ロッテファン歴19年の男が思う佐々木郎希のポスティング移籍に対する率直な意見
2024年11月9日。
千葉ロッテマリーンズは、ポスティング(入札制度)による佐々木郎希選手(23)のMLB移籍手続きを開始したと発表しました。
千葉ロッテファンとして19年が経ち、様々な選手が入団・移籍・引退を繰り返してきた中で、
今回の発表は恐らく1番驚き、困惑し、そして思考が止まった出来事になったと思います。
それくらい、今回の発表は「ほんまに?」と思う内容でした。
こうして文を打っている間も、もしかしたら嘘なんじゃないかと思う気持ちがあります。
僕にとって佐々木郎希は、
千葉ロッテマリーンズにおけるスーパースターです。
高校生史上最速の球速165km/hを記録。
大船渡高校時代の夏決勝、各界で物議を醸した登板回避。
高卒3年目での史上最年少完全試合達成。
WBC準決勝での登板。
何もかもが規格外で、いつかロッテでは手が負えず、MLBの門扉を叩き、世界にその名前を轟かすんだろうな。
そう確信していました。
でもそれは、「数年後」だと思っていました。
今じゃないだろ。
なんで今なんだ、そういう率直な思いがあります。
その思いの丈をぶつける場所を探して、書いています。
このnoteは、決して郎希や、千葉ロッテマリーンズを批判したい内容ではありません。
郎希がアメリカに行きたいという思いは一ファンである僕も痛いほどわかっていたし、千葉ロッテの判断がおかしい、間違っているということを言いたいものでもありません。
ただ、一人のファンが率直に思ったことを、一人のファンの戯言だと思って読んでもらえたら幸いです。
2019年10月17日のプロ野球ドラフト会議。
千葉ロッテマリーンズは、大船渡高校の佐々木郎希投手の交渉権を4球団競合の末に獲得しました。
当時の職場の休憩室でスマホのスポナビの通知で知ったとき、正直言って実感がありませんでした。
勝手に自分の中で、郎希は日ハムとかに行きそう、と思っていたのもあるかもしれませんが。
それが蓋を開けてみればロッテが1位指名。
本当に? という気持ちが一番だったかもしれません。
良くも悪くも郎希は、「ロッテらしくない」投手に思えました。
今でこそ150km/hを出すのが当たり前な球界において、ロッテには圧倒的な球速で試合を支配するような投手はいない、それが当時の印象です。
だからこそ、郎希を指名したときにはファンである僕でさえ、
「本当に育てられるのか」「怪我に苦しんでしまうのではないのか」「実力は本物なのか」という、
抽選権を得た喜びよりも不安や、その現実への懐疑心の方が強かった。
ご存知の方も多いかと思いますが、佐々木郎希は2軍戦に登板することなくプロ1年目を終えています。
これは当時、野球界で大きな波紋やロッテを疑問視する声を呼びました。
「佐々木郎希はプロをなめている」「ロッテは過保護すぎる」「数年は出てこない」といったコメントを、記事媒体や動画サイトで散々目にしました。
一方で入団後の球団公式YouTubeにて公開された初のブルペン動画を見たとき、入団前の僕の不安や懐疑心は、杞憂に終わったと思いました。
https://youtu.be/GzR8Bf9XWQg
僕自身は野球経験もなく、専門的知識も付け焼き刃程度しかないためふわっとしたことしかわかりませんが、
佐々木郎希がすごい球を投げている、ということだけはわかりました。というか、衝撃的だった。
ある種、改めて「ほんまにロッテの選手?」と思ったかもしれません。
まだ線も細い、幼げな顔が残る青年の球はそのくらい印象に残りました。
だからこそ、1年目を終えたタイミングでの様々な憶測を呼ぶ記事は、個人的に「目障り」でしかありませんでした。
後年、当時投手コーチを務めていた吉井1軍投手コーチ(現:千葉ロッテ1軍監督)は、「フルタの方程式」において、こう語っていました。
「とんでもない選手を育てなければならなくなった。ただ、育てる以上は責任の所在を明らかにするべきと思った。
本当はもっと早い段階で実戦登板させる予定だったが、怪我のリスクなども含め1年目は見送った」
吉井コーチ(以下、現在の役職の兼ね合いで「吉井監督」とする)は、現役時代近鉄、ヤクルトを経てMLBに挑戦後、最後はロッテで引退した元投手です。
ソフトバンク、日本ハムなどのコーチを歴任したほか、筑波大学大学院でピッチング理論やメカニズムなどを研究し、修士課程を取得しました。
その吉井監督が専属で郎希を見続けている。
一方で、プロでも何でもない外野が騒ぐだけ騒いで、批判する。
愚かな事この上ないと思っていました。
当時の僕らファンとしては、歴代で見ても類を見ない素材である佐々木郎希の活躍に、何よりも期待していました。
