならば、リブランの企業目的を軸とした事業や社風を次世代へ残すために、社長自らが身を引くことしかない。社長は、その役職に固執したり、恋々としてはならないのです。
それを確信したのは、2年前の母の突然死でした。
死生観を大切に生きる僕も、リブラン創業者である母の死は重く、深く考えさせられました。2年前に新たな役員2名を増員したのも創業者の死の後押しがあったから。
いつ訪れるかわからない死。
しかし、僕は死までの時間を使いリブランの永続可能性を高めるため最後の仕事をしなければならず、それは急がねばならず、今しかないと感じたのです。
これがプロ冒険家が発した問いへの僕の答え。
母が亡くなり、義父も、愛犬も亡くなりました。僕の感謝の気持ちを天に伝えたい。そんな時に阿部ちゃんがお遍路へ旅立つ姿を眺め、僕もいつかお遍路に行かねばならない。
そう感じたのです。
コロナ禍となり、リブランも在宅勤務やオンライン会議が常態化しました。それなら何処に居ても最低限の仕事はできるだろうと思えたのもきっかけのひとつでした。
令和2年9月19日。お遍路前日は恐怖に怯えました。(その心情は滑稽ですが、感じたままにnoteにも投稿しました。ご覧下さい。参考:#076 鏡を見る。恐怖に怯え、泣きそうな顔だ。)
基本デスクワークの僕に、1,200kmの距離、標高1,000m弱の山々にある寺を巡り、トラックの走る国道を歩く。太陽の光や熱、雨風を一身に浴び、歩き続けることが本当にできるのかと。
もちろん、それに耐える準備は入念にしてきました。しかし、いざ始まるとなれば。。
終わってみれば、僕自身が勝手に抱えた恐怖と対峙し、乗り越えていくことも修行のように思えます。
未体験なことも、度胸で一歩前に足を踏み出すことの大切さを、改めて感じることができました。
お遍路中は本や新聞、TVから離れ、社会から隔絶し、孤独を選び、歩き続けました。
自らの中に存在した知に、体力の限界や天候の厳しさ、美しい風景、登らなきゃいけない目前に立ちはだかる山への恐怖などが掛け合わさる。そして、既知が厳しい経験を通じ体得の域に達していく。
お遍路は、知っていることが分かる旅なのだと思いました。
この旅では、多くの友人が僕のお遍路を現地に来て応援してくれました。長期の孤独は、酒を酌み交わし、しょうもないことを話す度に友の大切さを体得させてくれました。
また僕にとっては、記録を残すためのSNS投稿にお付き合い頂き、時に応援のメッセージを入れてくれたり。そんな皆さまのコメントにどれほど勇気を戴いたことか。
応援って、本当に力になるのだと体得することができました。
約50日間にも及ぶ僕のお遍路へ、応援を続けてくれた皆さまへ、本当に感謝しています。
そして、リブラングループの皆様。
皆さまから頂いたメッセージ入りの手拭いは、汗を拭う度に勇気を貰えました。個別に応援メールをくれたり、動画を作ってくれたり、本当にありがとうございました。
また妻には迷惑をかけました。
僕のお遍路を理解し、笑って送り出してくれましたが、彼女も僕と同じく孤独という修行をしていたのだと思います。
それでも毎日メッセージのやり取りをし、僕に勇気を与えてくれた。感謝しています。
あなたのお陰で大変素晴らしい経験をすることができました。
本当にありがとう。
最後にお四国へ。
素晴らしい景色と感動と恐怖をありがとう。また死装束を身に纏い、菅笠と金剛杖を持つ見知らぬ僕へ、本当に多くの温かいお接待を見知らぬ方から施されました。
僕はそのお気持ちで、歩き続けることができました。世界に誇れる素晴らしい文化が残るお四国に感謝しています。
袖触れ合うも多生の縁、
情けは人の為ならず。
改めて、応援頂いた皆様と、見知らぬ僕をお助け頂いた皆さまへ、感謝申し上げます!
写真は、この旅に出る前にリブラングループの社員さんから頂戴した手拭い。社員一人ひとりからのメッセージが書かれています。その空欄を埋めました。
さあ、次は何をしよっかな。