ローカルガイド?そもそもガイドとはなんぞや。という話。

この観光庁の「地方部における観光コンテンツの充実のためのローカルガイド人材の持続的な確保・育成に向けた有識者会議」の「ローカルガイド」は、読めば読むほど、我々アウトドアガイド業界とは全く別世界の話をずっとしているような印象を受ける。

https://www.mlit.go.jp/kan.../seisaku_seido/local_guide.html


ローカルガイド、という言葉も、また定義論になってしまうけど、「インバウンド、特にお金持ちを対象に地方の歴史文化を中心に案内する人」というような暗黙の前提があるような気配がある。(そう言及しておらず、広範囲に含めているように見せて、結局議論の内容は、インバウンドガイドのの内容である、という点で)

一応、登山ガイドなども入ってはいるものの、ローカルガイドとは「地域の魅力を伝える」とあるので、やはり少し違う。

というのは、なぜかというと。

アウトドアガイドにも、厳密には数種類あって、少なくとも顧客への提供価値が「外的要因によるフローを提供するガイド」と「内的要因によるフローを提供するガイド」の2種類がある。(趣味要素が強い場合、瞬間的には、外的要因によるフローを提供しつつ、その先の自己成長の過程で内的要因によるフローを提供する、という両面から成り立つツアーもある)

端的には、「外的要因によるフローを提供するガイドが行うツアー」は、そもそもその顧客が求めている価値自体が「地域の魅力を知りたい」ではない。それは外国人であってもEXPATの場合、外的要因によるフローを求めていることもある。

「地域の魅力を伝えたい」場合、多くの場合「内的要因によるフロー」を提供するガイドになる。難しいのが一見すると、合理的に聞こえてしまうガイド。例えば、バックカントリースキーのガイドの価値は、Japawという「地域の魅力を知ってもらうことだ」とする。たしかにJapawは「地域の魅力」だから、言葉にすると一件合理的に聞こえるようにも思う。ただ、実際のところ、たしかにJapaw自体は地域の魅力ではあるものの、楽しさの中核にあるのは、「外的要因によるフロー」であるし、それを案内できるガイドの価値だったりする。

登山ガイドも一見すると、例えば、北アルプスを案内した場合、「その風景は地域の魅力だ。」という論も成り立ちそうだけど、実際のところ、顧客がフローにはいるのは、脳で考えて、知的な要因によってフローが発生する成り立ちではないので、外的要因によるフローであるといえる。

なんで、ローカルガイドという定義で進める議論に違和感を感じるのかといえば、そもそもインバウンド相手のビジネスと、日本人(含む近隣諸国のアジア人)対象のビジネスだと、主にリピーターの重要性という観点で決定的な差がある。やり方がそもそも違う。顧客に地域に対する愛着を持ってもらいたいうんぬん、あるが、我々としては、事業者のファンになってもらうための施策を第一としているので、地域への愛着の優先順位は相対的には低い。

結局、インバウンド向けローカルガイドの議論の中に、日本人向けツアーを含めるのはやはり無理だろうし、含めないほうがよい。かつ、外的要因によるフローを提供するツアーも、含めないほうがよい。必要とする能力が違う。

まぁ。どうであれ、最近思うのは、国が進めることと我々がやっていくことは、もう完全に別で、早い話が、国は勝手にやってくれ、こちらはこちらで好きにするので、関わらないでくれ。ということかもしれない。

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あと、ふわっと思うのは、実際、ガイドさんと二人三脚で事業進めている立場からすると、国が、ガイドに対して、こうしてほしい、ああしてほしい、こうすると良い、課題があるから、国策で改善したい、とするのはよいのだけど。実のところ、ガイドさんって、それぞれ自分たちがやりたいことがあって、やりたい生き方がある、相当主体的な生き方をしてる方達の集団なので、そういうガイドさんの気持ちをぶった切って、専門家と呼ばれる人たちが、課題はこうだ、改善策はこうだ、と上からああだこうだ、いうのが、たぶんモヤモヤするんだろうな。ほとんどのアウトドアガイドさんは、国がどうこう言ってるのを冷ややかにみてる気がする。

ガイド、という言葉は魑魅魍魎で、そもそもあまり気軽に使わないほうがよいのかもしれない。使うなら、誰しもがその定義を理解できる形容詞をつけるべき。ローカル、という言葉は、広すぎる。

例えば、コンテンツ価値の向上で、この図のような流れに当てはまらないものは、多々あるし、もちろんそれはわかっているのだろうけど、少し無理がある。

アウトドア領域については、ガイドの質、とか、コンテンツの質、という言葉を軽々しく使わないでほしい、という気はする。

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