だからこそ、急いでデビューさせてその大器が壊れてしまうことが何よりも恐ろしく、不安でした。
実際、1年目の我慢は実を結び、2年目になって郎希はそのベールを脱ぎ、圧倒的とは行かずともプロの表舞台に登場しました。
そして、忘れもしない2022年4月10日の完全試合。
実は当時、その試合のチケットを取るか悩んでいたのですが、結果的に当時流行していた新型コロナウイルスに家族が感染してしまったこともあり、
濃厚接触者として自宅待機をしていたときにその試合を見ていました。
本当に、夢を見ているんじゃないかと思いました。
昨年の覇者・オリックス打線を相手に快刀乱麻のピッチング。
日本記録となった、13者連続奪三振。
20歳での完全試合達成も、もちろんプロ野球新記録です。
最終回に郎希がマウンドに立ち、最後の打者を三振に切ったとき、自然と涙が溢れました。
生きている間に、完全試合を見ることができるとは思わなかったからです。
この投手はどこまで凄いんだろう。
どれだけの場所にまで到達するのだろう。
どれほどの記録をこれから築いていくのだろう。
それが、2年半前の出来事です。
そして、冒頭にある千葉ロッテのポスティング容認。
去年の末から「メジャーに移籍するのでは」「ロッテとの契約をごねているのでは」といった記事が出続け、
ロッテファンの間で「スポニチの記事はブロックするといい」といったSNSの投稿があったくらいに、散々な記事が出続け、
某プロ野球OBですらその記事を鵜吞みにした大した根拠のない郎希叩きの動画を出していたこともありました。
今回のポスティング容認について、よくわからんという方がいるかもしれないので簡単にその制度について説明します。
つまり「ポスティング」の場合は、「所属している球団がOKを出さなければメジャーリーグへの移籍ができない」訳です。
ポスティングには「取得に時間がかかるFA権を待たずして有望選手がメジャー挑戦できる」「球団に譲渡金が支払われる」一方で、
「移籍する選手の所属球団の戦力が低下する」というデメリットがあります。
現状の千葉ロッテマリーンズは、佐々木郎希という投手を易々と移籍させられるほど、戦力が豊富なチームではありません。
2024年のチーム防御率は3.17でパ・リーグ全体の5位、規定投球回に乗った投手はエースの小島和哉と、種市篤暉の二人。
二桁勝利をした投手も小島と郎希の2名のみで、先発投手の駒を見ても小島、種市、郎希、メルセデス、西野の他はベテランや若手を交互に使うシーズンでした。
現有戦力の中で郎希が来年抜けるというのは千葉ロッテにおいてはあまりの痛手であり、
「2025年に常勝球団を目指す」といったチームプランに反すると言わざるを得ない決断でしょう。
ましてや、郎希はこれまでのプロ5年間で規定投球回はいずれも0、主要タイトルの獲得もなく、1年間1軍のマウンドで完走したことはありません。
メジャーリーグの過密日程と、中4日でのローテーションは、NPBのスケジュールで苦しんでいた郎希にはまだ到底早いと言わざるを得ない。
これはできる出来ないもそうですが、「日本でその体をしっかり作ってから挑戦する」ではダメだったのかなと思ってしまいます。
これはファンとしてロッテにいてくれないと困るからとか、集客数が減るかもしれないからとかではなく、
佐々木郎希という素晴らしい投手がその過酷な環境に適応できず、投手として圧倒的な実力を発揮する前に終わってしまうのではないかという不安からくる懸念です。
また、ポスティングには「25歳ルール」というものがあり、詳しくは割愛しますがこれにより郎希は、
ポスティングを申請したとしても「マイナー契約でのスタート」「球団への譲渡金の制限」など、様々な障害を抱えての移籍となります。
スーパースター・大谷翔平はこのルール下で実際にポスティング移籍をしましたが、
彼の場合は前提としてメジャー挑戦が最優先事項とした上での入団だったこと、NPB時代にも圧巻の成績を残した上での移籍だったため、異議を唱えたファンは少なかったと思います。
ただ、今回は訳が違う。
前述のとおり郎希はNPBで圧倒的な成績を年間に渡って残したわけでもなく、体力的にも未完成、ロッテへの見返りも相当に小さく思えます。
だからこそ、今回のポスティング容認は個人的に衝撃的でした。
正直言えば、戦力的にも本人の実力的にも、ロッテにまだ残ってほしいし、ロッテを日本一に導いてからメジャーに旅立ってほしい気持ちはめちゃくちゃあります。
行ってほしくない。
本当に残ってほしい。
マリンのファンをまだ魅了し続けてほしい。
若手の憧れであってほしい。
ダルビッシュや山本由伸のような、手を付けられない、圧倒的な成績を残し続けてほしい。
