[エビデンスストーリー]真実は、掌の中に
登場人物
・太朗 小学生で、ケンタの親友
太郎は、祖母から聞いた「手のひらを上に向ければ受容、下に向ければ拒絶」という言葉に、まるで呪文のように魅せられていた。嘘をつくたびに、その言葉を盾にして周囲を操り、小さな勝利を積み重ねていった。最初は、些細なことであった。先生に怒られたときに、手のひらを上に向けて謝れば、必ず許された。友達に駄菓子をねだるときも、手のひらを上に向ければ、たいていは分けてもらえた。
しかし、嘘を重ねる度に、太郎の心は重くなっていく。最初は軽い気持ちで始めた嘘も、いつしか彼を支配し始めた。特に、親友のケンタとの関係は、嘘によってひび割れていった。ケンタの信頼を裏切る度に、太郎は罪悪感を感じながらも、再び嘘を重ねてしまう。
ある日、ケンタとの言い争いの後、太郎は学校を飛び出し、いつものように川岸に座った。夕焼け空を見上げながら、彼はこれまでの自分の人生を振り返る。手のひらを見つめながら、太郎は初めて、その意味について深く考え始めた。祖母は、手のひらの意味について、もう一つの解釈を語っていた。「手のひらは、心を開くこと」と。太郎は、その言葉を思い出した。
翌日、太郎はクラスメイトの前で、これまでの嘘をすべて告白した。手のひらを上に向けて、心から謝罪する太郎の姿に、クラスメイトたちは驚きながらも、彼を受け入れる。特に、ケンタは、太郎の誠意を感じ、彼を許す。
しかし、太郎の心の中には、まだ小さな嘘が残っていた。それは、ケンタへの謝罪。太郎は、ケンタの家を訪れ、再び手のひらを上に向けて謝る。ケンタは、太郎の目を見て、彼の心の変化を感じ取った。「もう、嘘をつかないでくれ」と、ケンタは言った。太郎は、ゆっくりとうなずいた。
その夜、太郎は夢を見た。彼は、広大な草原を一人で歩いている。遠くには、大きな木が立っていた。太郎は、その木に向かって歩いていく。木の根元には、小さな泉があった。太郎は、泉の水をすくい上げ、自分の顔にかけた。すると、彼の掌には、小さな花が咲いていた。それは、白い、純粋な花だった。