インプットだけでなく掘り起こし作業もしよう
実は、2008年からA4の大学ノートにただただ自分の気付いたことや、専門的なことで覚えておきたいことを書いたり、スクラップとして貼ったりという「気づきノート」というのを創り続けている。
気がつくと7冊ぐらいになっており、先日それらを久しぶりに読み返していた。
そのきっかけは、少し前の面白い体験が原因だった。おっ!と感じ、自分の気づきを手帳に書き込んでいたときに、
「あれ、なんかこれ前にも書いたような気がするな…」
と感じたのだ。
過去のノートを見直してみたら、ほとんど同じようなことを気づきとして書いていた。
新しいことばかりを入れるのではなく、もう既に持っているものや、気づいていることの方が、大事なことも多いかもしれない。これは定期的に過去の振り返りをした方がいいなと、気づいたのだ。
暗黙知を形式知へ
振り返ると20年間以上、専門家として働いてきた。自分で考えている今後の課題というのは、自分が持っている「暗黙知というのを形式知というところに昇華させていくこと」ではないかなと思っている。
うちの母親の例で説明してみよう。
母は趣味が高じて、パンやケーキを農協を介して販売しているぐらいの腕前となっている。自宅の脇のところにパン工房を造り、朝3時半ぐらいからパンを焼いて、実際出しに行ったりという生活を5年ぐらいしていたのだ。
パンの作り方が素晴らしいので、周りの人が興味を持って尋ねる。うちの妻であったり、娘たちも田舎に帰った際に、「ばぁば、パンの焼き方を教えてよ。」という話になるわけだ。
ところが、この説明が酷い。
「砂糖を手にこんくらい持ってね、ぱらっとな。そんでパンパンっとこねるがよ!」本人としては説明しているつもりなのだが、ほとんどが感覚でしかない。
再現性もないので、他の人がその説明でパンをうまく作れるとはとても思えないし、分からない。
こういった課題は、うちの母だけではないだろう。ベテランの方って説明が本当に下手というか適当というか、感覚的なのだ。
こういうベテランの体に染み付いたスゴ技や知恵、おばあちゃんの知恵みたいなものが「暗黙知」と呼ばれるものだそう。
私自身もそういう時に、
「おかあちゃん頼むよ。ちゃんと説明して!何グラムとかさ、だいたい大さじ何杯とかあるでしょ。」と言って突っ込んだりするのだが…
じゃあ果たして自分がそれをできているかというと、非常に怪しい。
これらは私が得意とする部分であり、一番自分のプロらしい部分ではないかと自負しているのだが、他のトレーナーやトレーニング指導者に「どこを見てどういう風に判断して、そんな指示になるんですか?」と尋ねられると…
隠す気は毛頭ないが、正直きちんと論理立てて説明することができない。説明ができないのだから、当然教えられない。
自分が無意識にどんな思考と気づきをしているのかっていうのは、もっと探る必要があるということを、その意味からも考えたりしている。
再現性のある数値化、ビジュアル化や言語化。つまり形式知に昇華させるというのが今後の課題だ。
そのためには、ひたすらインプット、インプット!をして、それらをアウトプット、アウトプット!!とするのではなく、「自分がもう既に備えているものを深掘りしていくという時間」が大切になってくるんじゃないか。
ちょっと年寄りの説教臭い話で嫌なのだが、そんなことを感じたりしている。
鈍く光る原石は既に持っていたりするもの
そんなわけで、最近は意図的に深掘りの時間を取ったりしている。じっくりと取り組むことで気づくのは、今までにやってきたことの中に、もう既にコンテンツ化できるような材料はたくさんある、ということだ。
「こういったことを情報として提供することで喜んでもらえるんじゃないか」、「経験として、一つの例文として求めている人がいるんじゃないか」といったもの。
その宝の原石みたいなものが見つかったりする。今まで何も考えてなかったけどもったいないなぁ、この価値に気づいて良かったな、なんて思いながら振り返りをしているところだ。やはり、宝の持ち腐れになるようなことはしない方がいい。
人というのはどうしても隣の芝が青く見えるし、自分が高みに行きたいと思った時に、新しいもの、新しいもの!となりがちだ。
しかし実は「自分が今持っているもの、既に自分が備えているもの」の中に大きな価値があるものとか、魅力的な経験というのがあったりする。
情報が溢れて溺れそうになる、今までの人類が経験してこなかった局面に生きている我々だからこそ、自分が得たもの、気づいてきたものを深掘りする時間は必要だと思う。
この記事の読者の中にも、新しいもの、違うことではなくて、あなたがなおざりにしているものがあるんじゃないだろうか。
意識的に、それらの部分に思いを馳せてみて、深掘りしていく時間を作ってみよう。
振り返り自体が有意義だし、さらに自分自身であったり、サービスが魅力的になっていくきっかけになるはずだ。
過去の自分のものであったり、自分の考えたことを更に見直して深掘りしていってみよう。それによって新しいことも見つかっていくし、実はコンテンツ化できるようなものも、あるかもしれないのだから。
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