ロッテに日本一の投手がいるんだぞということを、見せつけてほしい。
佐々木郎希の登板時、彼のルーティンとして「ベンチ入りの選手・コーチ・スタッフとグータッチをする」というものがあります。
球団公式YouTubeを見たことのある方ならご存知かもしれないですが、そのルーティンを経てから彼はマウンドへ立ち、試合を支配していきます。
なんて素敵な真夏の夜なんだ!同一カード開幕14連勝!佐々木朗希投手今季6勝目の裏側にカメラが密着【広報カメラ】
また、かつて在籍したレオネス・マーティンの打撃フォームを本人の前で真似たり、チームの主軸を望まれる先輩野手の安田尚憲をいじったり、
後輩捕手の松川虎生のトークを痛烈に皮肉ったり、育成選手の田中楓基の球を手放しで褒めたりするなど、
マウンド以外では「生意気な青年」な一面もあります。
大船渡高校出身の彼は、小学4年生を前にして東日本大震災を被災、実の父と祖父母を亡くしました。
その時の様子や、少年時代を過ごした東北での生活のことを、昨年TBS系で放送された番組「情熱大陸」において語っていました。
彼は番組の最後に、自身の夢を語っていました。
同時に郎希は、
「そのためにはお金も必要」と、現実的なことを語っていました。
現在のNPBにおける日本人の歴代最高年俸は、楽天・田中将大選手の9億円と言われています。
一方、2024年メジャーリーグで史上初の50-50を達成した大谷翔平は、所属球団であるドジャースを10年総額7億ドル(約1040億円)という契約を交わしています。
日本とアメリカにおける市場価値や放映権・スポンサー料・収益といった金額は比べるまでもないほど、その差は歴然です。
千葉ロッテマリーンズというチームに、
たとえダルビッシュ有や山本由伸といった投手の成績を越えたとしても、
それに見合った報酬を払えるとはファンである僕も思っていません。
正直、今回のポスティング容認は納得していない部分の方が強いです。
ロッテファンから叩かれまくった楽天・鈴木大地選手のFA移籍の時は正直すんなりと受け入れることができました。
選手の権利として取得したFA権を使い、活躍と挑戦の場を求めて移籍する大地に非は一切ないと今でも思っていますし、
それを裏切り者扱いするロッテファンと相いれることも今後ないと思っています。
ただ、ポスティングは何度も書いたように球団の権利。
千葉ロッテマリーンズが容認しなければ、ここまで早期の段階で郎希はメジャー挑戦に踏み込めなかった訳です。
球団としてのリスクや損失が大きい中で、佐々木郎希本人の意思を尊重し、夢を後押しした点は、尊重する必要があるのではないかと思いました。
だから、郎希には絶対にMLBの舞台で活躍してほしいし絶対活躍しないと今後一生許さないと思います。
そのくらい強い覚悟を持って、挑戦してきてほしいです。
アメリカのマイナーリーグは、現地で「ハンバーガーリーグ」と言われるほど過酷な環境下にあります。
アメリカの広大な土地を長時間バス移動、給料も少なく食べれるものはハンバーガー程度しかないから「ハンバーガーリーグ」。
今回の移籍も、郎希自身がその過酷さを承知の上で申請したのは間違いないはず。
前ロッテ監督である井口元監督は、
郎希のロッテ入団時、真っ先に「自分は入団までにどんな自主トレをすればいいか」と質問してきた彼の意識の高さに驚いたと語りました。
吉井監督は、
「ダルビッシュ有、大谷翔平、佐々木郎希。3人に共通していることは、自分の俯瞰的に見て何をすればいいのかという『主体性』があること」
と語りました。
近年における最高の投手である2人にならぶ思考の持ち主。
まだ潜在能力を完全に解放していない、底知れぬ持ち主の投手。
いずれロッテを離れる時が来ると思ってはいましたが、こんなに早いとは思いませんでした。
けれど、こんな考えの選手が軽い気持ちでいばらの道を進むとは思っていませんし、かつて千葉ロッテマリーンズに凄まじい投手がいたという事実を、世界に証明してほしい。
手放しで応援はできないかもしれません。ロッテが来年から弱くなるのはほぼ確実な部分はあるし。
けれど、佐々木郎希という若者の挑戦という旅路の安全、成功、証明を1ファンとして見守りたいと思います。
ファンとしてできるのはいつも応援だけ。
どうせ挑戦するなら、思いきってやってきてほしいです。
それが、彼に続く若者の轍になるはずだから。
こんな読みにくく、整合性の取れていない感情的な文章を読んでもらってありがとうございました。
批判は覚悟、1ファンの戯言だと思ってください。
佐々木郎希選手。
5年という短い時間、ロッテで投げてくれてありがとう。
ロッテファンを黙らせるような夢の続きを、MLBという大海原で期待しています。
頑張ってください。