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2代目・せかいいちのねこ降臨

ロミオが旅立って、2年が過ぎた。

半年ほどまえ、実家で保護猫を迎えた。

ロミオと別れたときにわたしは、「着替えて戻ってくるかもしれない」と思ったけれど、実際、ロミオは着替えて帰ってきてはいない。

ハチはとってもかわいい。
警戒心が強くて、わたしと初めて会ったときはキャリーのいちばん奥からおびえた瞳でこちらを見つめるだけだったし、譲られてきた日はなにも口にしなかったらしい。

いっしょに住むわけでもないのに、彼を引きとると決めたのはわたしだった。ロミオを失った実家で、あたらしいねこと暮らしたい…だけど家族はその決断ができずにいて、なぜかわたしが保護猫を見に行くことになったのだ。

わたしが訪れた譲渡会はねこよりも人間のほうが多くて、気に入った子がいても引きとれるとはかぎらなかった。父と「かわいいね」と話した子が、たまたま最後まで決まらずにいて、わたしたちがその枠にすべりこんだ。

初日はがんこものだったけど、それからは素直に甘える天真爛漫ぶりで家族のアイドルになっている。初代は人のひざに乗る習性がまったくなかったので(笑)、だれか座っているとすぐひざの上に来るのは新鮮だ。

元野良だからなのか、絶対にひとりでは眠れないらしい。だれかいるときは人のひざの上で眠り、留守のときはクローゼットの中に隠れて眠る。わたしが数日帰省しただけでも、何度も行方不明騒ぎになる。

天真爛漫な臆病者なのだ。

よそもののわたしの上でも寝る

ロミオとハチの似ているところはあまりない。

ハチはすべての欲が行動に出るが、ロミオはなんだか慎ましかった。どちらも尊くて、いとおしい。

こうしてわたしはまた好きなときに顔をうずめられるもふもふとめぐり会うことができた。

ロミオは…まだわたしのなかには入っていない。

街あかりに人の心が浮き立つ季節、あれからわたしにとってクリスマスは「神さまがロミオを連れて行った日」になってしまった。

思い出のつまった写真や過去のnoteを見返すと、いい大人が、どうしてこんなにと思うほど涙があふれてくる。

ハチは、ロミオの遺影をときどき不思議そうにながめている。
ロミオがよく体をこすりつけていた柱のにおいをかいでいる。

ロミオが確かにこの家にいたということを、ハチは知っている。

だけどハチはロミオの生まれ変わりではない。
ハチはロミオの生まれ変わりじゃなくていい。

彼もまた唯一無二の、せかいいちのねこなのだ。

天真爛漫を絵に描いたように生きている

ハチを連れてきた保護猫コミュニティの人は、ハチのことを「のこりものには福がありますから」といった。ざっくばらんな人だ(笑)

わたしたちにとって、ハチが残り物かどうかは関係ない。いちばんに指名権がまわってきていたとしても、ハチを選んでいたと思うのだ。

出会いってそういうものなのだ。
ロミオのときだって、高級なシルバータビーのアメリカンショートヘアが風邪をひいて、値段までひかれていたから縁があったのだから(笑)

きょう、外ではしきりにねこが鳴いていた。
玄関をあけてみても姿は見えなかったが、ずっとずっとなにか言っていた。

ロミオの命日だから、呼んでいるかもって思って何度も玄関を開けてしまう。

ロミオが着替えてわたしのところに帰ってくることを期待している気持ちもあるのだろう。

いつでも戻っておいでよ。どこからでも見守っててよ。
12年間ロミオを想った大きくて深い愛を、いまはすこし持て余してる。

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