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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第235話:日常に潜む非日常。

「欠けて困るようなものばかりだったら、現実はうっかり手も触れられない、危なっかしいガラス細工になってしまう。...要するに、日常とは、そんなものなのだ」安部公房


 眠たくて眠たくて、これがもしまだ一人暮らしのアパートだったらきっときっと私は起きてはいなかったと思うのだけど、もうそうはいなかない。
 彼女が起きて食事の準備をしている。娘が起きて学校の用意をしている。そんな中私一人がグースカと寝ている訳にはいなかないのだ。

「おはよう」

 とりあえず起きることにした。朝日がきれいだが、眠たいときの朝日ほど憎いものもない。

「行ってきます」

 まずは彼女が出ていった。
 ついで娘がランドセルを背負った。

「一緒に下まで行こうか」

 マンションの下まで一緒に降りて、そして娘は学校に行った。その後姿を写メで撮って彼女に送る。娘は今日、始めて一人で学校に行く。緊張した面持ちだったけど、それでも前を向いて歩いて行った。
 まだこの子とはそんなに時間を共有してはいないけど、それでもなにか胸に来るものがあった。

「よし、俺も頑張るか」

 部屋に戻って、とりあえず洗濯機を回す。と、そこで寝起きの余韻が不意にやってきて、私は睡魔に襲われた。少しだけソファーに横になって、昨日読んでいた漫画の続きを読む。
 なんだかそれが幾日ぶりかのような気がして、同時にとても贅沢な気がしてきて、私はついそのままウトウトとしてしまったのだ。

 ずっと憧れていた生活。
 漫画を読んでだらだら過ごす夢のような生活。

 チャイムがなった。
 一体誰だろうと思いモニターを覗き込むとそこには誰かの頭の先っぽが見えているだけだった。
 娘が忘れ物か何かで帰ってきたのかと一瞬思ったけど、髪の毛の雰囲気がどうも違う気がしたのだけど、とりあえずその子はもう玄関先まで来ているようだから待たせるのもわるいよな、などと思いながらとりあえ私は玄関に向かった。

 このマンションに引っ越してきてまだ一週間ぐらいだ。
 変に波風は立てたくない。

 ドアを開けると、そこには娘と同い年ぐらいの少年が立っていた。ただそのまなざしがどこか懐かしさをはらんでいたので、私は挨拶の一つもできないでただ固まっていた。

 どのぐらいの時間がたったのだろうか。
 もしくはこれを白昼夢と呼ぶのだろうか。
 私はまだ玄関に立ったままその少年をただ見つめているのだ。
 なにも言わずに、そしてなにも動かずに。そして不思議と周りの喧騒も一切聞こえない。これが夢でなかったら何だというのだろうか。

 その瞬間、遠くで学校のチャイムが鳴った。
 私は目の前が暗くなっていくのを感じた。

 目を覚ますと、そこは小学校だった。
 それも私が通っていた田舎の小学校の校庭だった。
 ああ、そうだ。思い出した。
 私はみんなとサッカーをやっていたんだ。そのときに顔面にボールが当たってしまって、私はその場で倒れたんだった。
 みんなが集まっている。でも私は決して起き上がろうとしない。
 それはなにも痛みとか血が出ているとかそんな問題ではなく、恥ずかしさから私は立ち上がれなあったのだ。

 ここまで引っ張ったらもう後に引けない。

 そうか、私は幼いときからそんなことをかんがえていたのか。
 と、思った瞬間に、また学校のチャイムが鳴った。
 そして私はこれがすべて夢だったということを思い出したのだ。

 ふと気がつくと、私はリビングのソファーの上で眠っていたようだった。
 どうやらさっきの学校のことも、玄関に立っていた少年も、全部が夢だったようだ。
 しかし、なぜか鼻が痛いのは気のせいだろうか。
 そしてあの少年。

 あの少年は、幼い頃の私が抱えていたコンプレックスだったのだろうか。

 そんなことを考えているときに、洗濯機の終わる音が聞こえたので、私はしぶしぶと立ち上がった。

 もう引き下がれない。
 前に進むだけだ。

 私は洗濯物を干しながら、もしあの少年と娘が出会ったら果たして友達になれただろうか、などと妄想しながら、今日も一面に広がる空を仰いだ。
 朝日は相変わらずまぶしかった。

きみと一緒に暮らし始めて約一週間。

本当にお疲れ様です。

いま、きみは娘と一緒に眠っているけど、その姿を見れるだけでぼくはとても幸せなんだ。
いつもありがとうね。

ただ、一人で部屋に籠ってパソコンをカタカタしていると、ちょっと怖い、、、笑

だから明日はもう少し早く終わらそうと思っているよ!

まだ三人同時に眠っていないから寂しい思いをさせてごめんね。

明日こそは一緒に寝よう。

きみと一緒になれてよかった。
ありがとう。
愛してるよ。

お休みなさい。

初めての人生で大切なのはいかに日常を味わうかだと思っている。

非日常はいつだって味わえる。

大切なのは日常だ。

日常を大切にしていきたい。

今日もありがとう。

今年も、残り116日。

またね。

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